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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑦ターミナル・ステーション・ダンジョン編
217/322

【第百五話(1)】虚像との戦い(前編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

世界に影響を及ぼすインフルエンサー。

他人を理解することを諦めない、希望の種。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染として、強い恋情を抱く。

秋狐の熱心なファンでもある。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

男性だった頃の記憶を胸に、女性として生きている。

完璧そうに見えて、結構ボロが多い。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心穏やかな少年。あまり目立たないが、様々な面から味方のサポートという役割を担っている。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。健気な部分を持ち、ひたむきに他人と向き合い続ける。

案外撫でられることに弱い。

・another

金色のカブトムシの中に男性の頃の一ノ瀬 有紀のデータがバックアップされた存在。

毅然とした性格で、他人に怖い印象を与えがち。

・ディル

役職:僧侶

瀬川 沙羅の情報をベースに、ホログラムの実体化実験によって生み出された作られた命。詭弁塗れの言葉の中に、どこに真実が紛れているのだろうか。

船出 道音(ふなで みちね)

元Relive配信を謳っていた少女。過去に執着していたが、セイレイに希望を見出したことにより味方となる。やや気が強い。

秋城(あきしろ) (こん)

配信名:秋狐

セイレイ達より前にLive配信を歌っていた少女。運営権限を持ち、世界の真相に近い存在でもあるようだ。

須藤(すとう) 來夢(らいむ)

