【第百ニ話(1)】想い人との出会いの地(前編)
【登場人物一覧】
・瀬川 怜輝
配信名:セイレイ
役職:勇者
世界に影響を及ぼすインフルエンサー。
他人を理解することを諦めない、希望の種。
・前園 穂澄
配信名:ホズミ
役職:魔法使い
瀬川 怜輝の幼馴染として、強い恋情を抱く。
秋狐の熱心なファンでもある。
・一ノ瀬 有紀
配信名:noise
役職:盗賊
男性だった頃の記憶を胸に、女性として生きている。
完璧そうに見えて、結構ボロが多い。
・青菜 空莉
配信名:クウリ
役職:戦士
心穏やかな少年。あまり目立たないが、様々な面から味方のサポートという役割を担っている。
・雨天 水萌
元四天王の少女。健気な部分を持ち、ひたむきに他人と向き合い続ける。
案外撫でられることに弱い。
・another
金色のカブトムシの中に男性の頃の一ノ瀬 有紀のデータがバックアップされた存在。
毅然とした性格で、他人に怖い印象を与えがち。
・ディル
役職:僧侶
瀬川 沙羅の情報をベースに、ホログラムの実体化実験によって生み出された作られた命。詭弁塗れの言葉の中に、どこに真実が紛れているのだろうか。
・船出 道音
元Relive配信を謳っていた少女。過去に執着していたが、セイレイに希望を見出したことにより味方となる。やや気が強い。
・秋城 紺
配信名:秋狐
セイレイ達より前にLive配信を歌っていた少女。運営権限を持ち、世界の真相に近い存在でもあるようだ。
・須藤 來夢
配信名:ストー
船出 道音より運営権限を引き継いだ、漆黒のパワードスーツに身を包む青年。今回の配信相手でもある。
[information
”撮影禁止区間”の鍵が1つ解除されました。自由に撮影が可能となるにはもう1つ鍵が必要です]
ドローン内に表示されたシステムメッセージへ視線を送れば、そのような文面が表示されていた。
おおよそ見当のついていたことだったが、一先ずレストラン街はこれで攻略らしい。
ふわりと俺の隣へと舞い降りたドローンから、ホズミの声が響く。
『残すは、恐らく向かいに並ぶ図書館でしょう。私から提案がありますので、一旦戻って来てくれませんか』
「……ん?まあ、いいけど……」
図書館へと向かう前に、ホズミはどのような提案をしようとしているのだろう。
……いや、図書館と言えば……おおよそ心当たりはあったな。
★★★☆
再び、俺達勇者一行はホズミが待つ駅前広場へと集合する。
ホズミはパソコンを自身の傍らにおいて、ドローンの操作を止めた。操縦権は必然的に雨天と船出の二人に任せられる。
[ちょ、ちょっと。雨天ちゃんは操作しなくていいから!]
[そういう船出先輩こそじっとしといてください!私が触るんです!]
[あーもうっ!画面揺れ起こすからやめてよ!?]
[そっちこそ!!わからずやめっ!]
