85:ダチョウとはろはろ獣王国
本日は二話投稿になります。こちらは二話目です。
また大事なお知らせがございますので、お時間ありましたら後書きを確認して頂ければ幸いです。
「ふぃ、獣王国に到着、かな?」
そう言いながら周りを見渡すついでに、子供たちを確認する。一応何回か獣王国には来たことがあるはずだし、転移を使ったのも今回が初めてじゃないんだけど、この子たちの反応はいつも新鮮だ。景色が急に変わったのに驚いて口を大きく開けながら喜んでる子がいる、可愛いね。
……よし、ちゃんと全員いる。
ナガン王国の持つ通信技術を使い、獣王国王都近くに転移魔法陣を設置してもらった私たちは、それを利用してこちらまで跳んできていた。ナガン王国の国境線から、獣王国まで。普通に走ったら数か月かかるところを魔法陣なら一瞬だ。まぁその分必要魔力量は上がるし、ウチみたいな大所帯。300を超える数となると途轍もない量を要求される。
体内に魔王十体ぐらい飼ってるって師匠に言われた私ぐらいじゃないと乱用できない技術だ。もっと気軽に使えるようになれば流通とか色々崩壊するレベルで変わるんだろうけど……。今のところは私達ダチョウ専用って感じだね。
(かなり複雑な魔力操作が必要だから、今の私じゃ魔法陣の補助を受けないと使用できない。だからあらかじめ設置しておく必要があるんだけど……。それをナガンの通信技術が補ってくれる。)
ある程度こっちに技術を提供してくれているみたいだが、国家間を越えた通信は未だ彼らの独壇場。敵なら面倒極まりないけど、味方ならかなり有能。ちょっとお電話して『そこに魔法陣書いてくれない?』と言えばすぐに用意してくれる。そして地面に書くだけだから証拠隠滅も簡単で、敵に利用される可能性も低い。やろうと思えばどの戦場にも跳んでいけるってわけだ。
っと、話が脱線しすぎたね。さて、アメリア師匠とエウラリアは……。
「貴女、大丈夫?」
「お、おろろろろ。」
「きちゃない!」「ばっちい!」「にげろ!」
地面に両腕両膝を突いて虹を地面に描くエウラリアと、心配そうにそれを見て背中をさすってあげてる私の師匠。
……え、エウラリア戻してるじゃん。え、どした?
「お、お姉様。て、転移で酔いろろろろ。で、でもこの気持ち悪さも。こんな醜態を見られているのも。ある意味……、ッ♡♡♡」
「無敵か? ……とりあえずこっち向いて吐かないで? 色々と飛び散ってるから。」
ほれ、魔法で水……。操作ミスったらこの辺り全部水没するから止めておくか。うん。師匠、悪いけどコイツの為に水とか回復とかしてやってもらってもいい? 変態で自称だけど、一応妹らしいから。……大丈夫? ありがとう、助かるよ。形はアレだけど、慕ってくれてるのは確かだからある程度はね。
「お、お姉様の優しさが染み渡る……! そ、そう言えば小学校の遠足のバスで酔った時もお姉様が優しくしてくださって……!」
「はいはい。もう勝手に幻覚作ってもいいから。アメリアさんにお礼言いなさいクソ妹」
「ッ♡♡♡」
あぁ、そうだった。コイツ暴言でも興奮するんだった。
いやほんと、どこから私の記憶入手してるかね? いや思い当たるのはあるし、私がこいつに大量の魔力を叩き込んだあの時ぐらいしかないからそれが原因なんだろうけどさ……。なんで私の小学校の頃の記憶を手に入れてしかも自分にとって都合のいい様に改竄してるかね。
「にしても、転移酔いか……。記憶的にもなんか乗り物酔いもダメそうだし、どうするかね? エウ、お前酔い止めとか持ってんの?」
「お、お姉様。転移自体かなり珍しいと言いますか、使い手が限られている技術ですし、乗り物酔い自体も我慢しかないです。元の世界みたいに発展しているわけではありませんので……。」
「へー。」
息を整えながらそう教えてくれるエウラリアに相槌を打つ。
……というかマイチルドレン? お前ら仲間に対してだったらすっごく優しいのに、どした? 自称だけどお前らのおばさんが気持ち悪いしてるぞ? 大丈夫、とか言ってあげないの? 私としては能力的に仲良くして欲しいんだけど……。
「えー。」「うにゅ。」「やだ!」「なかま???」
「……デレは?」
「やだ! ……うにゅ。でも、ママ、なかよしー、にしたら。うれしい?」
そうだね、そっちの方が嬉しいけど、押し付けちゃうのは嫌かなぁ……。うん、無理はさせたくないし、時間経過に任せるようにするかな。エウも頭はアレだけど、彼女なりに歩み寄りをしてくれるみたいだし、ゆっくりやっていくしかないかもね。
「さて、エウももう大丈夫そうだし、そろそろ出発しようか。」
混乱を避けるために、魔法陣の設置場所は獣王国の王都から少し離してもらっている。私たちの脚ならすぐなんだけど、人の脚じゃちょっと遠い、って感じ。私たちの食事事情的に大量のご飯が必要だから、設置するキャンプは出来るだけ町から近い方がいい。けれど町の中となると、群れの子たちが迷子になる可能性が出てくる。
かなり賢くなってある程度言葉が話せたり自己主張が強くなってきた子ばかりだけど、やっぱりおバカなのには変わりない。みんなで移動中に他の物に気を取られて逸れちゃうとか、まだ全然ある。私たちの本拠地とも呼べるプラークならまだしも、初めて来たばかりの獣王国でその危険性をあえて冒す必要はない。
確かに観光はしてみたいけど……、未来の楽しみに取っておきましょうかね。
「じゃ、みんな移動するから準備ね。デレはアメリアさん乗せてあげて。んでエウは……。誰か乗せてくれる子いる?」
「「「……。」」
うわ、回答が返ってこなかったの生まれて初めてなんだけど。みんな一瞬エウラリアの方見てすっごい嫌な顔して顔背けてるし……。あ、じゃあ質問変えるね? ママのこと大好きな人ー! 『はーい!!!』うん、みんないいお返事。んじゃ賢くて可愛くてカッコいい子! 『はーい!!!』うん、だよね。んじゃママの妹を背負って運んでくれる人!
