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【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~  作者: サイリウム


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48/103

48:ダチョウがでない


本当に申し訳ない……!(タイトル)






「なるほど、ここが隠し通路ですねぇ。」



死霊術師の彼女はそう口ずさみながら、中を覗き込む。


なんでもない民家へと入り込み、何度か取り外されたのであろう跡が残る床板を剥がす。そうすると見えてくるのは地下へと続く石の扉。彼女に付き従う体格のよいアンデッドがそれをこじ開けると、奥の方からほんの少しだけ風が吹いてくる。この先の見えない真っ黒な穴がどこかへと繋がっていることを示す証拠だった。


ナガン王都だけではなく各地に拠点を持つ彼女は、定期的にアンデッドを用いてその都市の詳細な地図を作成している。そのためもちろんこの道がどこへと続いているのか、そしてどのような構造になっているのか、その全てを理解していた。この道の先にあるのは玉座、他にも繋がっている場所はあるが、目指すのは玉座の後ろに隠された秘密の出入り口だ。


彼女は自身の計画が予定通り進んでいることを楽しみながら、奥へと進む。



「……あぁ、そうだ。多分罠とかあるでしょうし、やっておきますかぁ。」



この隠し通路はその存在が露見した場合に備えてこの王都の下に、まるで網目のように設計されている。彼女の頭の中には地図が入っていたが、軍師ならば定期的に王宮までのルートを変更したり、特製の罠を仕掛けていてもおかしくはない。この王都に到着してからの敵の動き、対応を見る限り、彼女自身軍師に襲撃が予測されていたであろうことは理解していた。


つまり、軍師がこの隠し通路に罠を仕掛けていてもおかしくないということである。



死鼠(フレッシュマウス)? お仕事よぉ。」



彼女がそう言いながら腕を振ると、背後に連れられた集団の中から四人の大男がゆっくりと前に出てくる。背丈は高く、全身に脂肪がたまっているせいか非常に大型な人間のように見える。しかしながら注意深くその肌を見ると、いくつもの目が浮かんでいる。


この物体は、人間ではない。夥しい数のネズミが人の形を保っているだけ。そしてそのネズミも全て、既に死んでいる。


彼女がゆっくりと頷くと、人の形を保っていたネズミたちが溶けるように動き出していく。彼らの目的はただ一つ、その犠牲を以ってこの隠し通路の索敵だ。ネズミ一匹がおよそ50g、アンデッド化し改造が施されたことを加味しても非常に軽いバケモノ。人間態であった時の重さを200kgと仮定すると、四体合わせて約16000匹のネズミが地下通路に放たれた。



「いつもならもうちょっと用意するんだけどねぇ、さすがにキャパシティの問題もあるからぁ……。仕方ないよねぇ。さ! ネズミちゃんたちが頑張ってるし、私たちも進みましょ~。」



そう言いながら、死霊術師は進んでいく。


彼女は現状を楽しんでいるが、それは自身の計画通りに進んでいることに対しての喜びではなく、"軍師"が用意してくれたものを楽しんでいるという意味合いが強い。単純な頭脳勝負では軍師には勝てないことを理解している彼女は、そんな自分が彼の用意した策を食い破っていくことに喜びを感じていたのだ。


だからこそと言うべきか。死霊術師はこの先まだまだトラップが仕掛けられていることをネズミたちからの報告を受け取る前に確信していた。絶対に、何かあると。私に勝てる軍師ならば絶対に何かを用意している。彼女はそれに応対するために、前衛として聖属性を無効化する大盾を装備したデュラハン8体を先行させる。



(アンデッドが苦手なのは、火と聖。火は延焼しちゃう前に水でも掛ければ何とかなりますけどぉ、聖属性はそうはいきません~。この大盾かなり高かったですし、役に立って欲しいですよねぇ。)



そして同時に。また背後からの奇襲を警戒したのか、足止めに特化したアンデッドである"腐肉人形(フレッシュ・ドール)"。攻撃を受けた部位から絶え間なく腐肉が増殖するという能力を持つアンデッドを12体設置し、前へと進んでいく。何か異常があれば同士討ちをさせ、確実に道を塞いでしまおうという魂胆だった。



(……今のところぉ、とっ~ても順調。でもでも、こんなもんじゃないですよねぇ、軍師ィ?)



