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【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~  作者: サイリウム


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51:ダチョウのおまたせ



(う~む、思ったより上手くいったなぁ。)



そんなことを考えながら、デレの率いる群れから逸れてしまった子たちを合流させていく。


ほらお前ら、なんでそっち行こうとするんや、群れあっちやで? え、ごはん? ごはんはさっき食べた……。え、もしかして獣人さんのこと見て言ってる? あれ、あの人? あぁ牛の獣人さんなのか、確かに美味しそうな感じ……って、人はご飯じゃないって言ってるでしょうが! ほら戻った戻った!


というか牛とか豚とか鶏とか色々畜産してるのに、そっちの獣人とかもいるんだね……。いや確かに犬とか猫とかいるし、そっちの獣人もいるって聞いてたからなくもないんだろうけど……。目の前で自分のモチーフになってる動物とかモグモグされてたら色々と気まずくない? いやソレがもう常識になってて、疑問すら感じないのかもだけど。色々とカオスじゃない?



(まぁ私たちダチョウ獣人が言えたことではないかな。あはー!)



現在私たちは獣王国からの救援要請を受け、アンデッドの討伐を行っている。といってもすでにダチョウの仕事は終わっているんだけどね?


私たちダチョウが任されたのは戦場をかき乱すことと、相手の数を減らすこと。走り回って進行上にいるアンデッドたちを蹴散らして数を減らし、同時に相手の指揮とかを崩壊させる。そして私が適宜空に上がったり周りを見渡すことで戦場を把握し、危なそうなところへと救援を出すのが仕事。まぁ簡単に言うと、私たちが好きに暴れて、他の人たちが場所を整えるといった感じだろう。



(鉄床戦術みたいな奴だよね、鉄床である歩兵。ヒード・ナガン・獣王国の兵士さんたちが良い感じにアンデッドを押しとどめて、鎚役の私たちダチョウ勢が騎兵のように突撃し粉砕。)



予め私が指揮官、敵の準特記戦力のアンデッド将を破壊したことも上手く行った要因の一つだろう。指揮統制を失った軍隊はただの死体の集団。それを倒すぐらい誰にでも出来てしまう。まぁそんな感じで敵を粉砕した私たちは、すでに残党狩りのフェーズに移行している。残りは散らばってたり少数で固まっているだけだから、歩兵の皆さんで何とかできるレベル。お任せしちゃっても大丈夫だろう。



「というかむしろ敵がいな過ぎて、ウチの子たちが味方を攻撃しちゃうかもしれないし……」



突撃を行う時、ウチの子たちは視界に入る同族以外を基本的に"敵"とする。自分が戦うために走っていて、その途中にいる邪魔な存在を蹴り飛ばしたり踏みつぶしたりするわけだ。基本スルーすることは私が指示しない限りありえない、だってもしかしたら自分を攻撃してくるかもしれないし、食べたら美味しいかもしれないから。それがダチョウだ。


つまり、周りに沢山アンデッドがいたさっきまでなら安心して攻撃することが出来たんだけど、残党狩りのレベルになってしまうと同士討ちの可能性がどうしても出て来てしまう。別れての行動が出来ない以上、私たちは300で行動しなければならない。そんな私たちが数十の敵に対して攻撃を仕掛ければ倒せはするだろうけど、かなりの子たちが隙になってしまう。


そうなると、ね?



「なので後は任せて私たちは一足お先に撤収、ってわけだ。」


「ままー!」

「がんばった!」

「あわあわ!」


「はいはい、みんな頑張ったね。」



私たちが戦場から引き揚げた後、真っ先に私の元へと突っ込んできたのはデレだった。というか今も背中に張り付いている。彼女はもう思いっきり褒めてあげたから、後は他の子たちの番。ちゃんとみんなデレの言うこと聞けて偉かったねぇ、うんうん。よくやった。ちゃんと後で時間取って体洗いに行くから少し待ってね。



