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【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~  作者: サイリウム


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83/103

83:ダチョウと鍋



〇レイス

「カニ(蜘蛛)たのしみ」


〇デレ達

「かりだー!」


〇変態不死エウラリア

「お、お姉様に抱かれてる……!(お米様抱っこ)(脳内麻薬ぶしゃぶしゃ)」






「むぅ、やはり“不死”は裏切っておったか……!」



共和国軍陣地、ナガン王国へと速攻で突撃を仕掛けた彼らはその先頭に立っていた将が敵方面軍に吹き飛ばされたことにより、即座に“不死”ことエウラリアが離反していたことを理解していました。しかしそんなことで止まるほど共和国人は柔くありません。


確かに、エウラリアという変態によって施されていた“不死”という環境下でしか戦ったことのない若い兵や将は動揺しました。しかしながら彼らよりも年上の兵たち、オジキたちはもともとこういう戦場で戦っていたのです。不死だろうが不死でなかろうが、戦場で誉を得るために、とりあえず突撃する。そのオジキたちの背中を見た若い衆は心打たれ、彼らも突撃する。そんな若い衆の頑張りに背を押され、オジキたちもさらに突撃する。



もうちょっとなんかあったんじゃないですかね……、という共和国軍は果敢に攻め立てていました。



そして突撃していた彼らは考えます。“不死”が機能しなかったのは、彼女が裏切ったか、何らかの理由で行動不能になっているかのどちらかだと。上層部は『多分他国の特記戦力にあへあへしてるんだろうなぁ』と薄々気が付いていましたが、現場は違います。


『あの頭はイカレてるけど、やる事はしっかりするエウラリアが! 軍師大嫌い過ぎて一時期軍師の“ぐ”って聞いただけで発狂していた“不死”が寝返ったとか! あり得るわけないだろ! いいかげんにしろ!!!』ですね。


そんな彼女の能力が使えなくなっているとか……、絶対に軍師の仕業。(熱い風評被害)


勝手に『軍師憎し!』でまとまる共和国軍、それを見た上層部も『軍師はクソ!』と乗っかることで例年よりも苛烈に攻め立て、国境線の押し上げに成功していたのですが……。



「敵特記戦力到着! 西方面から次々と兵が消滅しております!」



そこにダチョウたちが到着。


『わー!』と言いながらヤクザ……、じゃなくて共和国軍をひき殺していくデレちゃんたちと、上空から『アレちょっと危なくね?』と思った存在をピンポイントで『魔力砲』していくレイス。見た目は愛くるしいが、戦果を見れば地獄からやってきたバケモノたち。


それでもいつもは元気に突貫するのが彼らだが、流石に上層部が『無理じゃん』と判断したので全軍後退を選択。多くの被害を出したが、一定の数を生き残らせることができました。


一応、一応ですよ?


彼らも一騎討ちとか大好きなので正々堂々と名乗りを上げて挑もうとする人もいたのですが……。レイスちゃんはともかく、デレちゃんに“一騎討ち”の概念なんかわかりません。


なんとなくママからの言葉で戦いや狩りにも“ルール”がある事を理解してはいますが、『みんなでわー!ってするのたのしい!』ってなっているデレちゃんには理解できない概念でした。


ま、そんなわけで次々と撃破されていく共和国軍。四十八天王だったり、九十九人衆だったり、三十六聖魔将などとよくわからない敵将を滅多打ちにし、たくさん戦果を挙げるダチョウちゃん。共和国軍からしたらたまったものではありません。



「ぬぅ! “不死”があればまだ何とかなったものを……!」

「やはりここは今からでも彼女の再引き抜きを行うべきでは?」

「不可能! 特記戦力並みの痛みを、我らが提供できるわけないだろうが!」



必要があれば勝算など関係なく、防御を捨て全て攻撃に転じた戦いができる彼らでしたが。さすがに無駄死には嫌ですし、将としての責任がある以上勝ち筋は常に探さねばなりません。半数ほど『突撃? 突撃していい?』みたいな顔している人がいますが、そういうのは無視してお話を進めていきます。