[どっちでもいいから、大人しくしてくれない?画面酔いする……]
[視聴者のことも考えてくれー……]
[とりあえず次の戦いに備える用 10000円]
[ないすぱー 10000円]
わたわたと落ち着きもなく右往左往するドローンの姿に苦笑いを零すホズミ。
「撮影を止めてごめんね」
「……図書館のこと、だよな」
俺が、ホズミが伝えたいことを先読みしてそう告げる。すると、彼女は息を呑み、くりくりとした大きな目を更に見開いた。
「気づいてたんだ」
「思い出したよ。俺と、ホズミが出会った場所だろ」
「……うん」
ホズミは、しおらしく俯いてぽつりと言葉を返す。揺れる黒髪が、愁いに満ちた彼女の表情を隠した。
その様子を遠巻きに見ていたクウリが、おずおずと話に割って入る。
「前に話してくれた、ホズちゃんとセーちゃんが初めて出会った場所……?」
「俺も今思い出したがな。たまたまセンセーと、教科書として使えそうな本を探し回っている時に出会ったんだ」
「そっか……すごい偶然だね。そんな思い出の場所でもあるダンジョンが、攻略先なんて」
「必然、だったのかもしれないけどな」
ちらりと、高く聳え立つ図書館の外観を眺めた。
白を基調とした、堅苦しくも柔らかな雰囲気を纏う外観だ。開放的とさえ思える、広々とした空間の中に敷き詰められた本棚がガラス窓を介して見える。
しかし、そこに映るのは、棚に並べられていたであろう本が床や階段に散乱している姿だ。
本を管理する者のいなくなった世界。大切にされていたであろう本の傷んだ光景が視界に入り、心が締め付けられるような感覚を抱く。
ホズミは視界を塞ぐ黒髪を掻き分け、noiseの方を向いた。
「noiseさん。あの、図書館だけは……私に代わって欲しい」
「うん。分かった。思い出の場所なんでしょ」
「ありがとうね」
二つ返事で頷いたnoiseは、ホズミと場所を入れ替わるようにしてベンチに腰掛けた。
流れるような操作に伴って、再びドローンの操縦権がnoiseへと変わる。ホズミからインカムを受取り、noiseは手慣れた動作でそれを装着する。
ドローンのスピーカーと重なって、noiseの声が響く。
『……見たところ、閉所での戦闘が主体となるだろう。ホズミは、極力炎属性の魔法は避けた方が良いかもな』
「うん、そうするよ。本が燃える可能性もあるもんね」
『ああ。気を付けて行ってこい……もしかすると、ご両親の亡骸も残っているかも、だろ』
「……」
noiseがそう補足すると、ホズミは曇った表情で俯く。
実際に、ホズミの両親は目の前で魔物に襲われて命を落としたとのことだ。危うく自身まで命を奪われるところだったのを、俺が助けただけだ。
ディルは、怒りを孕んだ様子で静かにnoiseへと語り掛ける。
「……あのね。これから攻略するんだって時にそんなこと言わないでよ。せっかく魔法使いの穂澄ちゃんが勇気出したって言うのにさ、尻込みするようなこと言ってどうするのさ。さすがに空気読みなよ」
「ディル、いいから」
「良い訳ないでしょ。大切な人の死を目の当たりにして冷静でいられるわけないでしょ?おねーさんだって現に恋人さんの死を知って、取り乱したじゃん」
「ディル」
ホズミは、諭すようにディルの名前を呼んだ。面食らったように、ディルは黙り込む。
「……良いから」
その言葉を聞いたディルは、呆れたと言わんばかりに後頭部を搔きむしる。
「はー……キミ達の真似をしてみたけど上手くいかないもんだね。柄じゃないね、やっぱり……」
はぐらかすように、大きな欠伸をするディル。取り繕ってはいるが、彼なりの優しさがそこにはあった。
俺はどこか放っておくことが出来ず、ディルの肩を叩く。
「相も変わらず本心を伝えるのは苦手か?」
「まーね。上手だったら回りくどい言い方なんてしないさ」
自嘲の笑みを浮かべたディル。彼は退屈そうにチャクラムを顕現させ、指で回して遊び始めた。
noiseもnoiseで、ディルが発した言葉の意味を考えるように難しい顔をしていたが、それどころではないと思い直したのだろう。首を横に振って、配信ナビゲーターとしての役割を遂行することに意識を向ける。
