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【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~  作者: サイリウム


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94:ダチョウをみっけ!


「たべた!」

「ないない……。」

「かなち。」



そんなこんなでみんなのママが子供たち。脱走してしまったダチョウたちを探しに出発したころ。音楽家ちゃんを始めとした大脱走ダチョウ3人組は、気ままにお散歩を再開しておりました。


彼女たちの言葉から察せられるでしょうが、気のいい串焼き屋の店主様はお星さまに……。なったわけではなく、普通にダチョウちゃんとのお食事バトルに負けてしまい、気絶してしまった形になります。まぁ小腹の好いたダチョウちゃん3人のおなかをたった一人で治めるなど不可能ですからね、よく頑張った方かと思わます。え、彼はどうなったかって? そりゃもう永遠の闇に葬られた……



「ぷるぷるぷー!」



わけではなく、普通に気絶して放置されております。


意識を手放した瞬間にまだまだお腹が空いていたダチョウちゃんが大きな口を開けながら齧りつこうとしたのは確かですが、幸いなことに今日はとってもクレバーな音楽家ちゃんが再度ブロック。何とか住民をもぐもぐごっくんするのを回避し、現在は新たな興味深いモノを探しにお散歩を再開した形、といったところですね。


まぁ例の彼。対ダチョウのスパイ任務の任を一旦解かれ、休養中のご飯ことアランさんであれば欠片も残さず食べられてしまっていたでしょうが……。



「うにゅ?」

「どちた?」

「まま、こえした。」

「まま?」

「どこだろ。」



そんな時、彼女たちが感じ取るのはママの魔力。


未だダチョウちゃんたちは『魔力』という概念を理解しきっていないので声という表現にはなりましたが、一人のダチョウが声をあげることで、残りのみんなもそれを知覚します。彼女達を優しく包み込む優しさに溢れながらも、確実に外敵を葬り去る攻撃性を孕んだ極大の気配。確かにママのものです。自然と彼女たちは、一斉に母親の姿を探し始めました。


けれどきょろきょろと周囲を見渡してみても、大好きなママの姿は見当たりません。



「どこ?」

「いない!」

「ままー?」



これまでの彼女、レイスママであれば声をあげれば飛んできてくれましたし、周囲を見渡せばママだけでなく仲間の姿が見えました。けれど彼女たちは脱走ダチョウで、今いるのは獣王国首都の町の中。障害物の少ない高原の様に見通しが良くないここで皆の姿を視覚するのは困難。どれだけ探しても、初めて見る物体と、見たことのない生命体しか発見できません。


そんな状況に、ちょっとだけ不安になってしまう音楽家ちゃんたち。確かに忘れっぽいのは確かですが、レイスの群れにいる子は全て、ママという大きな存在が心の拠り所になっています。そんな大きな存在がいつの間にかいなくなっているわけですから……、そりゃ不安になるのも仕方ないところ。


同じ背丈の子供、人間の幼子当たりであれば、そんな心細さが怖くなって大声で泣き始めてしまいそうなもの。事実その場にいたダチョウちゃんの一人も、ちょっとだけ目元がウルウルして来ちゃいましたが……。



「まま……」

「うにゅ! さがそ!」

「さがす? さがす!」



頑張ってすぐに気を切り替えて、声をあげます。


彼女たちは、ダチョウ獣人です。とってもヤバい高原という世界で生きて来た彼女たちは、悲しいから泣きわめくのような『確実に敵に見つかる』ような行為は決してしません。そして何よりも、昔よりも大分賢くなったのです。ママが近くにいないのならば『自分たちから迎えに行ってあげよう!』、そう考えるのは難しいことではありませんでした。


いやあの、もうちょっとしたらママが空に上がって見つけてくれるのでそのままじっとしておいた方がいいと思うのですが……。



「や! さがす! ……あっち!」

「あっちー!」

「いくー!」



ちょっとだけ湿ったお目目を羽で拭い、ママがいそうな方向に走り出すダチョウちゃんたち。


どんどんとママや仲間がいる方向。王都にあるお城から遠ざかっている気がしますが……。まぁ彼女たちには方向感覚も都市への知識もありません。なんとなくこっちだろうという思惑で、一斉に走り出します。


