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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑦ターミナル・ステーション・ダンジョン編
202/322

【第九十六話】加速する思考

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

世界に影響を及ぼすインフルエンサー。

他人を理解することを諦めない、希望の種。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染として、強い恋情を抱く。

秋狐の熱心なファンでもある。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

男性だった頃の記憶を胸に、女性として生きている。

完璧そうに見えて、結構ボロが多い。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心穏やかな少年。あまり目立たないが、様々な面から味方のサポートという役割を担っている。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。健気な部分を持ち、ひたむきに他人と向き合い続ける。

案外撫でられることに弱い。

・another

金色のカブトムシの中に男性の頃の一ノ瀬 有紀のデータがバックアップされた存在。

毅然とした性格で、他人に怖い印象を与えがち。

・ディル

役職:僧侶

瀬川 沙羅の情報をベースに、ホログラムの実体化実験によって生み出された作られた命。詭弁塗れの言葉の中に、どこに真実が紛れているのだろうか。

船出 道音(ふなで みちね)

元Relive配信を謳っていた少女。過去に執着していたが、セイレイに希望を見出したことにより味方となる。やや気が強い。

・秋城 紺

配信名:秋狐

セイレイ達より前にLive配信を歌っていた少女。運営権限を持ち、世界の真相に近い存在でもあるようだ。

 魔災直後に人々が荒らしていったのだろう。どこにも食料の残っていない食品売り場の商品棚の隙間を通り抜けていく。

 静寂の中に天井から照らされる蛍光灯が鮮明に映し出すその光景は、かえって不気味さを生み出していた。

 無造作に倒れ、重なった商品棚が生み出す通路の先。まるで展示品のように七色に光る結晶体——追憶のホログラムが姿を現す。

 道音だったり、anotherだったりと、人の姿をした追憶のホログラムと同等の存在と対峙してきた。だが俺達が目にすることの多い追憶のホログラムと言えば結晶体の方だ。

 これを破壊、あるいはドローンに吸収することによってダンジョンから魔物が消え、攻略を完了することが出来る。

 だが、そう簡単に行く話ではない。

「……いるよな、やっぱり」

 追憶のホログラムの前に仁王立ちして立ちはだかるのは、どこかスマートないで立ちをしたオーガだった。

 身長は俺達よりも少し高い程度。筋骨隆々であり巨大な身体を持ったオーガとは異なり、威厳ある雰囲気を放っている。

 ジーンズを履いているが、上半身には何も身に着けておらず赤色の皮膚が描くその逞しい筋肉をこれでもかと見せつけていた。

 そんなダンジョンボスとして立っているオーガが持つのは身長ほどある大剣。その大剣の一撃を食らえば、命など容易く吹き飛ぶのは一目瞭然だった。

「げ、こっわー……」

 ディルは口に手を当てて、明らかにドン引きしている。演技ともとれるわざとらしい仕草だったが、恐らく本心からの反応だろう。

 ここに来て、noiseを配信ナビゲーターに配置したことを後悔するとは。彼女が居れば、”金色の盾”によって攻略は比較的容易なものとなっていただろうが。

 道中はオーガのみであり、上位個体も居なかったことから攻略は容易なものと思っていたが……。

「セーちゃん。正直、大剣の攻撃を受けるなんて無理だよ。引き返して有紀姉と入れ替わるのも考えるべきだと思う」

 瓦礫から何度もそのダンジョンボスを見ては、クウリはそう提案する。実際、彼の意見はもっともなのだろう。

 これまでのボスの傾向から見ても、道中の魔物とは強さなど比べ物にならないはずだ。

 ……だが。

「いや。俺が攻撃を引き付ける。隙を見て背後から斬りかかれ」

「はっ……え!?無茶だよ!?いくらセーちゃんが”自動回復”を持ってるからって言っても……!!」

「なにも死ぬつもりはねえよ。ただ、少し試したいことがあるだけだ」

「試したいこと……?」

 クウリは俺の言葉を疑うように、じっと真摯な表情で目を見る。

 だが観念したように、首を横に振った。

「……分かったよ。セーちゃんが陽動、だね」

「話が早くて助かるよ。じゃあ、行くぞ——俺達の、Live配信だっ!!」

 いつもの合言葉と同時に、俺は真っ先に瓦礫の中からダンジョンボスへ向けて距離を縮めていく。

[追憶の守護者:オーガ・ロード]