配信名:ストー

船出 道音より運営権限を引き継いだ、漆黒のパワードスーツに身を包む青年。今回の配信相手でもある。

 どこか静かで、無機質な空間だった。

 黒を基調とした、スタイリッシュなデザインで統一された駅構内も自分以外には、誰一人としていないものだから寂しさしか残らない。

 自分だけ、世界から切り離されたような気さえする空間の中、俺は勇者一行を待ち続けていた。

「それが、ストー君。君の選んだ道なのかな?」

 突如として空間が切り取られたように、一人の少女が姿を現す。

「……秋狐さんか」

「どうもー、”噓から出た実”、秋狐ですっ。いえいっ」

 橙色のウェーブがかった髪を揺らす、どこか機械的な印象を受ける和服を身に纏った彼女。配信者ランキング2位の座に立つ、バーチャルシンガーの秋狐だ。

 彼女は身体を波打つように揺らしながら、俺の表情を覗き込む。

「んー……君の配信の方向性は悪役でいいの?もう少し良いやり方あったんじゃない?」

「良いんだよ、俺は彼らにとっての敵で」

「男子って強情だなあ。なーんで皆そう意固地になるんだか……」

 そう言って、秋狐は不服そうにぶつくさと駅構内を歩き回る。駅に貼られたポスターを眺めては、退屈そうに欠伸をしていた。

「セイレイ君はいっつも面白い配信を見せてくれるから、私としては良いんだけどねー。真っ暗闇を照らす唯一の光だし」

「……そうだな。彼は、唯一の光だ」

「そ、文字通りね。セイレイ君が本来歩むべきだったはずの人生なんてまるで無視して、彼は英雄に仕立て上げられた」

 秋狐の言葉に、心の底に(もや)がたまっていくような感覚が生まれる。

 出会った頃のセイレイ君は、本当に他人の悪意なんて知らない、純粋な子供だった。心優しく、いつも他人のことを気遣っていた。


 なのに、彼の純粋な心は大人達によって壊されてしまった。

 最近のセイレイ君は、勇者であるという自分自身に疑問を抱いているようにも見える。

 ……だとしても。

「俺は、セイレイ君にとって乗り越えるべき障害だよ。過去の仲間を倒してこそ、セイレイ君は次に進むことが出来る」

「あー、もう。道音ちゃんと言い、どうもRelive配信の君達は残酷な手段を選ばせようとするんだか……」

 ぼやき続ける秋狐の身体が、突如としてふわりと宙に浮かび上がった。徐々に彼女の姿にラグが生まれ、世界に溶け込んでいく。

「セイレイ君は”大衆の意思の象徴”でもあるからね。だからこそ勇者、だからこそ希望の種。私はそう考えてるよ」

 ばいばーい、そう呑気な別れの挨拶を残して、やがて秋狐の姿は完全に消えた。


「……大衆の意思、か」

 運営権限に伴い、セイレイ君の”真実”を知ってしまった今。彼女の言葉にはより一層重みがあるように思えた。

 ディル君も、同じような想いなのだろう。全ての真実を知ってしまっているからこそ、あのような詭弁染みた言葉しか吐くことが出来ないのだろう。

 文字通り、正しくセイレイ君は——”大衆の意思から生まれた存在”だ。


「ストー」

 様々な足音が重なるように響く。アスファルトの床を、靴底で叩く軽快な音が徐々に近づいてくる。

 ついに、彼等はここまで到着したようだ。

「……待ってたよ。勇者セイレイってアカウント名を付けたのが、昔のように思えるな」

「今になって思えば随分と痛い名前を付けたものだと思うけどな」

 対峙するセイレイ君は思わず苦笑いを零す。その笑みには自嘲がにじみ出ていて、どこか寂しげな雰囲気さえ感じ取ることが出来た。

 ……出会った頃の純粋な彼なら、きっとこんな表情はしなかったのだろう。

「けどもそんな君も今や本物の勇者。誰も、名ばかりの勇者なんてもう言わないさ」

「……そうだな」

 自嘲と、寂しさと、葛藤の滲み出た表情で俯くセイレイ君。そんな彼を庇うように、一ノ瀬は毅然とした立ち振る舞いで前に出る。

「もういいだろう、ストー。長話をしていては視聴者も疲れるだろ?」

「一ノ瀬、お前も随分と配信に染まったんだな。あれほどまでにインターネットを毛嫌いしていたお前が」

「……私が、寄り添うことを知らなかっただけだったからな」

 一ノ瀬は過去を懐かしむように呟いた後、腰に携えた鞘から金色の短剣を引き抜いた。隙の無い立ち姿で、静かに俺の動きを見据えているようだ。

 俺はポケットに潜ませていたスマホを取り出し”Sympass”を起動する。運営アカウントにログインし、配信を開始する。その一連の動作に伴って、俺の視界に映る自身の姿をホログラムが覆いつくす。

「これでも、一ノ瀬……お前のことが好きだったんだがな。凛として、勇ましく立ち振る舞うお前の姿が好きだったよ」

 そう伝えると、一ノ瀬は一瞬の硬直の後、困ったように苦笑いを零した。

「悪いが、私には想い人が居るものでな。もう会うことが出来ないとしても、想いがずっと消えることはない」

「……知っていたさ——」

 どこか、晴れやかな気持ちさえ抱いていた。

 自己満足だとしても、それでもいい。大事なのは、自分の想いが他人に伝わることだったから。


 だから、これで心置きなく、悪役を務めることが出来る。

「終ワラセヨウ、勇者一行」

 自身の声がくぐもるのを感じた。自身の身体が、機械のような肉体に書き換わるのがわかる。

 スマホを左前腕に嵌め込むと同時に、眼前に配信画面を映すモニターが表示された。


[Super Chat Boost/赤 千紫万紅]

[Super Chat Boost/黄 Mode Change]

[Super Chat Boost/緑 Core Gun]

[Super Chat Boost/青 Core Jet]

[身体損傷率:0%][標的数/4][推定活動可能時間/10min]

 次から次に、留まることなく情報が流れていく。勇者一行の姿に重なるように、ターゲットマークが表示される。

 恐らく、彼等のことだから俺の能力の「弱点」はとっくに理解しているのだろう。特に聡明である配信ナビゲーターのホズミさんが、そのことに気付かないはずがない。

 ——決して、油断はしない。

[行クゾ。スパチャブースト”赤”]

[//千紫万紅//]

 モニターに重なるように、技名を表記したシステムメッセージが流れる。それと同時に、突如として背中に重みが生まれた。

 徐々に背後に大きなエネルギーが生み出されると同時に、俺は高く跳躍する。

 駅構内の上屋付近まで高く浮上した俺は、すかさず宣告(コール)を重ねた。

[……スパチャブースト”青”]

[//Core Jet//]