「相変わらず大変ね。」


「あ、アメリアさん。そっちこそお疲れ、これぐらい何ともないよ。むしろこの後の方が面倒。」



どろどろに汚れてしまった子たちをわちゃわちゃしていると、後ろからエルフのアメリアさんが話しかけてくれる。実際そんなに疲れてないのよ、私。というか初めて楽できたからすごい新鮮な感じ。今までずっと群れの先頭を走りながら子供たちを引っ張って来たからさ、後ろを走るなんて初めてで……。確かに何度もフォローしないといけなかったけど、いい体験をさせて貰ったよ。デレには感謝しないと。


あ、もちろんアメリアさんにも感謝してるよ? デレのサポートマジで助かった。



「別に構わないわ、デレの背中に乗るのも慣れてきたし。……それで、面倒って?」


「ん? あぁお風呂のこと。ほらアンデッドってあんまり綺麗じゃないでしょう? 全力で洗って上げないと拗ねちゃう。ほら見てよこの顔、しかめっ面でしょ?」


「むーっ!」



そう言いながら足に変なのが付いてることに気分を害しているダチョウの顔を見せる、ナデナデしてあげれば「ほわぁ」って表情が緩むんだけどそれを止めて自分にアンデッドの破片が付いて"くちゃい"ことを自覚すると、すぐ機嫌が悪くなっちゃう。羽と羽の間とか、足の爪とかに腐肉が入り込んじゃった子もいるから……。大変だよ、これは。



「私以外には洗われたくないだろうしねぇ、残業ですな。これは。」


「……石鹸の用意ぐらいは手伝うわ。」


「助かる。……、ん?」



この後の重労働、戦闘の何倍も大変なことを思い浮かべていると何か声が聞こえる。音の方へと視線を向けると戦場の方、どうやら勝鬨を挙げているみたいだ。殲滅も終わったみたいだね。



「あっちの方もお仕事終了、ってわけか。いいね! んじゃ誰かに声掛けだけして近くの川にでも……。アメリアさん?」


「…………まずいわね。」



流石に友軍が戦っている間に風呂に行くのは駄目だろうと控えていたが、戦闘が終わったのなら誰も止めないだろう。そう思いながら子供たちに集合を掛け、近場の川にでも移動しようかと思った矢先。アメリアさんに止められる。その顔色はうかがってみればなんだか深刻そうなお顔。え、何? なんかあった?



「負の力、死者の残留思念ね。それが動き始めている。」


「……え、なにそれ。」


「アンデッドが自然発生する時の反応によく似てるわ。けれど流石に早過ぎる。……誰かの手が入っているわね。」


「…………へぇ。」



私にはわからないんだけど、なんかそういうのがあるらしい。確かに言われてみれば……、死体が集まってる場所から黒い靄みたいのが薄っすらとだけど湧き上がっている? この事件の首謀者である"盗人"は全然見つからないし、もうどっかに潜んでいるのかと諦めていたけれど……。こんなのまで用意してたのか。



「あの黒い靄、普通は教会での修行を積まないと見えないのだけど……。貴方でも見えるのならば相当ね。」


「……消し飛ばした方がいい?」


「やめておいた方がいいわ。」



聖属性の魔法、それこそ教会の人たちの神聖魔法っていうの? それならば話が別みたいなんだけど、私が扱うような魔力砲だと逆に相手の餌になってしまうようだ。故に私は絶対に手出し厳禁。あそこに魔力砲でもぶち込めば、死者の怨霊と私の魔力が融合したとんでもないものが出来上がる可能性があるとのこと。



「かといって対処も……、難しいわね。発生源の数が多すぎるし、聖職者の数も足りない。今ここで私が対処を始めても削れるのは数百。三万すべての怨念を鎮めるのは無理ね。レイス、貴女まだ余裕あるわよね?」


「そりゃもちろん。」



私に魔力切れの概念はありませんから、多分。今も体内の魔王換算五人分の魔力さんたちが、とても丁寧なボックスダンスを踊れるぐらいに元気ですぜ?