彼女は自身の死霊術師としての能力のみならず、一般的な魔法使いとしての力量、これまで集めたアンデッドたちの精強さ、そしてそのアンデッドたちを動かす頭脳に絶大な自信と信頼を置いている。けれど同時に、この世界は気を抜いた瞬間すぐに死んでしまう厳しい世界であり、自分より上の存在など両手で数え切れないほどいることも理解していた。



("化け物"の象徴ともいえる特記戦力、上に行けば行くほどもうただの化け物としか言いようがない者ぉ? それに喧嘩を売って、ここまで上手くいっちゃいますぅ?)



もしそれが事実、本当に上手くいっているだけならばこれ以上ない喜ばしいことである。これまで裏でこそこそやりながら、有名にならないようにと苦労を重ねてきた。そんな自分が表舞台に立つという大一番、そこで華々しい勝利を刻むことが出来るのならば、これほど良いことはない。彼女は半ば自分の実力を測るための試金石として、このナガン王国を選んでいる。


この侵攻が上手く行けばそれでよし、今度は更に強い奴に挑戦しよう。無理ならばさっさと逃げてまた潜伏して、力を蓄えよう。彼女はそう考えていた。故に、計画が順調に進むこと自体何も問題はないのだが……。



彼女の脳裏にはずっと"奴"の姿がちらついている。軍師でもダチョウでもない、もっと大きなものだ。



自分が頂点を目指すようになったきっかけ、それはこの南の大陸に陸路から侵略しようとした帝国をたった一人で押しとどめている女傑。『大陸最強』と名高い特記戦力であり、上位の実力を持つ化け物。その姿が彼女の脳裏には映っていた。この死霊術師の望みは、文字通り"最強"のアンデッドを作り上げること。そのためには最高の素体が必要になる。



(最強と名高いあの女の体で、アンデッドを作り上げる。それが目標。そのためには"圧倒的な数"と"圧倒的な個"。この二つを用意する必要があって、その用意のために今こんなことをしてるんですけどぉ~。)



いくら下位に位置する軍師と言えど、自分がそう簡単に倒せる相手ではない。冷静に考えてみればそうである。確かに今の自身は獣王の体で作られた特記戦力中位のアンデッドがいるため、力押しをすることが可能。けれど自身の成長と自分がどこまでやれるかという思いからわざわざ頭脳戦を仕掛けている。



(だからちょっと、こんな簡単に終わって欲しくない気持ちがある……。ッ! きたきたきたっ!)



そう思っていた彼女に、凶報。いや朗報が訪れる。


この通路に放っていた約16000匹のネズミ、その9割近くからのパスが掻き消える。そして、後方に配置してあった腐肉人形たちの反応も。彼女の経験から察するに、おそらく彼女たちがいる通路を完全に封鎖し、その密室から外部への魔力的効果を全て打ち消す魔道具が使用されていると考える。


貴人の私室や、それこそ軍師みたいに情報を精査する人間の部屋によくある魔道具。それを大掛かりにしたもの。そして、前を走っていたネズミたちが急激な速度で消失していっている。そして聞こえるのは、濁流の響き。水の反響音、その振動。そして先行するネズミアンデッドが一瞬で消滅したという事実。


高純度の聖水を湯水のように使った計略ッ! アンデッドを消滅させるだけでなく、同時に術者の圧死・窒息死が狙えるトラップ!