「やはりここはこちらも新戦力を投入すべきと。」

「中央にばらまくことで奴らの動きを抑え、その間に左右から敵本陣へと向かう。」

「その首片手にナガン王都まで向かってやろうぞ! 軍師の首を掲げ凱旋するのだ!」

「然り然り! 既に我らが出陣したことは早馬によって通知済み! 今はただ進むのみ!」



というわけで新兵器? である蜘蛛ちゃんたちの投入を決定した共和国軍。


実際この蜘蛛ちゃん、結構有能なんです。今回共和国軍が用意した蜘蛛の数が、約二万。この蜘蛛は大体大型犬から馬程度の大きさを保有しており、その強さも大体10~100程度。つまり最低でも10人の訓練された兵と同等、と判断された魔物です。


本来魔物は人類と敵対しているのですが……、この蜘蛛は別。マザーと呼ばれる母体が存在する限り延々と増え続ける彼らは、共和国軍によって使役されているため、命令一つでどこにでも飛んでいきます。さらにトラム共和国軍の色、“オレンジ”は攻撃せず、言うことを聞く、と調教されているため、フレンドリーファイアの可能性もなし。ある程度の知能もあるため、複雑な指示も聞き分けることができました。


まさに理想的な戦略兵器。



「うむ! ではそれでいこう! 全軍突撃!」



圧倒的力量差を見せつけたダチョウに、幾ら20000いるとはいえ蜘蛛ちゃんが敵うとは共和国の人たちも思ってはいません。ただこのままお家に引き返しても賠償金とか領土割譲とかろくでもない未来が見えています。相手に軍師がいる以上、テーブルの上では敗北は必至。ならもう殴って解らせるか、敵将捕まえて人質にするしかないじゃない、のマインドでした。


というわけで全軍を二つに分けて、突撃を敢行する共和国軍たち。




……まぁ皆さんご理解していただいているとは思いますが、カニパーティの始まりです。







 ◇◆◇◆◇






「ぽ、ぽっくぷっぷ、かにぷっぷっー! ぽ、ぽっくぷっぷ、かにぷっぷっー!」



急に誰かが声を上げたと思ったら、後ろから子供の声。うちの子の……、あぁ『ぽっぽっぷー!』の子ね。彼女が新作をご披露していらっしゃる。私がカニカニ言ってたから覚えちゃったかぁ~。うん、可愛らしいね。歌手デビューしたらお母さん有り金はたいてCD買い込むから教えてね?



「かにぷー!」

「かにー!」

「うにー!」

「いくらー!」


「……後半はマジでどこから覚えて来たんだお前ら?」



っと、幾ら警戒すべき相手がいないとしても戦場で気を抜きすぎるのは良くないね。……と言っても、すごい数だなぁこりゃ。


ダチョウの視力でギリギリ把握できるぐらい後方に設置された敵本陣。ナガンの人たちが遅滞戦闘しながらじりじりと下がっていたのは、ぱっと見で理解できたけど……。思ったより詰められてたようでかなり戦線がこちら側に押し込まれていたようだ。今は私たちが押し返したからいいけれど、まぁ相手もそのまま押し返されるほど柔くないみたい。


敵本陣の中央がぱっと開かれ、出てくるのはずらっと並べられた蜘蛛。黒と茶が入り混じったような独特の色に、気色悪い顔と八本の脚。そして何より思ったよりもデカい。あれ車ぐらいないか……? いやちっさいのもいるけど蜘蛛のサイズじゃないな、うん。



(前世の私なら悲鳴上げてそうな数だな……。)



数が多すぎてちゃんと数えたわけではないが、どう考えても万はくだらない。けど同時に……、そんな強そうなやつもいない。高原ではもっと気色悪いのいたし、これぐらいじゃねぇ。それに、私の感性はまだ前世に引っ張られてるから大丈夫なんだけど……。見てよウチの子の顔。



「おぉ……!」

「ごはん!」

「たくさん!」

「ぱーちぃ!」



お目眼キラキラさせてる。そうね、全部エモノにしか見えないよね。んじゃ、待たせちゃ悪いし突撃しましょっか。私が魔力に目覚めてからはそんなにしてなかった……、私先頭での狩り。久しぶりに決めちゃいましょうね!



