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ストーリーログ9。みんなで遠征許可クエスト。 ファイル2

「見えて来たぞ。デラッコイーノ。

動画で見たことはあったけど、

ほんとに、ジャッコイーノがでかくなっただけなんだな」

 ガジャリ。重たそうな鈍い音をさせて、

 そうツヨシさんが言う。

 

 

 足音の大きさは、大してかわってない。

 けっこう離れてると思うんだけど、それでも見えるのか。

 

「狩りゲーおなじみだよね。最初に倒す小型のモンスターの、

おっきくなったのが、最初の関門って」

 ぼくが言うのには、ウイト君が

 「だよなぁ。いまだかわらぬ伝統、って奴だぜ」

 って、なんでかニヤリ声で答えた。

 

 

「敵さん、足を止めたぜ。こっちを認識した。

ちぇ。最初の一声の間に一発、

フルチャージで、叩き込んでやろうと思ったんだけど、

これじゃ遠すぎるぜ」

 ツヨシさん、完全に狩りゲー気分なんだ。

 

 ツヨシさんが言い終えたところで、

『ギョラァァーン!』

 ジャッコイーノの鳴き声を、ただ単純にスロー再生しただけに聞こえる、

 そんな声を発した敵、デラッコイーノ。

 

「来るのを待って、そこにお見舞いすっか!」

 声を聴き終えて言ったツヨシさん。言葉が終わるのとほぼ同時に、

 シュイイイイって言う、アヤメちゃんがチャージ攻撃したのと同じ、

 溜め攻撃を、構えた音がし始めた。

 

 

「我々も構えるぞ。いっきに畳みかける、

準備しろ、貴様ら!」

 オーガさんの、気合の乗った声。

 今のは、いらいらじゃなさそう。

 

「了解。突っ込むからよ、ダイ。

プロテクティ、頼んだ」

「りょうかーい」

 プロテクティって言うのは、防御魔法の名前。

 見た目には、バリアが張られてる風になるみたい。

 

 一定ダメージを超えると、パリーンってガラスが割れたみたいな音がして、

 魔法の効果が切れる。動画で見てる……じゃないね、聞いてるから

 たぶんバリアなんだろうな、って思ってるんだ。

 

 

「ひぃふぅみぃ、六人ね。そうなると、うん 余裕でいける」

 どういうことだろう、って考える必要はなかった。

 なんでかって言うとね。

 

 シャーン。

 

 後ろで鈴が鳴ったような音がした。一緒にカチャリって言ったから、

 ダイさんが武器を構えたんだと思う。

 

詠唱開始キャスティング

 ダイさんがそう言うと、

 アヤメちゃんが、キャスティングレッドを使った時の、

 キュオーンって言う音が、後ろからした。

 

「我が明朗なる魔力、壁となりて脅威を絶つ宮とならん。

プロテクティ、ゼクシフト!」

 エコーがかかった声で、そう呪文を唱えたダイさん。

 ゼクシフトの声が終わって一秒ぐらいかな? 経ったら、

 シューって静かな、音程が下がって行く音がした。

 

 回復の音とは、少し違う音だ。

 

「はい、全員に防御魔法行ったよー」

「えっ? 今の一回で?」

 驚くぼくに、「うん」って軽い語調で返事したダイさん。

 その仕組みを解説してくれた。

 

 

「今、プロテクティの後にゼクシフトって言ったでしょ?」

「うん」

「あれは、ワイド・スキルって言う、呪文効果を

最大でパーティ一つ分、つまり八人分まで

拡大できる、サポートスキルを使ったってことなんだ」

 

「そんなのがあるんだ」

 感心するぼくに、

 「剣士には縁遠いスキルだから、知らないのもむりはないよ」

 ってフォローしてくれた。

 

「で、あるんだなぁ」

 なんか誇らしげ。

 

「一人分についてはなにもつけないんだけど、二人目からは

ツヴァイシフト。それから

ドライシフト、フィアシフト、フンフィフト、

ゼクシフト、ズィビフト、で、アハチフト

って風に、かける人数が増える毎に、シフト部分の言葉がかわるんだ。

 

で、一人増える毎に、通常消費MPに5ずつ

消費量が上乗せされていくんだよね」

「そうなんだ。便利なスキルがあるんですね」

 

「そうなんだよねー。更にぼくは今、オーガが持ってたレアアイテム、

賢者の指輪を貸してもらってるから、もう魔法使い放題」

 すっごい楽しそう……。

「それって、たしか。スキルの消費MPが半分になる

って言う奴じゃなかったでしたっけ?」

 

 アヤメちゃんの、びっくりしながらの質問に、

 「そのとおりっ」って、やっぱり嬉しそうに答えるダイさん。

 

 

「お前ら、のんびりスキルの解説かよ。気楽なもんだな!」

「って言うけど、ウイト。君だって、バリアに任せて

けん振り回してるだけじゃないかー」

「しかたねえだろ、こんなにジャッコイーノいんだから!」

 

「そういえば。なんか周りで、ジャッコイーノが倒されてってるような……」

「たしかに……気楽ね、あたしたち」

 アハハって苦笑いするアヤメちゃん。

「最前線は、すごいことになってるよ二人とも。

ありゃ、デラッコイーノがかわいそうだなぁ」

 

「どういう状況なんですか?」

「やぁっ!」

 ぼくの問いに答えるタイミングで、アヤメちゃんのおたけび。

 なにかと思ったら。声の直後に、左の少し離れたところから

 バキーって打撃音と、ギョアーって言うジャッコイーノの断末魔。

 

「だって、っとシオン君右っ!」

「あ、はいっ」

 カチャっと左腰のけんに手を書ける。右から聞こえるのは、

 たぶんジャッコイーノの足音。

 

 数は

 ザザッ ザザザッ ザザッザ

 三匹。

 

 距離は、ぼくの足だとだいたい……走り込んだと考えて……。

 いや、計算はいらないな。近づいてきてる。

 

 

 けんをゆっくり抜く。

 鞘と刃がこすれる、スィーって言う独特の音がかっこいい。

 って言っても。その音を狙って、ゆっくり抜いたわけじゃないんだけど。

 

 カチャキ、っとしっかり構えて……よし!

