15、クウちゃん、任務を拝命する
クウちゃんパートが2回で終わりませんでした><
次からは本編に戻る予定です。
あと、毎日の更新がとうとう限界となりました。
なるべく間隔を開けずにUPできるよう頑張ります。
~クウちゃん視点~
アシュトー司令官に呼び出されわたしは指令室へと向かっている。
……やっぱ怒られるんだよね……。
軍法会議かしら? いや、すぐに拘束される事はないわよね? もし拘束されるとしたら拘置所内での精神文化的自由権を主張しなくちゃ。最低限でも「あにめ」の見られる環境を! あと、それから読書のできる自由も必要ね。「らのべ」って差し入れしてくれるかしら? 「ねっとつうはん」で書物を取り寄せできるのなら良いのだけれど……。
そんなことを考えていると既に司令官室の目の前に着いてしまった。いまさら逃げ出すわけにもいかない。
わたしは覚悟を決めてドアの脇にある思念波認証のセキュリティ装置に向けて思念波を向ける。
音もたてずにドアが横に開く。わたしは数歩踏み出し執務机に座っているアシュトー司令官の前で踵を揃える。
「お呼びでしょうか。司令官閣下」
「よく来てくれた。『女神様』、いや、『光の勢力の筆頭』様。」
ぐはっ!
やっぱり聞かれてたのね!
「ああ、すまないすまない。『クウちゃん』と呼ばれるのが一番お気に入りだったな?」
ぐはぐはぐはっ!!!
本当に何から何まで聞かれていたらしい。いくら高次元の存在の司令官だからってこうも何でもかんでも筒抜けなのはいかがなものか。次元が上がるほどプライバシーがなくなるのは解せぬ。
「……さて、まずは闇の勢力の侵攻を未然に防いでくれたことに感謝する。」
お?お褒めの言葉か? もしかして軍法会議どころかお咎めなしで一気に昇進かな?
「だが、敵の前線基地を発見できなかった事前の警戒態勢の不備、および敵侵攻直前の熱反応に適切な対応を怠ったことは貴職の責であることは間違いがないな?」
やっぱりそう来るよね? 世の中そんなに甘くないよね?
「はい。その通りです。処分は如何様にも。」
ああ、もう神妙にするしかない。
「まあよい。結果として貴職は自身の失敗を成功を持って贖った。そのことに関する罰も賞も不問とする。」
さすが司令官様太っ腹!おもわず揉み手したくなっちゃいますな。
「と、ここまでは軍の公式発表上の建前だ。ここからが本題になる。」
司令官の顔から表情が抜ける。
「貴職があの地球人と「けいとら」とやらを異次元に転移させる際、何か違和感を感じなかったか?」
確かにそれはわたしも感じていた。わたしが「けいとら」に纏わせた思念の糸。そこに微細ではあるが闇の勢力の力の粒のようなものが混じってきた。
わたしの次元波への干渉に対する防衛的な解析プログラムだと思っていたが、それとは性質が違う感覚があった。
解析プログラムであるならば、その力の残渣は演算を無数に繰り返すため動的なイメージを残すはずなのだが、わたしの糸についてきた粒のようなものにはそれが見られなかった。
「はい。なんというか、敵勢力の微細な力の残渣がまとわりついていました。その残渣も、単に力を行使した後のエネルギーの残りというには性質が違っていたように思われます。」
「うむ。その通りだ。」
司令官はおもむろに立ち上がって両手を腰の後ろに回し、背後にある大きな窓から宇宙の星々を眺める。
「まだ推測に過ぎない話なのだが……」
司令官は一度言葉を切ってから私の方に向き直る。
「敵は日本の東京地下への時空移動ポータルを発生させ、それが防御された。するとすぐに同じ日本の東北地方に、いかにも防御されたポータルがそこに飛ばされたように発生した。ここまではいいな?」
わたしが小さく頷くのをみて司令官は話を続ける。
「で、飛ばされたポータルには軽トラに乗った地球人が不可避のタイミングで進入していた。その時点で我らの通信網は妨害され、私への報告も私からの指令も遮断されていた。その地球人を助けるためには、その状況を把握していて唯一その状況に対処できる能力をもった貴職が対応にあたらざるを得なかった。」
司令官の話は続く。
「で、貴職はその地球人を救うため緊急避難的に次元を捻じ曲げ、異次元の惑星へとポータルの出口をつなぎ、そこに転移していく地球人の無事と状況を確認するために意識の糸をつないだわけだ。」
……なるほど、確かにおかしい。
すべては状況に対処している中での偶然の出来事が連続しておこったものと思っていた。
しかし、これではまるで……
「貴職も察したか。そう、貴職が地球人につないだ糸に奴らの力の残渣が紛れ込んだ。しかもその残渣の性質には不可解な点がある。」
やっぱり。わたしにもわかった。