「よーし。おっしゃ行くぞお前ら!」


「「「はーい!!!!!」」」



号令と共に、一気に走り始める私たち。久しぶりだからと言って、この身に沁みついた指揮能力は全くさび付いていない。というかこの子たちの知能レベルが高原の時に比べれば大幅に上がったおかげでより指揮がやりやすくなっている。記憶力はそのままみたいだけど、自分が何しているのか理解できればそれを続けるだけ。


そして何より目の前に大量のエモノがいる。


こいつらが止まることはもうないだろう。



(とりあえずカニ……、じゃなくて蜘蛛を楽しむのは確定だけど。戦場で私たちが求められてるのは、この蜘蛛の集団を後ろに通さないことだけ。)



となるとさすがにちと多いかもだな。全員で一列になって突撃しても、流石に万はちょっと多い。それにエウラリアが居る以上、最悪一匹残しておけば延々とカニが食べられるはずだ。


と言っても消し飛ばしちゃうと子供たちに怒られそうだし……。ちょっと新技行ってみようか。


魔力を全身に流し、細胞一つ一つに流し込みながら、脚部に集中させていく。軽く詠唱して属性とか付与した方が威力は出るんだろうけど……、今日はいらない。普段なら魔王十人衆から欠員を出すまで流すんだけど、片腕程度で勘弁してやろう。



(カニって甲羅とか固いでしょ? 私たちならそのまま食べても消化できるし、むしろそっちの方が気に入りそうなものだけど……。ママが割って食べやすくしてあげよう。)



軽く飛び上がり、回転。脚が天に向いた瞬間、溜め込んだ魔力を解放させる。



「斬糸」



解き放たれた魔力が線となり、糸となる。蜘蛛の軍勢よりも長く伸びたそれはゆっくりと、しかし確実に速度をもって、蜘蛛たちに振り落とされた。


瞬間、割れる。


高密度の魔力はいわば柔らかなレーザー、甲殻ごと焼ききったそれは、確実に“蜘蛛の群れ”を半分にする。



(……うわほんとに焼きガニのにおいだ。色ヤバいけど。)



ほんの少し緑がかっていて食欲が失せる見た目だが……、匂いは確実にカニ。アレは、食える。いや食いたい、食わせろと本能と前世の記憶が訴えている。



「いいにおい!」

「たべる!」

「かにー!」


「よーし、じゃあ食べるか!」



全員でばっと距離を詰め、未だ進み続ける敵軍を踏み潰しながら、ちょうど火が通ったであろう部位をすれ違いざまに食いちぎる。



(あ、やば。)



即座に口の中に広がるのは、濃厚なカニの香り。表面は少し毛が生えているので舌触りが悪いが、その肉はまごうことなき前世で食べたカニに等しい。昔の私ならカニの殻なんて固くて食えなかったが、ダチョウになった今は別だ。そもそも私たちはカルシウムとか摂取するために石ころとか食う種族だし。普通の奴らが消化できないものを胃の中で溶かすことができる。もちろん顎の力も強いしね。



(私たちにとっちゃそこまで固くない甲殻、というか柔らかくていいな。丸ごと食える。)



「うん普通にうまいね。とりあえず刺身と焼きは確定として……。鍋も行こうか。マイチルドレン? お味の方は……。」


「……ふしぎ。」

「これ、すきじゃない。」

「おいしー!」



あれ? 思ったより微妙だな。意見が完全に割れている、普通においしそうに食べてる子と、一回食べただけで満足しちゃった子、一口食べた後にぺっぺしちゃった子に分かれてるな。



「おいしい?」

「おいしい! もっと!」

「? じゃあやっつけよ。」



カニが気に入った子が生のまま踊り食いを始めて、気に入らなかった子が『そんなに好きなら持ってきてあげよ』という感じで持ってきてあげる。意味も解らずとりあえず蹴散らしてる子たちもいれば、あんまり好きじゃなかったことを忘れてもっかい口に運び、べーってしちゃってる子も。う~ん、ダチョウらしくて安心するね。



