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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑦ターミナル・ステーション・ダンジョン編
208/322

【第百話(1)】人々の集う場所(前編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

世界に影響を及ぼすインフルエンサー。

他人を理解することを諦めない、希望の種。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染として、強い恋情を抱く。

秋狐の熱心なファンでもある。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

男性だった頃の記憶を胸に、女性として生きている。

完璧そうに見えて、結構ボロが多い。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心穏やかな少年。あまり目立たないが、様々な面から味方のサポートという役割を担っている。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。健気な部分を持ち、ひたむきに他人と向き合い続ける。

案外撫でられることに弱い。

・another

金色のカブトムシの中に男性の頃の一ノ瀬 有紀のデータがバックアップされた存在。

毅然とした性格で、他人に怖い印象を与えがち。

・ディル

役職:僧侶

瀬川 沙羅の情報をベースに、ホログラムの実体化実験によって生み出された作られた命。詭弁塗れの言葉の中に、どこに真実が紛れているのだろうか。

船出 道音(ふなで みちね)

元Relive配信を謳っていた少女。過去に執着していたが、セイレイに希望を見出したことにより味方となる。やや気が強い。

秋城(あきしろ) (こん)

配信名:秋狐

セイレイ達より前にLive配信を歌っていた少女。運営権限を持ち、世界の真相に近い存在でもあるようだ。

須藤(すとう) 來夢(らいむ)

配信名:ストー

船出 道音より運営権限を引き継いだ、漆黒のパワードスーツに身を包む青年。今回の配信相手でもある。

 穂澄が、駅前広場に設置されたベンチに腰掛けて配信の告知を行っている。

 配信を開始するまでの間、俺達は改めてターミナル・ステーションに関する情報を確認することにした。

「ストーは、一体どうして決戦の地にこの駅を選んだんだ?」

 まず、最初に確認するべきだと思ったのはその点についてだった。

 特に意味もなく、このターミナル・ステーションを決戦の地として選んだとはどうしても思えない。

 有紀は駅の方向に視線を送りながら、難しい表情であごに手を当てる。

「駅と言えば、沢山の人々が旅行とかに出かけるのに使う場所だね。新たな旅立ちを暗に示している……とも考えられなくもないけど」

「俺達の門出か、あるいはストーなりのけじめという意味か……」

「うん。決別という意味合いがあるのかもね」

「……なるほど」

 考えれば、考えるほど複雑に絡み合う思考が、脳裏を駆け巡る。

 そんな思考を遮るように、ディルは退屈そうに一つ大きな欠伸をした。

「や、武闘家クンそこまで難しいこと考えれないでしょ。無理無理、脳筋にはそこまで頭回らないよ。知識使うよりもぶん殴る方が早いんだから」

「さすがに言いすぎだと思うが」

 あまりにもディルの言い方が酷いものだから、俺は思わずそう(とが)める。

 だが、ディルは「ちっちっちっ」と含みを持った笑みを浮かべつつ、舌を鳴らす。

「だ、か、ら、さっ。下手な言い回しを狙ってるんじゃなくて、シンプルに駅に武闘家クンが見せたい景色があるってことでしょ。キミ達の連想能力が突出してるだけで、一般人はそこまで思考巡らないって。そもそも連想するってこと自体、一朝一夕じゃ出来ない手段だからね?単純なアイデアをずらして考えることがどれだけ難しいことかってことをキミ達は理解していないんだ」

