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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑤高級住宅街ダンジョン編
170/322

【第八十二話(1)】望んだ世界(前編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

勇者としての自覚を胸に、日々困難と立ち向かう少年。

責任感が強く、皆を導く役割を担う。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染。かつて瀬川に命を救われたことから、強く恋情を抱いている。

気弱だった彼女も、いつしか芯のある女性へと成長していた。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

元男性としての過去を持つ女性。卓越した洞察力と、経験から勇者一行をサポートする。

今日も彼女は仲間の為にその刃と技術を存分に振るう。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心優しき少年。魔災以降、直近までの記憶が無く自分がどのように生き抜いてきたのかを覚えていない。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。寂しがりであり、よく瀬川に引っ付いている。

・another

金色のカブトムシの中に、一ノ瀬が男性だった頃の意思を宿された少年。本来であれば、一ノ瀬は彼の姿で生きていたはずだった。

・ディル

役職:僧侶

瀬川 沙羅の情報をベースに、ホログラムの実体化実験によって生み出された作られた命。セイレイの力になるという目的だけで行動してきた。

 掃除を終え、綺麗に整えられたリビングに配置された木目が特徴的なダイニングテーブルの一角に彼女は腰掛けていた。

「……」

 前園は喰いつくようにパソコンの画面を真剣に見つめている。

 配信画面に映る映像から得られる情報を何一つ見逃さないように、念入りに確認していく。

 かなり集中していたものだから、前園は背後に近づく一ノ瀬に気づかなかった。

「……何真剣にやってるのかと思ったら、動画見てたのね」

「きゃわっ!?」

 変な叫び声を上げながら、前園は慌ててパソコンの画面を閉じた。

 取り繕うように引きつった笑いを浮かべ、口早に言い訳の言葉を連ねていく。

「ほ、ほらっ、たまには息抜きも必要だと思うの。ずっと張り詰めていたら疲れちゃうし」

「別に責めてないでしょ……」

 一ノ瀬は困ったように苦笑を漏らしながら、それから彼女が見ていた動画の話に触れる。

「もしかして、聴いてたのってこの間話してた秋狐(しゅうこ)さんとかいう人の音楽?」

「そう、正解っ!!あ、何なら有紀さんも聴く?」

 懸命に布教しようと、再びパソコンを開き一ノ瀬へとヘッドホンを差し出した前園。だが、一ノ瀬は苦笑いを浮かべながら首を横に振った。

「いや、今は大丈夫。音楽聴くと勉強とかに集中できなくなっちゃって……」

「あー……いるよね、たまにそう言う人」

「ごめんね、ちょっと色々と今は考えることが多いから……後で聴かせてね」

「うん、また有紀さんとも語りたいから、絶対だよ?」