 更に背後に扁平状の翼が伸びていく。ジェット機を彷彿とさせる、噴出する炎が浮かび上がった俺の身体を支えてくれているのが分かる。

 ターゲットマークと重なるように映る勇者一行は、お互いに身を寄せ合って俺の攻撃を警戒しているようだ。

 だが、そんな中ためらいもなく動き出した人物が一人。

「スパチャブースト”青”!」

[//五秒間跳躍力倍加//]

 俺の予備動作に割り込むように、突如として青い軌跡が空間に生み出される。青白い光を残して、セイレイ君は怯むこともなく、勢いのままに跳躍。

「させっかよ!」

「……ッ!?」

 眼前にまで迫るセイレイ君は、上屋の鉄骨をぶら下がるようにして掴む。それから大きく身体を捩らせて、勢いのままに鉄骨を蹴りあげて飛び込んできた。

「ぜあああああっ!」

 その勢いのままに、俺目掛けて斬りかかる。

「……ッ、クソッ!」

 思わず悪態を吐きながら、ターゲットを俺目掛けて斬りかかるセイレイ君一人に絞る。背中から伸びた砲口の向きを彼一人に絞り、躊躇することなく”千紫万紅”を放つ。

 無数の熱光線が、かつての仲間であった勇者セイレイへと襲い掛かる——。


To Be Continued……

[推定活動可能時間/10min]のところ、[10sec]って誤字ってて笑いました。

10秒て笑


総支援額:9000円

[スパチャブースト消費額]

 青:500円

 緑:3000円

 黄:20000円

【ダンジョン配信メンバー一覧】

①セイレイ

 青:五秒間跳躍力倍加

 両脚に淡く、青い光を纏い高く跳躍する。一度に距離を縮めることに活用する他、蹴り技に転用することも可能。また、着地時のダメージを無効化する。

 緑:自動回復

 全身を緑色の光が覆う。死亡状態からの復活が可能である他、その手に触れたものにも同様の効果を付与する。

 黄:雷纏

 全身を青白い雷が纏う。攻撃力・移動速度が大幅に向上する他、攻撃に雷属性を付与する。

②クウリ

 青:浮遊

 特定のアイテム等を空中に留めることができる。人間は対象外。

 緑:衝風

クウリを中心に、大きく風を舞い上げる。相手を吹き飛ばしたり、浮遊と合わせて広範囲攻撃に転用することも出来る。

 黄:風纏

クウリの全身を吹き荒ぶ風が纏う。そのまま敵を攻撃すると、大きく吹き飛ばすことが可能。

③noise

 青:影移動

 影に潜り込み、敵の背後に回り込むことが出来る。また、地中に隠れた敵への攻撃も可能。

 (”光纏”を使用中のみ)

  :光速

 自身を光の螺旋へと姿を変え、素早く敵の元へと駆け抜ける。

 緑:金色の盾

 左手に金色の盾を生み出す。その盾で直接攻撃を受け止めた際、光の蔦が相手をすかさず拘束する。

 黄:光纏

 noiseの全身を光の粒子が纏う。それと同時に、彼女の姿が魔災前の女子高生の姿へと変わる。

 受けるダメージを、光の粒子が肩代わりする。

④ディル

 青:呪縛

 指先から漆黒の鎖を放つ。鎖が直撃した相手の動きを拘束する。

 緑:闇の衣

 ディルを纏う形で、漆黒のマントが生み出される。受けるダメージを肩代わりする効果を持つ。

 黄:闇纏

 背中から漆黒の翼を生やす。飛翔能力を有し、翼から羽の弾丸を放つことが出来る。

 漆黒の羽には治癒能力が備わっている。

ドローン操作:前園 穂澄

[サポートスキル一覧]

・支援射撃

 弾数:2

 クールタイム:15sec

 ホーミング機能あり。

・熱源探知

 隠れた敵を索敵する。

 一部敵に対しスタン効果付与。

[アカウント権限貸与]

①雨天 水萌

・消費額:20000円

・純水の障壁

・クラーケンによる触手攻撃

②船出︎︎ 道音

 ・消費額:20000円

 ・ワイヤーフックを駆使した立体的な軌道から繰り広げられる斬撃

 ・ノアの箱舟

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