「はいはい。俺が悪かったよ……伝えたい景色か」

 相変わらず言い回しは鼻につくが、ディルの意見には納得できるものがあった。

 言われてみれば、雨天も、道音も、ダンジョン内ではそれぞれが伝えたいことを追憶のホログラムを介して映し出していた。

 ともなると、次に考えるべきは「何を伝えたいのか」だが——。


「セイレイ君。視聴者さんも集まって来てる。そろそろ配信を始めるよ」

 穂澄は迷彩柄の帽子から覗く櫛通りの良い黒髪を掻き分けながら、俺達へと声を掛けた。

 既に彼女はインカムを装着し、配信に備えているようだ。

「ああ、分かった」

「考えるのは後、だな」

 有紀が俺の思考を代弁してそう語る。

 彼女の言葉に俺は強く頷き、それからターミナル・ステーションの方を向いて一同に並ぶ。


「雨天ちゃん。リラックスだよ、リラックス」

「あっ、は、はいっ……すぅー……はぁー……」

 穂澄の操作に伴って浮かび上がったドローンの傍らには、雨天と道音が立っている。支援額上限が増加したことに伴って、二人が今後戦いに参加することも増えるだろう。


「僕はストーさんの戦い方を実際に見た訳じゃないから。指示はセーちゃんに従うよ」

 配信に参加するメンバーの中では唯一ストーとの戦いを目の当たりにしたことのない空莉は、やや不安げな面持ちを浮かべる。

「はは、責任重大だな。俺が先導するから安心しろ」

「……まーた随分とカッコよくなったね」

 そんな不安を払拭すべく、軽く茶化した。すると空莉は安堵と、覚悟の入り混じった表情を浮かべる。


 やがて俺達の背後にふわりと浮かぶドローンから映し出されるホログラム。そこにはコメント欄や、総支援額と言った俺達の戦いに関与する全てが表示される。

 全ては、たった一人ぼっちの配信から始まった。

 隣には誰も居らず、不安と恐怖が渦巻く世界だった。

 でも、今は違う。

『……勇者配信。始めます。コミュニティでの告知通り、今回の目的地はかつての武闘家、ストーさんの待つターミナル・ステーションです』

 ドローンのスピーカーから響くホズミの声。視聴者へと改めて説明する、淡々とした口調が静かな駅前広場に響く。

 ちらりとパソコンを操作するホズミに視線を送ると、彼女はこくりと頷いた。

「……決着の時だよ」

 彼女の声が、ドローンのスピーカーから響く声と重なって聞こえる。

「分かってる……始めよう。Live配信の時間だ」


[期待してるよ 10000円]

[武闘家ストーと言えば、最初のダンジョン攻略戦の時にめっちゃ敵を爽快になぎ倒してた印象あるな……]

[俺正直、ストーが居た時の配信知らないわwどんななん?]

[まあ最初はスパチャブーストもなかったからな。セイレイ、noise、ストーの三人でダンジョン攻略したんだよ]

[勇者、盗賊、武闘家ってごり押しが過ぎるな……まあスキルも無いし仕方ないけど]

[わかる。今でこそ戦略が増えたけどな]

[俺達に希望を見せてくれ。もう、誰も失いたくないんだ 10000円]

[安心してよ。こんな私さえ救ってくれたんだよ。セイレイは]

[私達も手助けするんですっ。邪魔なんて、させませんっ。させたくないんですっ]


 配信が始まると共に、次から次にコメントが流れていく。

 今まではあまり気にしていなかった。しかし改めてコメントの一つ一つに目を通すと、時々希望を本心から託しているような言葉が垣間見(かいまみ)える。

「ありがとう、皆の想いは届いてる。生きよう、どんな困難があろうとも」

 今日も、Live(生きる)配信は始まる。


----


「久々に見たな……」

 撮影禁止区間と書かれた標識が、駅の改札の前にポツンと建てられていた。

 つまり、この標識を取り除くためには、異なる場所に配置された追憶のホログラムを解除しなければならないということだ。

「あはっ、こんなもの無視しちゃえばいいんだよ。えいっ」

「あっ、おい」

 ディルはそんなの興味ない、と言わんばかりに改札を通って先に行こうとした。

 しかし、その時大きなブザー音と共に、改札のゲートが閉じる。

『現在、この改札を利用することは出来ません』

 機械的な音声がスピーカーから流れると同時に、露骨にディルは顔をしかめた。

「えー……んじゃ飛び越えよっと」

 改札を飛び越えるべく助走の構えをとったディル。俺はすかさず彼の首に巻かれたぼろきれのようなマントを引っ張って引き留める。

「おい、やめろ。視聴者の目があるんだぞ、みっともないことするなよ」

「ぶぐっ!?何するんだいセイレイ君。酷いじゃん、ボクが本当に飛び越えようとするように見えるの?」

「見えるから止めたんだろ」

「……ぶー。分かったよ、大人しくこの標識をどける鍵を探すしかないんだね。まー、おおかた駅付近に併設されたレストランとか、図書館とか、そんな施設じゃない?追憶のホログラムがあるとしたら」

 不服そうに文句を零しながらも、ディルは己の見解を述べる。

 ディルが視線を送った先は、駅の敷地内に併設して建てられた商業施設だ。近くに配置された案内図に視線を送れば、一階はスーパー、二階はレストラン街で構成されているようだ。図書館は、駅を挟んで向かいに建てられている。

 恐らく、両方とも向かうことになるのだとは思うが。

「とりあえず、レストラン街の方から向かおう」

 迷っていても仕方ない。

 俺達は、併設されたレストラン街へと続く道に向かうことに決めた。


----


『サポートスキル”光源開放”』

 ドローンのスピーカーを介して、ホズミが宣告(コール)する声が響く。それと同時に、二度と役割を遂行されるはずのなかった電灯に光が宿る。

 あっという間に照らされた光によって映し出されるのは、人々の混乱の痕跡だ。

 無造作に転がった商品棚の隙間から覗くのは、乱暴に開封された痕跡のある食品パッケージ。魔災の後、ダンジョン化する以前まで人々が逃げ込んでいたことが伺える光景だった。