「だぁっ!」

 一歩、おもいっきり踏み込みながら、上から振り下ろす。

 一匹に命中っ!

 やっぱり、敵を斬った感触は、ずっしりと重い。

 

「らぁっ!」

 誰かすぐ横に走って来たな、と思ったらこの声だ。

 ウイト君。

 

「じゃ、残りはぼくが。そぉりゃっ!」

 ドゴ ドゴ ドゴンッ。魔法士ウィズだから、

 たぶん、杖での打撃音なんだろうな、この音。

 アヤメちゃんの、肉弾戦の音より少しだけ鈍い。

 ……聞くからに痛そうな音だ。

 

「これで何ウェーブ目だよ、このジャッコイーノども。

パーティー人数六人いるから、その分湧きが多いのか?」

 ウイト君が、めんどくさそうに言った。

 湧きって言うのは、雑魚敵が出現することの通称。

 ちなみに、いくらでも湧いて来るのを、無限湧きなんて言う。

 

 

『ギョラアアアアア!!』

 

 

「なんか、デラッコイーノがすごい声出したよっ!」

「お怒りか? で、たしかこいつは怒り咆哮でも

ジャッコイーノを呼び寄せるんだったな。

あぁもぉ! 俺にもボスを叩かせろ!」

 

「ならっ! ちっちゃいのはっ! あたしたちにっ! 任せてくださいっ!」

 アヤメちゃん、喋りながら戦ってる。

 実力者っぽくて、かっこいい。

 

「おーしゃー! なら、頼んだぜしんがり組っ!」

 その言葉の後で、「まーぜーやーがーれー!」って言いながら、

 ウイト君、前の方に走ってっちゃった。

「ぼくもボスと戦いたいなぁ」

 

「残念だけど、今回は諦めた方がいいね。

パーティープレイのチュートリアルだと思って、

次を待とうよシオン君。この

『ギョラギョラギョーラーギョオラー♪』

状態は、ほっとくにはまずいでしょ?」

 

 どっかで聞いたような音程だなぁ。

「うぅ、わかりましたダイさん。はぁ、残念」

 たしかに、さっきのおたけびですごい数が来たみたいだ。

 周りから、いっぱい足音が聞こえてる。

 

 ウイト君の言ったのは、ただの予測だと思うけど、

 たしかに、パーティー人数で、ジャッコイーノの出現数が

 変わる仕様なのかもしれない。

 

 ソロプレイヤーさんたちのことを考えると、

 いくらなんでも、この数は多すぎる。

 

 

「いくらっ! 一匹! 一匹はっ!

大したことっ! ないって言ってもっ!

この! 数はっ! おかしいでしょっ!」

 千切っては投げながら言うアヤメちゃんは、やっぱりかっこいい。

 

 なんでわかるかって言うと、打撃音とジャッコイーノの断末魔が、

 そこら中から、途切れずに聞こえてるから。

 

「たぶん、このラッシュで出納めだとは思うけどねぇ。

はい! ほい! はーい!」

 三回の攻撃で、一匹倒すダイさん。

 そんなに攻撃力ってかわるのかなぁ?

 それとも、武器毎のダメージが違うのかな?

 

「このっ!」

 今度は、ぼくが横一閃。

 ズシっと重たい斬撃の感触と、刃が左から右に通り過ぎる感覚。

 一刀両断。

 見えなくてよかった、と思う数少ない瞬間だ。

 

 

「後! 一匹っ!」

 ドガッって言う、普段よりも鈍い音。

 もしかして今の、クリティカルヒットだったのかな?

「妙に気持ちいい入り方したなぁ。クリティカルだったのかな、今の」

「同じこと思ったよ。音がいつもより鈍いから」

 

「こっちも、後、一匹だよっ!」

 ダイさんが、珍しく力の入った声で攻撃した。

 ドガンって、こっちもこれまでより鈍い音だった。

 

「うわー。雑魚相手にクリティカルかー。

ぼくもアヤメちゃんもだ。運が悪かったねぇ」

「「ああ、やっぱり今のクリティカルだったんだ。って、あ……」」

「いやー、見事なハモりっぷりだねぇ。さっすがリア充」

 

「からかい満点な声色ですねダイさん……」

「だから、リア充じゃないですって」

「でも、ほんとよくハモるよね、ぼくとアヤメちゃん」

「そりゃ、まあ……そうだけど。でも、

リア充じゃないもん、あたしたち」

 

 

「そこでてれるのがあやしーなー」

「もぅ、みんなしてからかうんですからー。

ほら、加勢にいきましょ、加勢に」

 ちょっと、不機嫌そうにザクザク歩いて行くアヤメちゃん。

 

 

 

「いこっか」

「そうですね」

 ぼくたちは彼女に続いて、ザク ザクと、

 落ち着いた歩調で、デラッコイーノに向かって歩いた。

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