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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑤高級住宅街ダンジョン編
142/322

【第六十九話(1)】こんな毎日のままで(前編)

【登場人物一覧】

瀬川(せがわ) 怜輝(れいき)

配信名:セイレイ

役職:勇者

勇者としての自覚を胸に、日々困難と立ち向かう少年。

責任感が強く、皆を導く役割を担う。

前園(まえぞの) 穂澄(ほずみ)

配信名:ホズミ

役職:魔法使い

瀬川 怜輝の幼馴染。かつて瀬川に命を救われたことから、強く恋情を抱いている。

気弱だった彼女も、いつしか芯のある女性へと成長していた。

一ノ瀬 有紀(いちのせ ゆき)

配信名:noise

役職:盗賊

元男性としての過去を持つ女性。卓越した洞察力と、経験から勇者一行をサポートする。

どこか他人に対して負い目を感じることが多いのか、よく他人と距離を取ろうとする。

青菜 空莉(あおな くうり)

配信名:クウリ

役職:戦士

心優しき少年。魔災以降、直近までの記憶が無く自分がどのように生き抜いてきたのかを覚えていない。

雨天 水萌(うてん みなも)

元四天王の少女。寂しがりであり、よく瀬川に引っ付いている。

かつて、魔災以前は地域に寄り添った産直市場として機能していたであろう施設の中。そこに新たに食料が仕入れられることのない商品棚が埋め尽くす空間の中、勇者一行は立ちはだかるスライムと対峙していた。


「ホズミ!!頼んだ!!」

セイレイは対峙するスライムを切り払った後、白のドローンを操作するホズミへと視線を投げかける。

彼の期待に応えるように、ドローンのスピーカーからタイピングの音が響く。

『サポートスキル”熱源探知”!!』

そうホズミが宣告(コール)すると共に、ドローンのカメラ内に収まった敵に緑色のターゲットマークが表示される。それは、瓦礫の影に隠れたスライムをも瞬く間に映し出した。

ドローンのホログラムに映し出された配信画面を確認し、「助かる」と告げてセイレイは駆け出す。

それに重ねるように、noiseとクウリも駆け出す。

「セーちゃん、オレンジ色、魔法に警戒ね」

セイレイと並走するクウリはそう忠告した。それにセイレイはコクリと頷きクウリと分断。

彼らが対峙するのは、”熱源探知”の付属効果によりスタン効果をもらい、怯んだスライムの群れだ。

お互いにカバーし合いながら、それぞれ魔物を打ち倒していく。倒しきれなかったスライムが、セイレイの背後から襲い掛かる。

しかし。

「甘いっ」

逃すまいとnoiseはすかさず短剣を突き出し、瞬く間にそのスライムの核を貫く。

「ピィッ……」とか細い声を漏らしながら、やがてそのスライムは灰燼と消えた。


[まだ!!橙色のスライムが残ってます!!あ、セイレイ君見てる!!]

[水色個体は2体!橙に意識をシフトして 3000円]

[今は支援額に余裕があるな。今後のことを見越して慎重に立ち回るのも一つかもしれない]

[ボス戦を見越すと、今は温存時かもな]


『勇者!橙色(だいだいいろ)のスライムの魔法に気を付けてください!』

「了解……っ!!」

ホズミの指示に従い、セイレイは瓦礫の影に潜むように身をかがめる。それと同時に、橙色の粘液に覆われたスライムが突如としてその形を変えていく。

瞬く間に、それは人型へと姿を変えた。その右手に携えた青色の宝玉がはまり込んだ杖を、セイレイへと向ける。

「セイレイっ、スライムの右腕を斬り落としながら倒せるか!?」

その杖を見たnoiseは、すかさずセイレイにそう声を掛けた。彼女の意図は理解できないが、セイレイは「分かった!」と返事する。

「ピィィィィッ!!」

スライムはその間にも、杖の先に力を籠める。青色の宝玉を中心として、光を帯びたプログラミング言語が空を泳ぐ。

それを目視したセイレイはスライムの動きに合わせて、一気に瓦礫から飛び出す。

「スパチャブースト”青”!!」

[セイレイ:五秒間跳躍力倍加]