「水ッ! それも聖水ぃ! いいね、いいね! とってもいいねぇ~!」



凶悪な笑みを浮かべながら、思考を回転させる彼女。こんな大掛かりな仕掛け、楽しんで解かなきゃ女が廃るとでも言いそうな顔で、アンデッドたちへ指示を出し始める。単純な聖属性の攻撃ならまだしも、全てを押し流すような津波のようにやって来る聖水の前では全て無力。即座にデュラハンたちを後続へと下げ、矢面に立たせるのは獅子の頭を持った男。



「まだ全然出す気はなかったんだけどォ! ここまでされたらお返ししなくちゃぁ! 私の最高傑作ぅ! 最大出力でやっちゃえ!」



死霊術師はその死体に指示を出しながら、背後にいたアンデッド数体に魔力を絞り出させ、獣王に注ぎ込む。対象となってしまった死体たちは即座に白へと変色し、灰になってしまうがその犠牲のおかげで必要な魔力はチャージできた。


死した彼が再現するのは、『獣王砲』。彼が生前編み出した技術の一つである『魔力砲』の高威力版。


それを更に、押し上げる。


彼の死因となった、レイスの魔力砲。


本来なら真っ白な光となって放たれるはずなのに、魔力の圧縮を行い過ぎたが故に黒く発光する魔力砲。




「……【暗黒獣王砲】。」




黒い光が、全てを焼き尽くす。


本来アンデッドごと術者を押しつぶすはずだった聖水たちは全て蒸発し、同時に密室とするために張り巡らされていた魔道具すべてが破損及び消失。あまり大人数が同時に通れそうにないはずだった地下道を全て切り開き、出来上がったのは王宮の直上までの一直線な道。



「あは! あはは! すごい! やっぱすごいや獣王は! ……技の名前ちょっとダサいというか厨二臭いけど、まぁそれもチャーミングでいいじゃないですかぁ! この子の技術や技をそのまま使えるように脳を色々改造して良かったよぉ~! うんうん、最高傑作!」



普段の少しおっとりとした喋り方ではなく、早口で話し始める彼女。傍から見れば自分の作品の出来に喜ぶ狂人でしかないが、その手は確実に次の一手のために動き出し、その頭も回転し始めていた。


獣王が攻撃を行ったことで、軍師が用意していた聖水以外のトラップも全て焼き払われてしまった。それと同時に彼女たちに襲い掛かる危険は、この地下通路の崩落である。どこからどう見ても獣王の攻撃は通路を支える支えすらも消し飛ばしていた。故に、彼女はアンデッドを用いた。



「『骸骨防壁(スケルトンウォール)』」



新しくくりぬかれた地下道を補強するように、骨の壁が現れ補強していく。この魔法によって更に魔力タンク役であったアンデッドが消失してしまったが、彼女にとっては必要経費である。いまだ彼女に付き従うアンデッドたちは多い、そして最悪獣王さえ残れば彼女はそれでよかった。彼女率いる一団の中で、彼女の命の次に重い存在が彼であり、それ以外は時間さえあればいつでも用意できる駒でしかない。



「……さてさて、落ち着いたし王宮へといきますかぁ。」







 ◇◆◇◆◇









赤騎士にとって、一番長い一日。


それが今日、この日であった。


軍師からの指示を受け町中を走り回り、おそらく死霊術師の配下であろうアンデッドたちと戦う日々。今の自身と同等かそれ以上の相手と戦い、何とか勝利した彼女はほんの少しではあるが成長し、自身の壁を乗り越えることに成功していた。本来であればすでに休養を頂き、その貴重な時間を使って、今回の戦いで得た経験やエルフのアメリアと名乗る女性との模擬戦を糧に、鍛錬を行う予定だった。


しかし、上からとんできた指示は"休養"ではなく"急用"。即座に王の傍に付き、護衛を行えという物であった。



(私が一番階級が高いとか……。)



ナガン軍が行動を起こすとき、何かしらの特例がない限りその場で一番階級の高いものが指揮を執ることになる。これまでの彼女であれば駒としての動きしかできなかったので、彼女以外の指揮役が必要であったが、色々吹っ切れた彼女はすでに"駒"ではなくなっている。必要があれば戻るだろうが、今求められているのは『指揮官』としての役目と、『この場で一番の実力者』としての振る舞い。


そんな役目ほとんど初めてなのに、相手はおそらく特記戦力級の死霊術師。いくら軍師の策略が蜘蛛の巣のように張り巡らされており、敗けたとしても勝ったとしても生き残ればいいという指示を貰っているといっても、その緊張は並みのものではない。というかそもそも今いる場所は色々と気が引き締まってしまう謁見室。部屋の装飾とか華美すぎるし、こんな場所でリラックスして仕事なんてできるわけがない。



(軍師様ぁ~、恨みますよぉ~!)