 俺達は積み重なった商品棚の物陰に潜み、じっと奥の様子を伺う。

「……魔物がいるな。私が先に行く」

 noiseは魔物の行動を先読みし、素早く商品棚の影を縫うように移動する。

 慎重に通路の先を覗いた先、そこにいたのは悠然と空を泳ぐインプと呼称の出来る魔物だった。

 双角に伸びた角を持ち、蝙蝠のような羽と、細長く伸びた尻尾を持つ姿が特徴的だ。

 全身の皮膚の色は主に、紫色をしている。しかし中には漆黒の皮膚を持つ個体もいた。恐らく漆黒の皮膚を持つものが強化個体なのだろう。

 一足先に進んだnoiseはインプの群れに視線を送りつつ、素早くジェスチャーにて意思疎通を図る。

(私が陽動を担う。挟撃だ)

(分かった)

 彼女のジェスチャーの意図を読み取り、俺達は素早くそれぞれの武器を顕現させる。

 noiseは腰に携えた金色の短剣を引き抜き、静かに宣告(コール)した。

「——スパチャブースト”青”」

[noise:影移動]

 そのシステムメッセージが表示されるのに連なって、noiseの身体がまるで溶けるように地中へと消える。

 ゆっくりと移動する影が、やや群れから外れて佇んでいるインプへと重なった。

 次の瞬間。

「今だっ!!」

 noiseが叫ぶのと同時に、金色の軌跡がインプの喉元を貫く。

「カッ……」

 か細い悲鳴と共に、瞬く間にnoiseが奇襲を仕掛けたインプは絶命。その姿を灰燼と変える。

 インプの群れは動転しながらも、noiseへと警戒の視線を向けた。こちらには全く気づいてなどいない。

 ——チャンスだ!

 俺は迷わず宣告(コール)する。

「スパチャブースト”青”!!」

[セイレイ:五秒間跳躍力倍加]

 そのシステムメッセージが流れると同時に、俺の両足を淡く、青い光が纏い始める——。


To Be Continued……

総支援額:36000円

[スパチャブースト消費額]

 青:500円

 緑:3000円

 黄:20000円

【ダンジョン配信メンバー一覧】

①セイレイ

 青:五秒間跳躍力倍加

 両脚に淡く、青い光を纏い高く跳躍する。一度に距離を縮めることに活用する他、蹴り技に転用することも可能。また、着地時のダメージを無効化する。

 緑:自動回復

 全身を緑色の光が覆う。死亡状態からの復活が可能である他、その手に触れたものにも同様の効果を付与する。

 黄:雷纏

 全身を青白い雷が纏う。攻撃力・移動速度が大幅に向上する他、攻撃に雷属性を付与する。

②クウリ

 青:浮遊

 特定のアイテム等を空中に留めることができる。人間は対象外。

 緑:衝風

クウリを中心に、大きく風を舞い上げる。相手を吹き飛ばしたり、浮遊と合わせて広範囲攻撃に転用することも出来る。

 黄:風纏

クウリの全身を吹き荒ぶ風が纏う。そのまま敵を攻撃すると、大きく吹き飛ばすことが可能。

③noise

 青:影移動

 影に潜り込み、敵の背後に回り込むことが出来る。また、地中に隠れた敵への攻撃も可能。

 (”光纏”を使用中のみ)

  :光速

 自身を光の螺旋へと姿を変え、素早く敵の元へと駆け抜ける。

 緑:金色の盾

 左手に金色の盾を生み出す。その盾で直接攻撃を受け止めた際、光の蔦が相手をすかさず拘束する。

 黄:光纏

 noiseの全身を光の粒子が纏う。それと同時に、彼女の姿が魔災前の女子高生の姿へと変わる。

 受けるダメージを、光の粒子が肩代わりする。

④ディル

 青:呪縛

 指先から漆黒の鎖を放つ。鎖が直撃した相手の動きを拘束する。

 緑:闇の衣

 ディルを纏う形で、漆黒のマントが生み出される。受けるダメージを肩代わりする効果を持つ。

 黄:闇纏

 背中から漆黒の翼を生やす。飛翔能力を有し、翼から羽の弾丸を放つことが出来る。

ドローン操作:前園 穂澄

[サポートスキル一覧]

・支援射撃

 弾数:2

 クールタイム:15sec

 ホーミング機能あり。

・熱源探知

 隠れた敵を索敵する。

 一部敵に対しスタン効果付与。

[アカウント権限貸与]

①雨天 水萌

・消費額:20000円

・純水の障壁

・クラーケンによる触手攻撃

②船出︎︎ 道音

 ・消費額:20000円

 ・ワイヤーフックを駆使した立体的な軌道から繰り広げられる斬撃

 ・ノアの箱舟

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