 ちらりと隣に並ぶドローンが映し出す配信画面を見れば、そのようなシステムメッセージが流れていた。

 ……ロード(支配者)……か。

「てめえらの場所じゃ……ねえだろうがっっ!!」

 勢いよく叫びながら、俺は真っすぐにオーガ・ロードへと斬りかかる。当然、その一撃で決まるとは思っていない。

「……愚かな小童よ」

「っ、てめえも喋んのかよ!!」

 初撃を容易くその左手で受け止めたオーガ・ロードは見下すような口調で語り掛ける。

 すかさず俺はファルシオンを光の粒子へと変えて大きくバックステップ。

 だが、その隙を逃すほど甘くはないようだ。

「甘いっ!!」

「——っぶね!?」

 オーガ・ロードが放つ大剣の横薙ぎ。俺は間一髪で再度大きく跳躍しそれを回避。

 一撃でも喰らえばゲームオーバーだ。その緊張感漂う命のやり取りに、思わず冷や汗が零れる。

「っ、放てッ!!」

[ホズミ:氷弾]

 甲高い声が響くと共に、背後から氷の弾丸が鋭くオーガ・ロードの足元に着弾する。着弾した氷弾は、瞬く間に周囲の地面を凍らせていく。

 足元を滑りやすくして、行動を制限する狙いがあった。

 しかし。

「壊してしまえば、同じことだ」

 そう言って強く地面を踏み抜く。瞬く間に、割れた氷の欠片が宙を舞いホログラムとなって世界から消える。

「……っ、ダメか……!!」

 後ろからホズミの悔しそうな声が響く。

 圧倒的な力の差を数回のやり取りで実感する。だが、ここで負けるわけにもいかない。

「ディル、頼んだ!!」

「ん?あー……あれね、はいはいっ。相変わらず無茶するなー……」

 呆れたように小言を漏らすディルを他所に、俺は再度オーガ・ロードに向けて距離を縮める。再び顕現させたファルシオンを握りながら、宣告(コール)を放つ。

「スパチャブースト”青”!!」

[セイレイ:五秒間跳躍力倍加]

 すると瞬く間に、俺の両足に淡く、青い光が纏い始めた。その纏う光と共に、勢いよく飛び掛かる。

「はああああっ!!」

「温いっ!!」

 俺を迎撃せんと、オーガ・ロードは大剣を振り抜いた。だが、当然そんなのは織り込み済みだ。

「——スパチャブースト”黄”!!」

[セイレイ:雷纏]

 再度宣告(コール)するのに連なって、俺の全身を青白い稲妻が駆け巡る。

 そのスキルに伴って更に加速した俺は、空中で身体を捻り大剣の一撃を回避。瞬く間に迅雷となり、オーガ・ロードの攻撃を引き付ける。

 青い光と、青白い稲妻が同時に世界を取り巻いていく。

「こっちだ!!」

「……小癪な」

 すでに”五秒間跳躍力倍加”の効果は切れ、俺に残されたのは”雷纏”のみだ。

「……見えるッ!!」

 だが、それでも加速する世界の中ではオーガ・ロードの攻撃を避けることなど容易いことだった。


 ——加速する世界。

 そうだ。”雷纏”を使う前と、使った後では見える世界が違う。


 あのライト先生の死をきっかけとして開花した、”雷纏”。

 思考が濁り、全てがスローになった世界で生み出された一筋の稲妻が、今でも俺に力をくれるんだ。

 全てが、遅く。

 そうだ。スローになっているんだ。


 ——雷纏を使うことで、俺の思考は……加速する。名づけるなら、”思考加速(ブレイン・スパーク)”というところか。

 一度気付いてしまえば、後は簡単なことだった。

「俺がこいつの攻撃全てを引き付ける!!頼んだ!!」

 オーガ・ロードの攻撃全てが見える。

 叩きつける一撃。薙ぎ払い。袈裟斬り。

 その一挙一動に至るまでの全てを捉えることが出来る。

「……さっすが、君は正しく世界の希望だよ。それでこそ、君は世界にとっての勇者でいれるんだ」

 ディルはどこか恍惚の笑みを浮かべながら、いつの間にかオーガ・ロードの背後へと回り込んでいた。

 指で銃の形を作りながらすかさずディルは宣告(コール)する。

「スパチャブースト”青”っ。ばーん!!」

[ディル:呪縛]