「はは、赤騎士。だいぶ参っているな。」


「あ、"陛下"……。でいいんですよね。」


「うむ。にしてもまぁ、かなり大掛かりだな。」


「ですよねぇ。」



彼女に話しかけてきた髭面の男性、非常に整った顔つきをしており、その肉体も鍛え上げられている。この人物こそ、"人間至上主義"という思想の持ち主と、それに反発する者を一つに纏め揚げ、この王国を大陸における覇権国家として成りあがらせようとしている人物。今代のナガン王である。


若干気が抜けた言葉を交わしながら、彼女たちはこの玉座の間を囲む装置へと目をやる。軍師が研究者や技術者を招集し、その英知を以って作り上げた品であることは理解しているが、未だ実戦投入されていない兵器。今も技術者たちが全力で最終チェックを行っているが、もしそれが失敗した場合、赤騎士ドロテアはほぼ一人でかの獣王を相手どらなければいけない。



(監視員さんたちが獣王のアンデッド、見つけちゃったからなぁ……。巨体の獅子の獣人って絶対そうじゃないですか。うぅ、きちゅい。)



元々の軍師の策略、ヒード王都で獣王を倒すプランにおいても彼女がラストアタックの役目を担っていた。当時の彼女であればただ"駒"であることを貫き、何も考えずに突撃できただろうが、今の彼女には感情がある。不安や恐怖、実際に相対すれば即座に切り替えることが出来るだろうが、何もない今はその感情を完全に持て余していた。


現在アンデッドに襲撃されているはずなのだが、どこか気が抜けた雰囲気が流れるこの空間。


そんなものを全て吹き飛ばすように、地下から途轍もない魔力反応。即座に轟音と立っているのも難しいほどの揺れが彼女たちへ直撃する。



「……ッ! 来ましたね! "陛下"! 私の後ろへ! 各員戦闘配備!」


「「「はッ!」」」



彼女がそう指示を出し、大盾を構える。それに合わせ兵士たちも武器を構えていき、集まる視線の先は本来この国の王が座るべき場所。


軍師の"脚本"では、相手はあの場所から出てくる。謁見の間の玉座のすぐ後ろに存在する隠し通路、何かあった時に陛下を逃がすための道。それを逆行する形で、死霊術師は襲い掛かって来る。


先ほどまでの雰囲気はどこへやら、完全に切り替えた赤騎士は全神経を集中させながらゆっくりと剣を抜く。彼女本来のスタイルである、真っ赤な全身鎧と大盾、そして愛用の剣。全てメンテナンスが終了しており、新品同然。これで負けてしまうというのは、単純に自身の実力不足。そう考えていた彼女は、真っ先に異常を察知し声を上げる。




「来ますッ!」




その瞬間、轟音と共に吹き飛ぶ玉座。


敵が、やってきた。
























「ながいねー。」

「でばんまだー?」

「くちゃいの、ぷちぷちしないの?」









〇そのころのダチョウ被害者の会


「……ださくないもん。」


「(や、やべぇですよデロタド将軍! 獣王様が拗ねてます!)」

「(ま、まずいぞボブレ! これ三日は引きずる奴だ!)」


「急になんか技の名前振られたから頑張って考えたんだもん、こっちの時間で三日ぐらい考えて色んな案出して、ヒードの先王にも一緒に考えてもらったんだもん……、なのに……」




『技の名前ちょっとダサいというか厨二臭い』




「二人とも……、かっこいいよね。暗黒獣王砲。」


「「(コクコクコクコク!!!)」」








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