「「「……。」」
「Oh。」
そ、そんなに嫌なの? え、ちょいちょい。なんで嫌なのかママに教えてくれないマイチャイルド。ふむふむ、何々……? 『バッチいからや!』『くちゃい!』『うんち?』あー、まぁさっき戻しちゃったばっかりだからね。服にもちょっとついてるし……。あとうんちって言った子。後でお説教ね。人をうんちって言っちゃいけません。
しゃーない。じゃあ私が運ぶか。エウ、お米様抱っこでいい?
「……んふっ♡ こうやって純粋な目で拒否されるのもッ♡♡♡ ……あ、はいお姉様! 大丈夫です!」
……ごめん、やっぱり運びたくないから勝手に歩いて来てくれる?
◇◆◇◆◇
とまぁそんな感じで、獣王国の王都まで移動。流石に可哀想だったので酔いやすいらしいエウラリアを優しく抱きかかえてやり、振動が出ないように気を付けながら走ったのだが……。待っていたのが、これだった。
「獣王様が来たぞー!」
「おい! 応援呼んで来い! このままじゃ人で大通りが氾濫するぞ!」
「前! 俺一番前! 前!」
「……なに、コレ。」
城門がこれでもか、ってぐらい、いやもう門の部分が民衆に破壊されてぶっ壊れるレベルで開け放たれてる。そしてその先に見えるのは、数えきれないレベルの獣人たち。全員が何十年ぶりに応援してたチームが優勝した時の野球ファンがおしとやかって思えるレベルで歓声を上げている。
……え、何? もしかして私がこっちに来ることもう伝わってた感じ? 私獣王国行き決めたのついさっきだよ!? 攻めて来た共和国ぶっ飛ばしてカニ鍋を敢行して『せや、獣王国行こう』って決めて実行したの今日だぞ? どんだけ情報伝達速いのさ。
(多分、ルチヤとか軍師とかが何かしてたんだろうけど……。現実逃避したくなるレベルで人いるなぁ。)
「いっぱい! いっぱい!」
「たくさんいるー! ……ごはん?」
「! ごは「おいそこ、人はご飯じゃないってママ教えたよな?」……ごめんちゃい。」
うん、謝れていい子。確かにちょっと『これ言葉喋らずに高原で歩いてたら餌候補にしてたな』みたいな種族の人も見えるけど……、絶対にもぐもぐしちゃダメだからね?
にしてもこれほどまでに歓声を受けてるってのは、あれだろうか。
獣王国は確か、強さこそ正義という考え方が根付いていたと記憶している。王様を決めるのも戦闘力だし、偉さの基準も基本それが優先される。力こそ全て、っていう国家だ。まぁそれじゃ国が回らないから王の庇護を受けその補佐をするって言う形で力は弱いけど頭のいい種族が国政に関わったりしてるらしい。
(……私は、先の獣王を殺した。つまり奴よりも強いと言うことが証明されている。そして獣王国が私が所属している国、ヒード王国の属国となる時、ルチヤは反乱などが起きないように私の名を大々的に使っていたはずだ。)
あの子はまだ幼い、ゆっくりとその精神を成熟させるときに戦争で両親を失い、国を動かせる人間へとなるため無理にその精神を成長させた子だ。その恨みの先である獣王を私が殺して、更に自分も私に殺されることで両親に会おうとしてた子だけど……。今は何とか丸く収まって、うちの子たちの末娘みたいな立ち位置だ。
デレとはよく私の取り合いをしているけど、デレが幾ら怒っても手を出してないってことはまぁ子供の可愛いじゃれ合いってことだ。無事、群れの一員として迎え入れられている。
まぁそんな立場の子だし、国を運営する立場でもある。特記戦力である私の存在は抑止力にもなるし、好きに使っても良いよ~って言ってたんだけど……。
「獣王様だー! こっち向いてー!」
「きゃー!!! 御子様かわいいー! 獣王様も素敵ー!!!」
「な、なんなのだあの魔力! お、俺は夢でも見ているのか! 新獣王は化け物か!?」
(あの子私のコト獣王として扱ったな……!!!)