 完全に俺に気を取られているオーガ・ロードはディルの指先から伸びた漆黒の鎖を交わすことが出来なかった。

「なっ……!!」

 あっという間に、漆黒の鎖がオーガ・ロードを取り巻いて行く。

 締め付ける鎖に身じろぎ一つできなくなったオーガ・ロードは苦悶の声を漏らす。

「……っ、くそっ……!!」

「こんな使い方があるなんてな。見えていたよ、全て……な」

 もはや勝利したも同然だ。身動きの出来なくなったオーガ・ロードに向けてクウリは冷ややかな目で見下す。

 髪を留めているヘアピンが崩れ、クウリの目元が隠れる。

「……はあ。無茶振りがセーちゃんの本業か……いつもひやひやさせないでよ」

「悪いな、無茶振りをする俺のお世話を頼んだ」

 そう冗談めかして答えると、クウリは呆れたように大鎌を振り上げる。

 目元が隠れ、冷ややかな雰囲気を放つクウリの姿はまるで死神のようだ。

「はいはい。どうせセーちゃんは言っても聞かないんだ」

 冷酷に、クウリは大鎌をオーガ・ロードに振り下ろした。

 灰燼が——舞い上がる。


 目元が隠れた時のクウリは、普段の温厚な雰囲気が消えるから正直怖い。


To Be Continued……

総支援額:17000円

[スパチャブースト消費額]

 青:500円

 緑:3000円

 黄:20000円

【ダンジョン配信メンバー一覧】

①セイレイ

 青:五秒間跳躍力倍加

 両脚に淡く、青い光を纏い高く跳躍する。一度に距離を縮めることに活用する他、蹴り技に転用することも可能。

 緑:自動回復

 全身を緑色の光が覆う。死亡状態からの復活が可能である他、その手に触れたものにも同様の効果を付与する。

 黄:雷纏

 全身を青白い雷が纏う。攻撃力・移動速度が大幅に向上する他、攻撃に雷属性を付与する。

 また、思考能力が加速する。

②クウリ

 青:浮遊

 特定のアイテム等を空中に留めることができる。人間は対象外。

 緑:衝風

クウリを中心に、大きく風を舞い上げる。相手を吹き飛ばしたり、浮遊と合わせて広範囲攻撃に転用することも出来る。

 黄:風纏

クウリの全身を吹き荒ぶ風が纏う。そのまま敵を攻撃すると、大きく吹き飛ばすことが可能。

③ディル

 青:呪縛

 指先から漆黒の鎖を放つ。鎖が直撃した相手の動きを拘束する。

 緑:闇の衣

 ディルを纏う形で、漆黒のマントが生み出される。受けるダメージを肩代わりする効果を持つ。

 黄:闇纏

 背中から漆黒の翼を生やす。飛翔能力を有し、翼から羽の弾丸を放つことが出来る。

④ホズミ

 青:煙幕

 ホズミを中心に、灰色の煙幕を張る。相手の視界を奪うことが出来るが、味方の視界をも奪うというデメリットを持つ。

 緑:障壁展開

 ホズミを中心に、緑色の障壁を張る。強固なバリアであるが、近くに味方がいる時にしか恩恵にあやかることが出来ない為、使用には注意が必要。

 黄:身体能力強化

 一時的にホズミの身体能力が強化される。攻撃力・移動能力・防御力が大幅に上昇する他、魔法も変化する。

魔法

 :炎弾

 ホズミの持つ両手杖から鋭い矢の如き炎を打ち出す。

 一度の炎弾で3000円と魔石一つを使用する。火力は高いが、無駄遣いは出来ない。

 :マグマの杖(身体能力強化時のみ使用可)

 地面に突き立てた杖から、マグマの奔流が襲いかかる。ホズミの意思で操作可能。

 一度の使用で10000円と魔石一つを使用する。高火力であるが、スパチャブーストの使用が前提であり、コストが高い。

 :氷弾

 青色の杖に持ち替えた際に使用可能。氷の礫を射出し、直撃した部分から相手を凍らせることが出来る。

 炎弾と同様に、3000円と魔石一つを使用。

 :氷壁

 氷塊を射出し、直撃した部分に巨大な氷の壁を生み出す。死角を作り出す効果がある他、地面を凍らせることにより足場を奪うことも出来る。

 魔石(大)一つと、10000円を消費する。

ドローン操作:一ノ瀬 有紀

[サポートスキル一覧]

・斬撃

・影縫い

・光源解放

[アカウント権限貸与]

①雨天︎︎ 水萌

 ・消費額;20000円

 ・純水の障壁

 ・クラーケンによる触手攻撃

②船出︎︎ 道音

 ・消費額:20000円

 ・ワイヤーフックを駆使した立体的な軌道から繰り広げられる斬撃

 ・ノアの箱舟

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