19、おじさん、裸をたくさん見る
初めてのご感想をいただきました!!
あまりに嬉しくて、感想の画面を見て数時間呆けてしまう始末です^^
俺は、冒険者たちの遺体を弄んでいたゴブリンたちの首を風魔法で狩りつくした。
そこに現れた体の大きな上位個体、おそらくはゴブリンキングの首もあっさりと切り落とす。
野蛮なゴブリンどもなんぞに、俺の感情に干渉される事はないと強く心を保つ。
復讐でもなく意趣返しでもなく義憤からの怒りでもなく。
ただ、冒険者たちの魂の安寧を祈りながら、冷静に風魔法を行使する。
「処理」は終了した。
さて、俺としてはこれから、ゴブリンどもに弄ばれた冒険者と思われる者たちの亡骸を弔ってあげたかったのだが
「ハヤトはここでちょっと待ってて」
クウちゃんにそう言われた。
言われたときは、俺が軽トラから離れられないことを考慮しての言葉だと思っていた。
だが、高次元の存在たるクウちゃんがこの異世界に顕現したことで今の軽トラのレベルは100。
つまり、今の状態なら俺は軽トラから降りて100m離れても死ぬことはない。充分、ゴブリンの集落内を歩いて亡骸を弔う事も可能だった。
なのに俺に軽トラの中で待てと言う。
クウちゃんが何を考えているのか測りかねていると、玉子型の光の球は集落の中央に向かっていった。
光の球は助手席のドアを開けることなく透過していった。いくら高次元のエーテル体だからといって、せめて降りるときはドアを開けて欲しいと思う。
そして、集落の中央あたりに着くと、光の球は一度大きく光り輝く。
「どうやら、大丈夫そうね」
クウちゃんの声がラジオから聞こえてくる。本体があっちにあるのに声がここから聞こえてくるので一瞬驚いてしまった。
「ダーリン、この人間たちの遺体を『自動積載』で回収して、軽トラの荷台に乗せてくれる?」
俺は言われるがままに4人の遺体を回収、いったんは亜空間に取り込まれるもその後荷台の上に開放する。
4人の遺体は軽トラの『搭乗者保護』の効果の一つ、『清潔保持』で泥や汚れはきれいな状態になる。だが、遺体はひどく傷つき傷口も広く開き、内臓や脳もはみ出し目玉も原型がない。
「おっけー。そのまま回復魔法で『蘇生』しちゃって~」
なんと、死者をよみがえらせることができるんすか?
今の回復魔法ランクは(10)。ランクが10になる事で死者蘇生も可能らしい。ただし、死後72時間以内とのこと。さっきクウちゃんが「大丈夫そうね」といったのは死後の時間経過のことらしい。
回復魔法を発動。
4人の身体は光に包まれて傷なども治り、健康な肌の色がよみがえる。胸が上下し呼吸が再開されるのを確認する。意識はまだ戻らない。
この冒険者たちは男性が二人、女性が二人の4人パーティーだったのだろう。
男性のほうはどちらも20代前半といったところか。女性は一人が10代後半、もう一人は20歳そこそこといった感じだ。
当然、4人とも全裸だ。ついさっきまで悲惨な様相を呈していた肉体なのに、思わず女性二人の身体に目がいってしまう。だが不謹慎であることは大きく自覚していた為一瞬で目を逸らす。
男性二人の身体も目に入るがそちらは意識せずともスルー出来た。俺のより立派なところも含めてスルーした。スルーしたのだ。
凌辱された女性たちの事が気にかかった。命は戻ったが、ゴブリンたちは生殖能力がとても高いと聞く。体内で受精していたらこの女性たちはどうなるのだろう。
結果的に心配は杞憂に終わった。
軽トラの『搭乗者保護』にある『状態異常無効』がいい仕事をしてくれた。
ゴブリンからの凌辱行為は、女性たちにとって本意ではない強制された望まぬもの。つまりは「攻撃」とみなされ、その結果の受精は「状態異常」という扱いになる為、息を吹き返した時点で仮に妊娠していても無効化されるのだ。
ということは、もし犯されている最中に快楽とかを感じてしまって同意したことになってしまったらどうなるのだろう?いや、やめておこう。おじさんはいい年なのだ。日本の薄い本にありそうな内容を思い浮かべるような年齢ではない。おじさんは既に枯れているのだ。
「そっちは無事終わったようね?」
クウちゃんから声がかかる。そっちは?ってことはクウちゃんは何をするんだ?
「じゃあ、私今から受肉するから!」
なぬ?受肉?