「あ、わかった。殻と外の毛ごと食べたせいで気に入らないんだろ。最近みんなグルメになったからねぇ。しゃあない。じゃあちょっと調理しますか。」



ちょっと私たちから離れてナガン側に流れようとしている蜘蛛もいる。それを処理するためにも、ちょっと動きましょうか。



「おらお前ら! ちょっと下がるぞ! てったーい!」


「「「はーい!」」」



言うこと聞かずに無言で食べ進めてた食いしん坊組の首根っこをつかみ、全体で少しだけ後退する。


肝心の蜘蛛ことカニだけど、食べた感じやっぱもう少し火を通した方がよさそうだった。あとカニと言えばカニ味噌だし、やっぱ刺身と焼きをやるなら鍋もしておきたい。せっかくの機会だ、子供たち全員においしいモノ食べてほしいじゃん? ちょっと大味な料理になっちゃうけど、許してね。


体内の魔力を回し、『片腕で済んだ……』と安堵している魔王と、その周辺にいた合計魔王五人分の魔力を抽出、即座に“魔法”として外部に放出させる。


この世界の魔法の原理は、魔力を糧に世界に影響を及ぼすこと。長々とした詠唱や魔法陣などで魔力消費や威力向上が図れるみたいだが……。魔力だけ大量に用意すれば、それで済む。



「『陥没(ケイブイン)』……、でいいのかな? あと追加で『重力(グラビティ)』。」



少し怪しかったが、イメージ通りに蜘蛛たちが集結していた地面が大きく陥没し巨大なクレーターが完成する。蜘蛛のような多足相手だとその大穴から抜け出されてもおかしくなかったが……、上から重力を加えることで“軽く潰す”。



「……うわ思ったより魔力消費ヤバいな。これでも魔力操作向上したはずなんだけど。」



結構蜘蛛が広範囲に広がっていたため、陥没させた地面を狭めながら蜘蛛を固めようとしたんだけど……。ほんの少し縮めただけで即座にもう二人魔王様が殉職なされた。かわいそうに……。あと何人? 三人だけ? 仕方ないなぁ、じゃあこれぐらいで次の工程に移ろうか。



「と言っても後は簡単なんだけどね。『水生成(クリエイトウォーター)』からの、『温度管理(ヒートコントロール)』……今度からもうちょっと捻った名前にしよ。」



クレーターが全て埋め尽くされるだけの水を生成し、火魔法の応用でその温度を高めていく。もうわかるよね? そ、カニ鍋です。大きいでしょ? 直径何キロあるか解らないくらいの大きさだけど……。お、大きいほどおいしいはずだから……。



「やり過ぎた気もしなくもないが……、まぁいいや。とりあえずこの蜘蛛いい感じだね。……食べるかい?」


「ザラザラするからや!」



興味深そうに巨大鍋を覗き込むうちの子に聞いてみたんだけど……、この子はダメなタイプの子だったか。というか蜘蛛があんまり好きじゃなかったことをちゃんと覚えてるなんて……、天才か? お母ちゃんお前たちがだんだん賢くなって行って嬉しいよ。さっきもみんなでワイワイ言いながら会話してたのすっごく微笑ましかったし。



「口当たり? そりゃ外の殻ごと食べるからだよ。食えなくもないけど、一緒には食べたくない感じだしねぇ。……ほら、中身だけ食べてみな。」



口で殻を割り、カニの様に中身だけ取り出して食べさせてみる。



「どう?」


「……おいしい!」


「なら良かった。殻割ってほしかったら言いなさいね。」







〇エウラリア

あれ? 蜘蛛全滅させてないですかお姉様? 


〇レイス

……あ。と、とりあえず仕事しときますね。(左右から突撃中の共和国軍に向かって回復した魔力で魔力砲ブッパ、敵軍壊滅。)(同時に殻を割ってもらうために一列に並び始めたダチョウの相手。)


〇食いしん坊ダチョウ

即鍋の中にダイブした。泳ぎながら食ってる。









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