そして走り出していくうちに、発揮されるダチョウの記憶力。かろうじて『ママを探す』という目的だけは頭に残っていましたが、何故探しているのか、何故ママと逸れているのか、それ以前になぜ自分たちがここにいるのかが完全に消え去るダチョウちゃんたち。


いつの間にか、『ママ―?』と叫ぶだけの集団になっちゃいました。



「ままー?」

「まま!」

「ままどこ?」


「……あら? なぜお姉様の子たちがここに?」



そんな大声ママ探しダチョウがいれば、人が寄って来るのが道理。


音楽家ちゃんたちの視界に入って来たのは、敵じゃないけどなんか嫌いな奴こと、自称レイスの妹である『エウラリア』です。不死性を持つのをいいことに、レイスに殺されることに性的興奮を覚えるただの変態Mですね。しかも最初に消し飛ばされた際の肉体再構成時にレイスの魔力が入り込んじゃったのか、ママの前世の記憶こと現代地球の記憶を手に入れ自分に都合のいい様に脳内変換しちまったやべぇ奴でもあります。


性癖以外は比較的真面な方なのですが……、性癖で全部駄目になってる奴ですね、はい。



「げろげろ!」

「きらい!」

「あっちいけっ! ……ままどこ?」


「ッ///、……ふぅ。お姉様はお城にいらっしゃると思いますよ。子を自身よりも大事になされる方です、それはもう心配なさっているはず。ほら早く私と帰りましょう?」


「「「やだ!!!」」」



姉の子供から放たれた悪口を若干楽しみながらも、大人としてすべき提案をするドMさん。


けれどまぁダチョウちゃんたちからすれば、コイツは敵じゃないだけの嫌いな存在です。初対面でレイスと殺し合ったと思ったら、次の瞬間にはママの妹に成りあがり? なんか群れに合流した変な奴。ママもその性癖に対して苦言を呈しまくっていることもあり、好感度は地の底です。


そりゃ一斉に否定の言葉を口にしますよね……。


ですがそのやり取り、正確にはダチョウちゃんたちが立ち止まったことが良かったのでしょう。彼女たちの視界に一瞬影が映り、大きな魔力の奔流と翼の羽ばたく音が、鼓膜を震わせます。



「あらお姉様。」



そんな変態の声に、眼を大きく輝かせる子供たち。


高原からずっと一緒で、ずっと自分たちの前を走り、愛を注いでくれた存在。それがダチョウちゃんたちから見たレイスです。未だ上手く言語化はできませんが、大好きなママが近くにやってきてくれたという事実を間違えるほど、彼女たちはポンではありません。


何のために『探していた』のかはもう覚えていませんが、迷子になっていたママがあっちから来てくれたのです。そりゃぁもう今世紀一番のニコニコ顔をしながら振り返るわけですが……。



何故かそこには、とんでもなく怒った顔をしながら音楽家ちゃんたちの前に降り立つ、ママの姿がありました。



思わず『なんでだろ?』と思っちゃった彼女たちに突き刺さるのは、レイスの怒号。



「勝手にお外出るなおバカッ!!!」



そりゃまぁそうですよね……。






◇◆◇◆◇






「「「びぃぃぃぃ~~~~!!!!!」」」


「あぁもうこっちが泣きたかったんだからね、本当。心配させないでよ……。とりあえずエウラリア、子供たち止めてくれてありがとう。」


「いえいえ。お気になさらずお。」



微笑みを浮かべながらではあるが、眼が完全に不満というか『お礼するぐらいならこの場で片腕ぐらい踏みつぶしてくださいぃ!』という意思をこっちに送ってくるMを越えたなんかヤバい変態を無視しながら、未だ泣きわめく子供たちの頭を撫でる。


ほらほら泣かないの。たぶんだけどなんで怒られてるのかあんまり理解してないでしょう? かみ砕いて教えてあげるから落ち着こうね? ほらもう怒ってないからね~?