 少しだけ残念そうに肩を落とす前園。だが、そんな二人の会話に割って入るようにパソコンの画面を見る青菜。

 彼は興味津々と言った様子だった。

「あ、ホズちゃん。僕秋狐さんの曲聴きたい」

「珍しいね空莉君?音楽好きなの?」

 前園の質問に、青菜は首を横に振る。

「ううん、そういう訳じゃないんだけど……ちょっと気になることがあって」

「気になること?」

「何度かさ、話に出てる”秋城 紺”ちゃんだっけ。あの子のアカウントに関する話」

「……それが、どう秋狐さんに関係するの?」

 秋狐の熱心なファンでもある前園は、突然切り出された話に対し疑わしげに睨む。

 だが、青菜は怯まずにその自身の仮説について話を続けていく。

「船出ちゃんが言ってたでしょ?”Live配信をうたう”ってさ」

「うん」

「僕ね、それが”歌”のことだと思うんだ。ほら、”歌唱Live”とか言うし。だから、秋城ちゃんのアカウントって、歌に関係してるんじゃないかなって思うんだよね」

「なるほど、だから秋狐さんが、秋城 紺さんのアカウントじゃないのかって思ったんだね」

「そういうこと」

 自分の仮説を理解してくれたことに、青菜は一安心したように頷いた。

 だが、前園は間をおいてから静かに首を横に振る。

「……でも。残念だけど、私はその可能性は低い……というか、無いと思うよ」

「えっ、どうして?」

 理由を尋ねると、前園は委縮した様子を見せた。引きつった笑みを浮かべながら、否定する理由を告げる。

「……畏れ多すぎでしょ。秋狐さんは私達の手に届かない神的存在なんだよ。だから絶対にない」

「ファンの鑑だね……」

 平時から論理的思考で意見する前園とは思えない理由で否定されたことに、青菜はどう反応していいものか分からなかった。

 前園は話は終わりと言わんばかりに、ヘッドホンを装着し直してパソコンを開く。

「私はPV映像の考察で忙しいから、また後でね。とにかく絶対にそういう可能性はないからね」

「……あ、うん……」

 それ以降は前園は再び、秋狐のPV映像を食い入るように見始めた。反応に困り果てた青菜は、助けを求めるように一ノ瀬に視線を向ける。

 しかし、一ノ瀬も何故か物思いに耽るように、顎に手を当てていた。

「……有紀姉?」

「……あ、うん?どうしたの」

「こっちのセリフだけど、何か気になることあった?」

 青菜の言葉にハッとしたように一ノ瀬は目を見開き、それから慌てて首を横に振る。

「ん、んーん、何でもないっ。そういえば紺ちゃんも歌上手かったなーって思い出してただけ」

「そうだったんだ、聴いたことあるの?」

「魔災前にちょっとね、紺ちゃんが投稿してた動画聴かせてもらった……というかスマホ奪い取って無理矢理聴いた」

「鬼じゃん」

「う、うるさいなあ」

 自爆発言をしたのは一ノ瀬自身なのに、青菜の指摘に対してむくれた表情を作った。

 それから、ふと昔を懐かしむように呟く。

「でも、今でも歌ってるのなら、またいつか聴きたいね」

「……」

 青菜としては、合っているにせよ間違っているにせよ、一ノ瀬は一度秋狐の曲を聴いてみるべきなのでは——そう思っていたが、あえて口に出さないことにした。

「まあ……いつか分かる話だもんね」

 特に急いで執着するような話でもないと考え直し、青菜は大人しくその場を後にする。

 