言葉の意味が良く分からず集落の中央の方を見ると、光の球のクウちゃんがひと際大きく輝きだした。
それと同時に、周囲に散乱したゴブリンたちの死体が少し浮き上がる。
そして……
グちゃっボリッでろっバキッボキッぐちゃっぎちゃっぐちゃっぼきゃっボキッ
一体何が起こっているのだ。
ゴブリンたちはまるでへたくそな奏者が操るようなマリオネットのように、関節の可動域など無視した動きをしたかと思えば、命の通わぬその体をビクビクと痙攣させる。
100体を超えるそれらから、なにかが中央の光の球に集まっていき、光の中で何かが形作られる。
そうして光が収まったその時、その場所には……
全裸の女性が一人たたずんでいた。
「おっけー♪ 受肉成功~! ダーリン! これで私たち身も心も愛し合えるわよ!」
……今日は全裸の女性を見る率が高いな。
いや、いまはそんなことはどうでもいい。
目の前に現れた女性を観察する。
年齢は10代半ばから後半。髪は青色。光の加減で銀色のようにも見えるから青銀といえばいいのだろうか。前髪は目にかかるくらい、後ろは長く膝の裏くらいまでは伸びている。
背は普通よりは少し高いだろう。165センチくらいといったところか。
顔立ちは整っており、日本人系とも欧米系ともつかない。強いて言えばアニメ顔なのか。
その目は青く、まなざしはいかにも元気があふれ出してきそうに溌溂としている。
体つきは均整が取れて美しく、お尻は小さめで胸にはメロンが二つ。いや、あれはメロンというより大きな蕪ではないだろうか。おそらくあの蕪はじいさんばあさんや孫や犬までそろって引っぱっても抜けないに違いない。
「やだもう、ダーリンったら! そんなに見つめられると恥ずかしいじゃない!!」
この言動からして、そこにいる女性はクウちゃんで間違いないはずだ。ちなみに、音声はラジオのスピーカーからではなく本体?のほうから聞こえてくる。
で、恥ずかしいとかなんとか言っているがそういう事じゃない。
たしかに全裸の女性をまじまじと見つめているが、見とれているとか美しいとかそういう事ではないのだ。
「なあ、クウちゃん? クウちゃんで間違いないんだよな?」
「そうよ! あ、私ったら裸じゃない! いや~ん! み、な、い、で♪ うふ、あとでゆっくりたっぷり見せてあげるから♪」
だからそうぢゃなくて。
「なあ、その体って……受肉ってやつか?」
「そうよ! これでダーリンとも同じ次元で、肉体を持ったもの同士あんなことやこんなこともできるわね♪」
だからそうぢゃなくてだな……
「だから……なんというか……、その体、肉体の構成要素は? クウちゃんはいったい何でできているんだ?」
「えっとね~、ゴブリンたちの体組織から使えそうなものを使って再構成したのよ!」
やっぱりかーーーーーーーーーーーーー!!
たしかにクウちゃんの得た肉体は美しいと思う。清潔であるとも思う。だが、それがゴブリンからできているというのはどうなのか。
俺にゴブリンからできた物体とあんなことやこんなことをしろというのか。いや、もとより嫁になるのを認めたわけでもないので体の構成要素がなんであれ今のところそんなことをする気はないのだが。そもそもおじさん枯れてるし。
「あ、ダーリンってば私の身体がゴブリンで出来ているのを気にしているのね? 大丈夫よ! ゴブリンの身体を使ったといっても骨や肉をそのまま使っているわけじゃないわ。元素分子どころか素粒子レベルまで分解して再構成しているから全くの別物みたいなものよ! それに、この肉体で食事して代謝を繰り返せばあっというまにゴブリン要素なんてなくなるわ!」
理屈は分かった、だが、そうはいってもだな。イメージというか偏見というか割り切れない感情は残ってしまう。
これからクウちゃんをみるたびにゴブリン姫とか頭に浮かんでくるのは否めないだろう。
あと、他にも気になっている事もある。
「なあ、100歩譲ってその体にゴブリン成分がないことは理解したとしよう。でも、引っかかることもある。クウちゃんがゴブリンの死体をバラバラにして自分の肉体を作ったってことは。さっきゴブリンたちが冒険者の遺体を弄んでいたことと同じように、魔物とはいえ立場が違うだけで死者を冒涜する事になってしまうのではないか?」
「たしかに、そういう見方もできるわね。でも、このゴブリンという存在がどういうものなのかを知ったら、きっとハヤトも納得してくれると思うわ。」
クウちゃん曰く、このゴブリンをはじめこの異世界の魔物たちは闇の勢力に作られたものらしい。この世界の生物たちから恐怖や絶望といった負の感情を吸い上げるために作られた、いわば人工生物。
闇の勢力が、この世界にあるリソース使って作りだしたもの。つまりは、この世界で正常な輪廻で生まれ出でるはずの魂と物質を奪って捻じ曲げたもの。
だから、ゴブリンの身体をクウちゃんの肉体として再構成することも、体内の魔石を回収して魔法的資源として活用する事も、魔物の肉をおいしく食する事も、すべては捻じ曲げられたものを本来あるべき姿、あるべき理に還元することだという。
なので、今回のクウちゃんの行為は冒涜などではなくで「浄化」だということだ。
だからか。先ほど俺はゴブリンたちの残虐な行為に対して怒りに任せて行動しようとした。それをクウちゃんは止めた。
もし、俺があの時魔物によってもたらされた「怒り」という感情を爆発させていたら、それは闇の勢力にたいしておいしい餌を与える事になったということだ。だから、「やつらの思うつぼ」だとクウちゃんは言ったのか。
「そうか、いろいろ理解できたと思う。ゴブリン姫。」
「その呼び方は絶対にやめてね! 愛するダーリンからゴブリンって呼ばれる乙女の気持ちを考えてみてよ!」
「ごめんごめん。俺が悪かった。」
「もう、本当にやめてね。絶対よ!」
「わかったわかった、悪かったってば。ところでクウちゃん?」
「なあに?」
「そろそろ服着よっか?」
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