システムメッセージがコメントログに表示されると共に、セイレイの両脚に淡く、青い光が纏い始めた。それと同時にセイレイは一気に橙色のスライムへと駆け出す。

「ピィッ!?」

スライムは驚いた声を上げながら、杖先から氷弾を放つ。

「っ、炎弾じゃねえのかよ!?」

セイレイは驚きながらも空中で身体を捻り、氷弾を回避。空を切った氷弾は瞬く間にコンクリートの外壁に着弾した。轟音と共に、ひび割れた氷が壁面を這い巡る。

再び地面に着地したセイレイは、勢いのままにファルシオンを振り抜いた。剣の軌跡は、スライムの右腕と重なる。

「ピィィィィ!?」

スライムの右腕と、青色の杖が大きく空を舞う。それを確認したセイレイはもう一度身体を捻り、回転斬りを浴びせる。

「ぜあああっ!!」

その掛け声とともに、セイレイが振るう一撃が、瞬く間にスライムの胴を断ち切った——。


----


スライムが灰燼と化した後も、青色の宝玉を飾り取った杖はその場に残っていた。

セイレイはそれを拾い上げ、ちらりとnoiseへと視線を送る。

「姉ちゃん。もしかして、武器ごと腕を斬り落としたら、灰燼にならずに残るのか?」

「ああ。そうだ、私がよく投擲に使う短剣もそうやって集めたものだ」

noiseの返事を聞いたセイレイ。それから、自身が持つファルシオンへと視線を落とす。

「……そう言えば、俺が持つファルシオンもゴブリンの腕を切り飛ばして手に入れたものだったな」

納得がいったように頷き、それからファルシオンから手を離す。すると、瞬く間にファルシオンは光の粒子となり虚空へと消えた。

『……私の普段使いしてる杖も、ですか』

ドローンのカメラはセイレイの方へと向く。だが、セイレイもセイレイで記憶があいまいらしく首を傾げた。

「あの時は無我夢中で腕ごと斬り飛ばしたとか覚えてねえけど……実際手に入ってるからそうなんだろうな」

『それもそう、ですね』

ホズミは釈然としないながらも、それ以上は問いただすことなく黙りこくった。

「セーちゃんっ」

一足先に、ダンジョンの奥地を偵察していたクウリが小走りで戻ってくる。

辺りを警戒しながら戻ってきたクウリに、セイレイは姿勢を正して問いかけた。

「どうした、クウリ」

「あ、ううん。今回のダンジョンは、ボスは居ないみたいだったよ」

「分かった、ありがとな」

クウリをねぎらうように、セイレイは彼の肩を叩く。どこかクウリは得意げに笑った後、セイレイの後に続いた。


男性陣二人を他所に、noiseはちらりとドローンへと視線を向ける。

正確には、ドローンを操作するホズミに向けて、だ。

見せつけるように青色の宝玉を飾り付けた杖を持ち上げて、noiseはいたずら染みた笑みを浮かべる。

「待ってろよ、ホズミ。お土産だ」

『楽しみにしてますねっ』

そう言ってnoiseも二人に続いた。


----


七色に光る水晶体である、追憶のホログラムの前に立ってセイレイは宣言する。

「さて、追憶のホログラムを起動するぜ」

[待ってたよ]

[スケッチブックの準備は良い?]

[今回も楽しみにしてますっ]

各々の期待の籠ったコメントを見ながら、セイレイは微笑んだ。それから、noiseからスケッチブックと鉛筆を受け取る。

「ほらよ」

スケッチブックを脇に抱えながら、セイレイは追憶のホログラムを起動させた。

光が瞬く間に迸り、大地をプログラミング言語が流れていく。

かつての光景が、瞬く間に映し出される。


「……同じスーパーと言っても、利用している層が違う印象を受けるな」

セイレイはポツリと、率直な感想を述べた。

何度か攻略したスーパーと比較すると、産直市場の利用客はどちらかと言うと高齢者層が多い印象を受ける。

『おお。久しぶりー』

『いつもご利用ありがとうございます。当店のポイントカードはお持ちですか?』

『あっ、すみませんちょっと通りますねー……』

近隣に住んでいるであろう人々と他愛ない雑談を繰り広げる者もいれば、黙々と目的の品を購入していく人もいる。店側で提供する試食に対し、嬉しそうに感想を述べる人もいる。

そんな様々な人々の想いを乗せたホログラムが、勇者一行の視界に映し出された。


[なんか、産直市場って他のスーパーと比べたら高いんだよな]

[分かる]