「びぃぃぃ!!!」

「ひっぅぐ! ひっぐ!」


「あ~、もうちょっと時間かかるやつか。はいはい、じゃあぎゅーっとしてあげるから全員おいで?」



そういうと、すぐに飛び込んでくる子供たち。


音楽家ちゃんがいるから多分、外から楽しい音が聞こえてきて見に行っちゃったって感じなんだろうけど……。途中で近くに私がいないことに気が付いて、寂しくなっちゃったのかな? 気持ちは解るけど君たちが脱走したからこうなったんだよ? まぁまだ精神は幼い子供だろうから解んないだろうけどさ。


はいはい、もっとよしよししてやろ。な?



(……ふぃ、にしてもほんと無事でよかった。)



確かに外に興味を持ってくれるのは私としてもありがたい限りなんだけど、勝手に出て行かれるのはなんかもう心配が勝るというか、生きた心地がしないというか。出来る限り目の届く所にいてほしいってのはワガママなのかねぇ?


そんなことを考えていると、エウラリアが何故か懐かしそうに口を開く。



「あ、そう言えば『以前の世界』のお母様が『お姉様がいつの間にか玄関のドアから外に出ようとしていたけれど、ドアに大きな鈴をつけていたから何とか察知できた』という事件がありましたよね。やはり脱走者の血筋……!」


「正直そこまで知られてるのは恐怖しかないんだけど……。あと少なくともこの子たちは私の血縁じゃないからね? 年齢的に。」



そも私のこの世界における両親が群れにいるかどうかすら解ってないからね? とりあえずこの子たちは私よりも若い子だから確実に親じゃないし、私はまだ卵産んだことないから確実に違うって言い切れるけど。


というかほんとにお前の口から私の秘めておきたい前世の記憶が飛び出てくるの心臓に悪いんだけど。なんで異世界に来てまで『自分の昔話だけど幼過ぎて記憶にないからなんか気まずい思いしか出来ない』ってのをしなきゃならないんだッ!



「大丈夫ですお姉様! 私も良く故意に大けがして怒られましたから! お母様のお尻叩き、痛かったですよねぇ。……今じゃコンプラ違反喰らいそうですけど。」


「だからなんでそこまで把握してんのよ。……まぁ時代の変化ってのはあるからね、うん。」



そう返しながら、それが出てくるってことは私が持つ記憶のかなり深い所まで知られてるって言う事実に心底背筋が冷たくなる。いやまぁ肉体の再構築時に私の魔力が入り込んだせいで記憶が混じったのは理解してんのよ。そのおかげで昔の懐かしい話が出来るからちょっと助かってるところもあるのは確かだけど……。でもやっぱり『私の母親から聞いた』みたいに色々と改竄されてるのは納得いかない! 私にお前みたいなドMの妹はいねぇ!!!



「くっ! これが『認知してくれない』という奴! でもこれはこれで……♡! でもやっぱり認知して♡」


「ほんと無敵か? あとヤダ。」



まぁね? こいつの言わんとすることは理解できるのよ。


小さい子が勝手に外に出ないように出入口に鳴り物を設置したり、そもそもこの子たちに鈴とかを付けておけばいいのでは? という提案だろう。


けれどまぁ今回はそれとちょっと違うというか、鈴程度じゃどうにもならないというか……。


この子たちの脱走は、私達を囲っていた城壁の壁を物理で崩壊させたことにより生じたものだ。つまりドアの代わりに城壁に鈴をつけておいたとしても特に意味はないし、そもこの子たちに鈴をつけておけば多分騒音で周囲からの苦情を喰らうことになるだろう。あと多分私が延々と鳴り響く鈴の音でストレス過多になってぶっ倒れる。


結構好き勝手動き回る子が多いし、なんか体についてるのが嫌いな子もいるからねぇ。だからその案は一旦保留って感じで。



(……はぁ、ようやく落ち着いてきた。ほんと見つかってよかった。)



高原にいたころは、それこそ迷子が出たとしても探しに行く余裕なんてなかった。確かに最後の方、アメリアさんたちと出会った頃だったらある程度余裕はあったし、群れの数を維持するために探しに行くことも出来ただろうけど、初期の方はね……。