----


 青菜は気分転換するように、一ノ瀬宅から出て屋外の庭に訪れた。

 今は各々休息の時間を取っており、庭には誰も居ない——はずだったが。

「久しぶりだね、青菜 空莉君?」

「……船出ちゃん。どうしてここに」

 漆黒のワンピースを身に纏った船出 道音はゆったりとベンチに腰かけていた。

 ストーを連れてきているのかと思い、辺りを見渡す。しかし、彼の姿はどこにも見当たらなく、どうやら彼女一人らしい。

「有紀姉に用事?それとも、another君かな。呼んでこようか?」

「いや、私は君に用事があるの。まあ一ノ瀬先輩……あ、男の方ね?……にも会いたくないと言えば嘘になるけど」

 どうやら、船出の中では男性の頃の一ノ瀬の呼び方は”一ノ瀬先輩”としているようだ。彼女なりの区別方法なのだろう。

 しかし、あまり接点のないはずの青菜は、なぜ自分に用があったのか分からず首を傾げる。

「……船出ちゃんと、そう関わったことってないよね?」

「まあ、ね」

「一体、何を言いに来たの?」

 要領の掴めない船出の言葉に、青菜は首を傾げる。

 だが、船出は全てを語る気はないようで、くるりとベンチから飛び跳ねるように立ち上がった。

「ん-、ちょっとしたお節介かな」

「お節介……?」

「青菜君、君ね、記憶を取り戻したいって思う?」

「正直、嫌な予感もするけど……取り戻したいかな」

 青菜の返事に、船出は胸をなでおろした。その姿は、どこか安心しているようにも見える。

「良かった。これで、キミが記憶を取り戻したくないと言っていたら、私は強硬手段を取らなくちゃいけなかったから」

 そう言って、くるくると踊るように回る。彼女の動作に連なって、漆黒のスカートがふわりと揺れた。

 揺れるスカートの隙間から見えるすらりと伸びた足に青菜はどこか気まずくなり、彼女から目を逸らす。

 その彼の視線の動きに気づいた船出は、気まずそうに苦笑いを零した。

「……むっつりめ」

「違うから!?」

「あははっ」

 船出はあっけらかんと声を上げて笑う。

 そうやって談笑している声が聞こえたのだろう。anotherは庭へと顔を出し、船出に声を掛けた。

「久しいな、船出」

「あっ、一ノ瀬先輩!お久しぶりですーっ!」

 anotherを見かけた船出は、周りの目など気にもすることなく勢いよく飛びついた。

 頬ずりしながら、船出はanotherの感覚を堪能する。

「はあ~……懐かしい……ゆきっちのすべすべお肌もいいけど、一ノ瀬先輩のしっかりした体つきも良い……」

「おいやめろ船出。青菜が困ってるだろ」

「別に何でもいいもん―っ。はあああああ最高……Sympass運営になって初めてよかったって思ってる……」

「こんなところで運営になるメリットを実感するなよ……」

 anotherはついに呆れてため息を零した。

 目の前で繰り広げられる茶番に、青菜はついて行くことが出来ずぽかんと呆けた表情を浮かべる。

「……あの。これ、何……?船出ちゃん一体何しに来たの」

「あっ、忘れてた」

「忘れちゃ駄目でしょ……」

 その問いかけに、ハッとしたのだろう。パタパタとスカートを叩き、塔出高校の方向を指差した。

「セイレイ達と私は決着を付けなきゃいけないもんね。もう、残された選択肢は全力のぶつかり合いだけ」

「そう、だね。君が四天王である限り、僕達は戦わないといけない」

「セイレイ達は”未来を描きたい”。それに対して私は”これ以上何も変えたくない”……どっちの想いが強いか、確かめないといけない。でも」

 船出はそこで言葉を切り、しっかりと青菜の目を見据えた。

「……それでも。君達には、一度私が望んだ世界をしっかりと見て欲しいんだ。セイレイ達……勇者一行が、魔災が無かったら見ていたはずの景色を、見て欲しい」

「魔災が無かったら、見ていたはずの景色?」

 言っていることが分かるようで、分からない。

 青菜はその言葉の真意を捉えそこねて、首を傾げた。

 だが、船出はそれ以上話を続ける気はないようで、青菜たちに背を向ける。

「だから、ちゃんと遅刻せずに来るんだよ。一時間目は8時15分からだからね」

「なんで、それを僕に伝えたの?セイレイ君に直接言えばいいのに」

 真っ当な質問を投げかける青菜。船出はちらりと彼へと視線を送った後、彼から遠ざかるように歩みを進めながら言葉を続けた。

「青菜君を見てるとね、真水先輩をどこか思い出すんだ。だから、ゆきっちも君によく構うのかもね」

「……鶴山 真水君……」

「そ。真水先輩も生きてたら良かったんだけどね……」

 どこか寂しげに最後にぽつりと呟いた後、船出は完全に一ノ瀬宅から姿を消した。


To Be Continued……


そう言えば最近若干情景描写の詰めが甘い気がするので、気をつけようと思います。


【開放スキル一覧】

・セイレイ:

 青:五秒間跳躍力倍加

 緑:自動回復

 黄:雷纏

・ホズミ

 青:煙幕

 緑:障壁展開

 黄:身体能力強化

・noise

 青:影移動

 緑:金色の盾

 黄:光纏

 赤:????

・クウリ

 青:浮遊

 緑:衝風

 黄:風纏

・ディル

 青:????

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