「私をもう一度あそこまで連れて行ってくれる? 可能な限り『聖別』の魔法で怨念を消し飛ばすわ。けれどどうしてもアンデッド自体の発生は止められそうにない。」


「なるなる、んで生まれた瞬間に私が消し飛ばすって寸法ね。生成途中に魔力をぶち込むのは駄目だけど、きちんと形を持った後ならいくらでも攻撃してOK。ってわけか。いいね、ちょっと消化不良だったんだ。」



何せ私はアンデッド化した獣王とその死体を盗んだ"盗人"との戦いを覚悟してこの場に来てるんですから。この前の獣王戦での反省を生かして色々策を用意してきてたし、アメリアさんに教えてもらって魔力操作も……、ちょっとは向上してる。実戦でそれを再確認するにはいい機会だ。


準特記戦力であるアメリアさんがわざわざ私に頼むってことはそれ相応のアンデッドが生まれるのだろう。ま、私以外に対処できる人間はいないみたいだし、頑張らせてもらうとしますか。



「ッ! 靄が動き出した! レイス!」


「りょーかい! デレ! 話は聞いてたね、お留守番任してもいい!?」


「うん! だいじょーぶ!」



魔力を循環させながら外部へと放出させ、子供たちの意識をこちらに向けながら全員座る様に指示を出す。流石に動きながら300の指揮はデレにはまだ荷が重いようだけれど、じっとさせるぐらいならばできるはずだ。みんなも聞いてたね? ママちょっとお仕事してくるから、ちゃんといい子にお座りして待っとくこと。ほら、お返事は?



「「「はーい!」」」



うん、いい子!


……よし、じゃあ行きましょうか!











 ◇◆◇◆◇










アメリアさんを背に乗せながら、魔力砲を背後から放出し推力とする。ちょ~っと荒っぽいけど速度は出るからね、我慢してよアメリア。



「……集まって来てるわね。あそこ、一番大きな山になっている場所に降ろして頂戴。」


「はいよ!」



彼女が言う通り、死体たちから上がり続けていた黒い靄のような者が一つの物体になろうと動き始めている。徐々に速度が上がっているように見えるし、あまり時間は残されていないだろう。戦場に入った瞬間、魔力砲をoffにし、噴式に切り替えながら速度を弱め目的地へと向かう。こっから先は敵が顕現するまで魔力の使用は禁止だ。私のせいで化け物を生み出すのはご勘弁。もう私自身化け物みたいなものだし。


っと、あれマティルデか? なんか騎乗しながら兵士さん連れてこっちに来てる。


アメリアさんを所定の位置に降ろし、即座に噴式で空へ。おそらく聖水であろうものが入った瓶を馬の背に大量に乗せた彼女の方へと向かう。



「マティルデ!」


「レイス殿! こっちは軍師殿の指示を受けて聖水の散布に掛かる! これ、持って行け!」



そう言いながら木箱を一つ空に向かって放り投げる彼女。っと、結構重いな。足でつかめたけどコレ20kgぐらいあるぞ? よく投げれたねマティルデ。私かなり上空にいたんだけど……、力持ちさんだ。



「アンデッドの発生は阻止できないと踏んだ! 故に戦闘の邪魔にならないように外縁部のみ我らで行う! その木箱の中は濃度は薄いが聖水だ! 上からぶちまければ少しは抑えられるとのことだ!」


「了解! 無理しなくていいからヤバそうになったらすぐ引いてよね!」


「心得ている! 皆のもの! ありったけぶちまけよ!」



彼女はそういいながら配下の兵士さんたちへと指示を飛ばしていく。いつの間にかヒードの兵士さんだけじゃなく、ナガンや獣王国の兵士さんまで指揮下に置いているようで、みんな彼女に続いて死体に聖水瓶を投げ込んでいる。アレだね、なんか玉入れしてるみたい。おもしろ。



「っと、じゃあ私も仕事して。待ち構えるとしますか。」



黒い靄が集まり始めている中央部、その近くにあった死体の山に聖水が入った木箱を投下し、ぶちまける。すると少しキラキラした水があたりへと散布され、少しだけ黒い靄の勢いが薄くなったように思える。濃度が薄い、って言ってたけどコレ高濃度の奴なら即座に消し去ることが出来たんだろうか。……というか何も考えずに投下したけど、そもそも聖水って何? 解らぬ。