[俺は結構好きだったよ。なんか、他のスーパーにはない面白さがあるって言うかさ]

[正直、あんまり行ったことなかったわ。じいちゃんとかよく行ってるのは知ってたけどな]

[私も、正直思い入れはないです……]


さほど産直市場に訪れた機械のある人が少ないのか、どこか今までと比較すると反応に乏しい。

だが、セイレイはそれでも構わずに目の前に映し出される光景をスケッチし始めた。

鉛筆を走らせ、しっかりとそこに生きた人々の感情をスケッチブックに描き留めていく。

「ま、知らない世界の方が多いよな。魔災前の世界で生きてた皆でさえ知らないんだ。俺が知ってる世界なんてたかが知れてる、ってもんだろ」

[でも。セイレイ君の配信は私達にも知らない世界を教えてくれるのでありがたいですっ]

雨天と思われるコメントに、セイレイは思わず笑いが零れた。

「雨天にもクウリにも知らない世界を教えるって言ったからな。約束はちゃんと守らないと」

[そういう律儀なところ、セイレイ君の良いところだと思いますよ]

「そりゃどーも」

軽口を叩きながら、セイレイはそのままペンを走らせ続けた。


---


しばらくして満足したのだろう。

セイレイは鉛筆を置き、それからスケッチブックを開いたまま配信画面へと近づけた。

そこには、綿密に買い物をする人々の姿や、商品棚に乱雑に乗せられた食品類が描かれている。

「ま、今日はこんなところで良いだろ」

[相変わらずセイレイの絵は見やすくていいな]

[上手い]

[ダンジョン攻略お疲れ様。いつも楽しみにしてます]

コメント欄を眺めたセイレイは笑いを零した。

「そう言ってくれると嬉しいよ。今日はここまでだな、そろそろ追憶のホログラムを融合させるか」

セイレイの言葉を待っていたと言わんばかりに、白のドローンはふわりと空を泳ぎ始めた。

『分かりました。追憶のホログラム、融合させますね』

やがて空を泳ぐドローンは、ふわりと追憶のホログラムへと近づいていく。二つの物体の距離が縮まるにつれて、光はより一層強く輝きを放ち始める。

目映い光が勇者一行を包み込み、やがてそれは完全に収束した。


[information

魔石:大 を獲得しました]


「……あれ?サポートスキルの強化じゃないんだね」

そのシステムメッセージを見たクウリはどこか残念そうに、率直な感想を漏らした。

「もしかしたら、サポートスキルの強化をし終えてしまったのだろうか」

noiseも、不思議そうに首を傾げる。追憶のホログラムの代わりに生み出されていた魔石を拾い上げ、まじまじとそれを見つめた。

大きさで言えば、片手程。ちょうどホブゴブリンの魔石ほどの大きさである。

「……しかし。魔石の大きさに、何か意味はあるのか?」

「もしかしたら、ホズミの魔法に影響があるのかもな。新しい杖もあるし、それは次の配信で試そうぜ」

「まあ。そうだな」

セイレイの意見にnoiseは頷く。


「じゃ、そろそろ出るか。今日もお疲れ、だったな」

「疲れたー。ね、後でスケッチブックゆっくり見せてよ」

「お、いいぜ。何ならクウリも絵を描く練習するか?」

「いいの!?やってみたい!!」

「はいはい、二人とも。そう言う話はダンジョンから出てからしようねー」

「へーい」「うんっ」

和気あいあいと会話しながらダンジョンを後にする勇者一行をドローンは映し出す。

それから、ドローンのスピーカーを介してホズミの声が響いた。

『まだカメラ切ってないんだけどなあ。あ、それじゃあ配信終わりますね』

[あ、待って皆―。置いて行かないでくださいーっ!]

[お疲れ様。最近は楽しそうに配信してるからさ、見てて安心できるよ]

[ゆっくり休んでくれよ。お疲れ様]


--当配信は終了しました。アーカイブから動画再生が可能です。--

そのシステムメッセージと共に、勇者一行の配信は終了した。


To Be Continued……

【開放スキル一覧】

・セイレイ:

 青:五秒間跳躍力倍加

 緑:自動回復

 黄:雷纏

・ホズミ

 青:煙幕

 緑:障壁展開

 黄:身体能力強化

・noise

 青:影移動

 緑:金色の盾

・クウリ

 青:浮遊

 緑:衝風

 黄:風纏

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