「つまり、敵の目的は最初から、異次元の惑星に侵入する事だったと考えれば話のつじつまがぴったりと合致するのだ。」
なんとも壮大な作戦だ。だが、さらに心に引っかかるものがある。
この作戦が成功する大前提を考えると、
1、わたしが班長を務める観測班が小惑星帯で建築されている敵の前線基地を発見できなかった事。
2、敵の作戦直前にあった炎熱反応をわたしがデブリ衝突と誤認し精査しない事。
3、司令官との通信が阻害され、他の部隊も対処できる位置になく、わたしが独断で事の処理にあたること。
4、わたしに次元間転移を行使できる能力があり、またその方法を選択して実行する事。
ざっと並べただけで、わたしに関する要素がこんなにあるのだ。
そこから推測される事は……わたしでもわかる。
わたしの顔から血の気が引いていくのを感じる。肉体は持ってないし血液も流れていないのだが感覚的なものだ。
「この状況を勘案した結果、上層部の中には、貴職が敵の工作員ではないかという意見を言う者も多い」
やっぱそうなりますよねー。無理もない。私が上層部の人だったとしてもそう疑ってしまう。
でも、でも、わたしは決して敵のスパイなどではない。わたしだけは知っている。わたしは無実だ。
そんなわたしの逡巡を見越してか、司令官はさらに続ける。
「まあ、私は貴職を疑ってなどいないがな。」
え、どうして?
「敵のスパイが『女神様』だの『光の勢力の筆頭』だの口走るわけはないし、『クウちゃん』などと呼ばれて喜ぶはずもないからな?」
ぐはぐはぐはぐはっ!!!!!
予測と別方向からの深刻なダメージを食らってしまった。
「で、貴職がスパイでないのは私は確信できる。だが、貴職に対して全く心配がないわけではない。」
司令官はそう言うと、脇のモニターのスイッチを入れた。そのモニターには、わたしが夢中になっていた地球の「あにめ」の画面が大写しにされた。
「貴職は気づいていないだろうが、貴職は暗示にかけられていた。この「あにめ」を分析した結果、隠された信号によって貴職の職務への集中力を奪い、特定の事象、つまりは小惑星帯での基地建設や熱反応に正常な反応を示すことを阻害されていたのだろう。」
しかも、その暗示はわたしだけに通じる様に細工されていたらしい。
なぜわたしだけが暗示の対象だったと判明したのか詳しく聞くと、高次元の存在、その中のエリートたちが集まるこの銀河連合艦隊の中枢部において、「あにめ」という創作物にうつつを抜かすような存在はわたし以外にいないからだと言われた。
ちょっと待て。敵と味方揃ってわたしをディスるのはやめろ畜生。
ということは、わたしは敵から個別に狙われていたということになる。
司令官はそんなわたしを置き去りにして話を進めていく。
闇の勢力が異世界の惑星『ジャステラ』に『闇の因子』も潜り込ませた目的は、おそらく奴らは最後の支配地である『地球』が陥落したのちの新たな拠点を探しに行ったと思われること。
そこで奴らは地球と同様に、その星の住民たちを支配してコントロールし、悪しき感情を生み出して餌とし、力を盛り返して反撃に出てくる目論見があるのではないかということ。
また、異世界に誘い込まれたとしか思えない地球人の存在、おそらくその者はスターシード(光の生まれ変わり)の一人ではないか。今のところは不明だが、おそらく奴らの目論見の中にその者も何らかの形でかかわってくるのだろうということ。
そして、今回の一連の事態を構成する一部分となるように、わたし個人が闇の勢力から個別にターゲットとして狙われ利用されたこと。
この3点を踏まえてわたしに新たな任務が言い渡された。
「かの地、異世界の惑星『ジャステラ』に赴き、敵の目的の調査及び情報を集めるとともにそちらの世界に渡った地球人の保護をせよ! なお、この作戦は機密性の高いものであり、当該地球人からの協力を得て、異世界の住民に対しては己の存在及び任務の内容は秘匿する事!」
銀河連合艦隊組織内では、私は敵から受けたマインドコントロールのため隔離施設内で保護を受け、予備役扱いになるという通達がなされるとのことだ。
敵の情報収集、地球人の保護、および敵に狙われてミスを誘発させられた私への保護処分といったすべての目的を一つで解決する素晴らしい判断だと思う。
「謹んで拝命致します!」
勢いよく敬礼を捧げたわたしの頭の中で「やった!わたしも異世界ライフが満喫できるのね!」と歓喜していたことは永遠に内緒だ。
こうして、クウちゃんはハヤトのいる異世界に向かうのだった。
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