あの地は化け物ばっかりだから、逃げる時はもう周りを気にせずとにかく逃げる以外の選択肢はない。そして逃げ切れた後にもしさっきよりも人数が少なくなっていたとしても、引き返すことは死を意味する。何せ戻ってもさっきまで追いかけていた相手がいるわけだからね。助けられないかもしれない仲間より、今生きる仲間を守る選択を強いられていた。


けどここは高原じゃなくて、危険もない。しかも私のことを王として迎え入れた獣王国だ。安全度は群を抜いて高いだろう。そんなとこで行方不明者出しちゃうとかもう、ね? もうママどころか群れの長を名乗る資格なんて無くなっちゃう。



「っと。あんまり他の子待たせるのもダメだし、そろそろ帰ろう……。ちょっとYOU? 君なんでお口にソースの跡ついてるの?」


「そーす?」


「お昼の後、みんなお口吹いてあげたから……。脱走した後になんか食べたな!? 支払いどうした!?」



両肩に翼を置きながら軽く揺さぶりながらそう言うが、既に忘却の彼方なのだろう。問いかけても帰って来るのはハテナのみ。血じゃなくてソースってことはどっかの飲食店からもらっちゃたんだろうけど、マジでどこからだ……? 何かしらの形で代金支払わないといけないのに、この子たちが忘れてたらそれができない! 食いしん坊の子達みたいに胃袋ブラックホールな子ではないけど、音楽家ちゃんたちも食べる時は食べる! 確実に在庫を食い尽くしちゃってるだろう、迷惑料も含めてお支払いはしっかりしないといけない。


かといって結構広めなこの首都を探すのは骨が折れるし、あっちも『私が獣王』ってことで変に遠慮して名乗りをあげない可能性もある! いくらお飾りとはいえ国の王様が、子供に無銭飲食させるとかダサすぎるでしょ!?



「どうしよ。もっかい空飛んで探せば見つかるか……?」


「あ、でしたらお姉様。私が探しておきましょうか?」


「お前が?」



えぇ、と言いながら少し後ろに視線を送る彼女。そこにあったのは、質素な作りだが結構大きめの教会らしき建物。あんまりこっちの宗教については詳しくないが、十字架っぽいシンボルと中から讃美歌らしき歌が聞こえてくるあたり、この認識で間違いはなさそうだ。


それまで気が付かなかったが、さっきまでコイツはここにいて、うちの子たちの声を聴いたことで気になって出て来た様子。……教会の人手を借りて探してくれるってことでいいの?



「その通りですお姉様。自己破門した身なれど、伝手はありますし元役職持ちと言うことでご配慮も頂けます。そも人類に滅私奉公するような方々が多いですから、喜んで手伝って頂けるかと。あぁもちろん“お気持ち”を求められるでしょうが、先ほど私はお姉様の名代として済ませましたので大丈夫かと。」


「そういやお前聖職者だったな……。」


「元です、元。」



そうだったね、うん。


まぁ聖職者は聖職者としての付き合いあるんだろうし、手伝ってもらえるなら手を貸してもらうか……。とりあえずなんで勝手に私の名代名乗ってお金落してきたのかは後で聞くとして、立て替えるから“お気持ち”の明細を落ち着いたら頂戴ね。お前のことだから『物理的苦痛で支払って♡』とか言いそうだけど、今子守りの真っ最中だからそういうのなしね?



「流石お姉様! 私のことを全て理解してくださっている♡!」


「だから姉じゃないんだけどなぁ……。まぁいいや。とりあえず私は帰るね? 他の子もいるからさ。」


「えぇえぇ理解していますとも、“ツンデレ”という奴ですね!」


「ほんと違うからな?」



若干ふざけ始めたエウラリアにそう返しながら、体内の魔力を叩き起こし風を纏い始める。さ、みんなちゃんと捕まったかな? ほんのちょっとだけだけどお空の旅と行きましょうか。みんなの所に帰るよー? はい、お返事!



「「「はーい!」」」






【お宣伝】

カドカワBOOKS様からダチョウ獣人2出版決定。4/10発売。

(https://www.kadokawa.co.jp/product/322412000240/)


コミカライズ化決定。鞠助先生、どうかよろしくお願いいたします。

(https://x.com/marisuke388)鞠助先生Xアカウント

(https://x.com/kadokawabooks/status/1906634069607411805)Xによる告知



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