そんなことを考えながら、噴式を解除し地面に降り立つ。空中から遠目に見たが、デレはちゃんと群れの統制を頑張っているようだ。安心して狩りの準備を進めることが出来る。……と言っても魔力の使用が制限されている今、できることは正直ない。黒い靄が集まっている場所の前に立ち、相手の準備が終わるまで待つのみ。



「『聖別結界(コンセクレイション)』」



待ち時間何もしないのは悪いし、もう一度マティルデのところか、後方に戻って聖水の入った箱を貰ってこようかと考えた瞬間。背後から暖かな光を感じ、その方向へと目を向ける。その視線の先にはいつの間にか大きな光る結界を完成させたアメリアさんが、杖を天へと掲げていた。


彼女の眼前に存在していた死体の山から漏れ出る黒い靄が即座に掻き消え、中央へと向かって流れる一つを断ち切ってしまう。



「おぉ、すごい。……、ん? あれは……、ハンドサインか? 私あんま知らんぞ? えっと? 『そろそろ、時間、撤退、始める。』あぁ、なるほど。」



最初は片手で何らかの指示を出していた彼女だったが、私からの返答がなかったせいか全身を使って大きなジェスチャーで撤退することを教えてくれるアメリア。なんかいっつも静かに淡々と物事を進めるイメージがあるから、後方を指さして走るジェスチャーは少し笑ってしまうよね……。両翼を大きくあげ、丸を作ることで了承の意を示す。


それをちゃんと受け取ってくれたのだろう、マティルデにも同様の動きをしたあと、マティルデ率いる混合軍が撤退を始めたことを確認した彼女は足早に後ろに下がっていった。



「そろそろ、かな。」



それを見届けた直後、アメリアさんが言ったように足元を這うように動いていた靄たちの速度が加速度的に増加していく。私の眼前、一点に向かって進みゆくそれは、少しずつ形を作り上げていく。


およそ、三万。おそらく私が死体ごと消し飛ばしてしまった奴らの怨念も含まれているのだろう。聖水での緩和やアメリアさんの魔法によって幾分かは減っているだろうが、それでも二万は下らぬはず。そんな者たちの怨念が一点に集まり、形を形成していく。凝縮された怨念は一旦小さなビー玉のサイズまで圧縮され、全てを吸い込むような黒い球体に。


そして、即座に。巨大化する。



「……わっ。」




小さな球体から爆発的に体積を増やし、人型へと形を変化させていくソレ。


気が付けば20m近い腐肉の塊が、私の前に、いた。




「……あ、そこで止まるんだ。」




いやさ、巨大化するのはびっくりしたけどこれぐらいのサイズは高原にもいるし……、感じる強さもまぁ高原で見たことがあるレベル。魔力の覚醒前の私なら撤退を決めてたけど今の私ならこれぐらいなんとでもなるというか、群れでぶつかれば十分行けそうなレベルだし……。なんかごめんね? 普通こういうのって私がびっくりしなきゃいけないよね。もっかいやり直す?


そう聞いてみるが、反応はない。むしろ目の前にいる私に向かってその大きな拳を振り下ろそうとしている。あらら、怒っちゃった。



「じゃ、もう魔力の制限はしなくていいし……。頑張っちゃいますかね?」










〇そのころ後方では



「はい、こちら軍師です。……あぁ赤騎士さん。大丈夫でしたか? 少々連絡が遅かったので心配いたし……。え、脳を見られた!? 影武者殿も!? そ、それは大丈夫……。あ、大丈夫なのですね。教会の方に検査してもらったが、異常はなし、と。それは本当に良かった。……となるとまだ奴は王宮に? ……なるほど、了解しました。異常はないとのことでしたが、やはり心配です。必ず安静にしてくださいね。影武者殿にもそうお伝えください。」








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