私のことを見た全員が、私のことを獣王だ! って顔で見てくる。
んひー! やめてよ! 私そういうの無理って何度も言ってるじゃんかぁ! 私子供300人もいるのよ! 最近賢くなってきたとはいえ、まだまだ好奇心旺盛で悪さしちゃう子たちなのよ! 可愛いけどかなりギリギリなんだよ!? これ以上責任増やされたらもう色々無理ってずっと言ってたよねルチヤ!
「あ、アメリアさぁん。」
「なんで私に泣きつくのよ……。まぁ前々からヒード王国自体も貴女に渡そうとしてたし、それの延長かもね……。獣王国の気質的に、幼い子供が王になるっても反発しか起きないだろうし。統治のためには仕方なかったんじゃない?」
「で、でもさ……。」
「いいじゃない、お飾りの王よ?」
まぁ普通これは侮蔑の言葉なんだろうけど貴女にとってはいい言葉でしょう?、と続けるアメリアさん。そんな彼女を背中に乗せるデレは、言葉の意味がまだ解らなかったのか首をかしげている。
いやまぁ確かに実権を握る王様よりもお飾りの方が気が楽ですけど……。私王様ってタイプの人間じゃないでしょうに。確かに昔『我ダチョウの女王ぞ!』みたいなこと言ってたけど、アレは一種の冗談というか、その場のノリというか。私は国を背負えるような人間じゃないのよ……。
「お姉様? ……もしかして女王陛下ってこれから呼んだ方が良い奴ですか?」
「……燃やすよ?」
「ご褒美ですっ!!!」
そうだね、お前はそう言う奴だったね。
担ぐエウラリアの腹をきつく握りしめ、コイツが嬌声を上げるなか。半ば現実逃避をしながらもう一度眼の前を見る。おそらく獣王国の衛兵たちが動き始めたのだろう。大通りにいた人たちを大急ぎで整理し始め、私は町の中に入らないつもりだというのに、道を開け始めてくれている。
そして両脇には大量の獣人たちが。私を迎え入れるように大声を出し、誰かが言い始めた獣王コールが始まり出した。
……やっぱりコレ、中に入らないといけない奴ですよね。
「はぁ……、覚悟決めるか。」
どうせどこかのタイミングで子供たちを町の中に入れようとは思ってたんだ。賢くなってきて好奇心も上がって来たから色々と怖くて実施できてなかったけど、この子たちの可能性を私が潰す様な事はしたくない。『ダチョウ、初めてのお使い』じゃなくて、『ダチョウ、初めての凱旋パレード』みたいな感じだけど、街の中に入っても問題を起こさず、良い子に出来ていたっていうのは子供たちの良い経験になるはずだ。
それに、獣王として受け入れられている上に、これほどまで熱狂しているんだ。獣王国民の意志に反することをしてしまえば、後が怖い。ただでさえ周辺国への対応で一杯一杯なんだ、変に不満を買って反乱でもされればたまったもんじゃない。ルチヤに必要以上の負担を強いるのは、避けたいのだ。
「デレ、後ろからみんなを見てあげて。たぶんどっかで暴走しちゃう子出てくるから。アメリアさんはいつも悪いけどサポートお願い。」
「わかった! がんばる!」
「えぇ、いつも通りね。任せて。」
んで、エウラリアは……。とりあえず人前で喘ぐな。
「解っていますともお姉様! これでも聖職者です、公私は分けれます。」
「ならもうずっと喘がないでくれる? 子供に悪影響だから。」
「? お姉様は身内ですし、“私”の方ですよ?」
……やっぱお前「不死」じゃなくても無敵だな、ほんとに。よし、んじゃ切り替えて行こうか。
子供たち! 今から町の中でお散歩しまーす! 色んな人が声かけたり何かプレゼントして来るかもだけど、受け取っちゃダメです! 胸を張って元気に歩きましょう! パレードってやつですよー! 頑張れるー? お返事出来る人ー!
「「「はーい!」」」
よし! いい返事。んじゃ何事も挑戦! やってみようか!
この度、『TSダチョウ獣人』は『ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~』として、カドカワBOOKS様から書籍化されることになりました。
8/9発売です。どうかよろしくお願い致します。
(https://kakuyomu.jp/official/info/entry/datyojyujin)
感想、評価、ブックマークの方よろしくお願いいたします。