『……話を遮って悪かった。攻略も中盤だ、図書館の攻略へと進もう』
「うん。今回の合図は、私から言わせて」
ホズミは図書館の入口へと続くガラスドアに手を掛けて、ぽつりと呟いた。
勇者一行として行う、ダンジョン攻略前のいつもの合図だ。
「私達は、一人では生きていけない。皆が居て、皆と繋がって。それで、ようやく生きてるんだって思えるの……だから、私は皆の居場所をこれから作っていくよ。それが、Live配信を謳う、魔法使いホズミの役割だから」
「……本当に、ありがとうな。ホズミ」
「私だって、セイレイ君が居なかったら無力だった。君が居るから戦えるんだ」
「そっか」
俺達のダンジョン配信の全ては、この図書館から始まった。
ホズミと出会っていなければ、きっと何も生み出すことは出来なかった。
偶然か、必然か。
運命の歯車は噛み合い始めたんだ。
「乗り越えよう。未来の為に」
To Be Continued……
総支援額:62500円
[スパチャブースト消費額]
青:500円
緑:3000円
黄:20000円
【ダンジョン配信メンバー一覧】
①セイレイ
青:五秒間跳躍力倍加
両脚に淡く、青い光を纏い高く跳躍する。一度に距離を縮めることに活用する他、蹴り技に転用することも可能。
緑:自動回復
全身を緑色の光が覆う。死亡状態からの復活が可能である他、その手に触れたものにも同様の効果を付与する。
黄:雷纏
全身を青白い雷が纏う。攻撃力・移動速度が大幅に向上する他、攻撃に雷属性を付与する。
また、思考能力が加速する。
②クウリ
青:浮遊
特定のアイテム等を空中に留めることができる。人間は対象外。
緑:衝風
クウリを中心に、大きく風を舞い上げる。相手を吹き飛ばしたり、浮遊と合わせて広範囲攻撃に転用することも出来る。
黄:風纏
クウリの全身を吹き荒ぶ風が纏う。そのまま敵を攻撃すると、大きく吹き飛ばすことが可能。
③ディル
青:呪縛
指先から漆黒の鎖を放つ。鎖が直撃した相手の動きを拘束する。
緑:闇の衣
ディルを纏う形で、漆黒のマントが生み出される。受けるダメージを肩代わりする効果を持つ。
黄:闇纏
背中から漆黒の翼を生やす。飛翔能力を有し、翼から羽の弾丸を放つことが出来る。
漆黒の羽には治癒能力が備わっている。
④ホズミ
青:煙幕
ホズミを中心に、灰色の煙幕を張る。相手の視界を奪うことが出来るが、味方の視界をも奪うというデメリットを持つ。
緑:障壁展開
ホズミを中心に、緑色の障壁を張る。強固なバリアであるが、近くに味方がいる時にしか恩恵にあやかることが出来ない為、使用には注意が必要。
黄:身体能力強化
一時的にホズミの身体能力が強化される。攻撃力・移動能力・防御力が大幅に上昇する他、魔法も変化する。
魔法
:炎弾
ホズミの持つ両手杖から鋭い矢の如き炎を打ち出す。
一度の炎弾で3000円と魔石一つを使用する。火力は高いが、無駄遣いは出来ない。
:マグマの杖(身体能力強化時のみ使用可)
地面に突き立てた杖から、マグマの奔流が襲いかかる。ホズミの意思で操作可能。
一度の使用で10000円と魔石一つを使用する。高火力であるが、スパチャブーストの使用が前提であり、コストが高い。
:氷弾
青色の杖に持ち替えた際に使用可能。氷の礫を射出し、直撃した部分から相手を凍らせることが出来る。
炎弾と同様に、3000円と魔石一つを使用。
:氷壁
氷塊を射出し、直撃した部分に巨大な氷の壁を生み出す。死角を作り出す効果がある他、地面を凍らせることにより足場を奪うことも出来る。
魔石(大)一つと、10000円を消費する。
ドローン操作:一ノ瀬 有紀
[サポートスキル一覧]
・斬撃
・影縫い
・光源解放
[アカウント権限貸与]
①雨天︎︎ 水萌
・消費額;20000円
・純水の障壁
・クラーケンによる触手攻撃
②船出︎︎ 道音
・消費額:20000円
・ワイヤーフックを駆使した立体的な軌道から繰り広げられる斬撃
・ノアの箱舟




