37:ダチョウと観戦
「ふぅ……。あぁ、赤髪の貴女。なんて呼べばいいかしら。」
呼吸と共に意識を切り替え魔力を回し始める。ゆっくりと調子を整えながら、私は眼前の人間。赤髪の女の子へと話しかける。
長く生き過ぎたせいか、それとも未だエルフの感覚が残っているせいか。この女の子が何歳ぐらいなのかよくわからない。おそらく成人はしていると思うのだけれど、あのダチョウたちみたいに童顔ですでに子供持ちみたいな人間がいるのがこの世界だ。ここ十数年色んな種族と過ごしたせいでさらにごちゃごちゃになっている。
とりあえず大人と同じように扱っておけば角は立たないだろうと考えて、言葉を選んだ。
「……では、ドロテア、と。」
一瞬だけあの"軍師"の方へと視線を移し、何か考えながら自身の名前を口にする彼女。……うん、根はそんなに悪くないみたい。"思想"の程度も強くないみたいだし。
ナガンの出身と聞くと、数百年前のことを知るこの身からすれば結構身構えてしまう。最近はマシになっていると聞くが、あの国は徹底的に他種族を弾圧していた。奴隷扱いって奴ね。まぁそんな思想になってしまうのも、そうそうおかしい話ではない。元々自分たちがされていたことを、やり返しただけ。よくある人類の歴史の繰り返しだ。
そもそも人間と言う"種族"は他種族に比べて弱い。繁殖力と言う強みがあるけれど、獣人やドワーフのように腕っぷしが強いわけではないし、私たちエルフのように魔法への適性が高かったりするわけではない。種族としての強みは比較的増えやすいこと。数という化け物以外には通用する力はあるけれど、数を揃えなければ他の種族と勝負にならないのは確か。種族間の差別とかが激しかった時代は基本人間は弱者だった。
そんな時代に生まれたのがナガン、豊かではあるけれど他種族が優先的に狙うほどではない土地に生まれた人間の国家。ゆっくりと数を増やし、自分たちを守るために強くなっていた国。発生時期が差別上等の時代だったからまぁ"人間至上主義"なんて思想も生まれるわけで……。
(昔は目があった瞬間に猿叫しながら切り掛かって来てたけど、そんなのはないし。とっても平和になったわねぇ。)
「じゃあ、ドロテア。貴女の好きなタイミングでどうぞ。」
「…………よ、よろしいのですか?」
「えぇ、伊達に長生きしてないもの。」
ほら、先手を譲ったのにちゃんと聞き返してくるあたり、すごくいい子。
彼女みたいな前衛職と、私みたいな後衛職が相対したとき、勝敗は"距離"と"準備期間"によって決まる。この二つの要素が大きければ大きいほど後衛職が有利で、小さければ小さいほど前衛職が有利。距離があれば近づかれる前に攻撃できるし、時間があれば様々なトラップやバフを掛けることが出来る。
彼女はそれを気にしたのだろう。現在のドロテア、赤騎士ちゃんね? この子と私の距離は大体15mくらい。熟練の前衛職ならばすでに必殺の距離だ。普通の魔法職ならば両手を上げて降参するのが基本の距離。
けれど、私はそれを譲る。
「……、ではッ!」
ほんの少しだけ思案した後、彼女は大きく踏み込む。その瞬間、先ほどまで彼女がいた場所から、姿が消える。
そして、私の眼前まで。
刃の大きな剣が、首目掛けて振るわれる。
「『自動魔力防壁』」
おそらく寸止めしようとしていたのだろう。彼女の膂力を考えると格段に弱い斬撃が、魔力防壁によって防がれる。
そもそも、後衛職というのは真っ先に狙われるのが世の常だ。後ろからチクチクと攻撃してくる相手は厄介だし、それが魔法職ともなると安全地帯から高火力で殺しに来る。むしろ狙わなければ新手の自殺志願者だと言えよう。つまり私たち魔法使いは近づかれた時の対処法をマスターしておかなければいけない。
頼りになる前衛がいるから分業して高火力の魔法だけ覚える、というのもいるらしいが最悪を想定しない者などすぐに淘汰されてしまうだろう。
「よい、踏み込みね。けれど"小手調べ"は必要ないわよ。」
それにしてもこの子……、"人間至上主義"なら模擬戦でも殺しに来るのかな、と思ってかなりの魔力を注ぎ込んだけれど全然だったわね。どうやら根もいい子みたいだし……、もしかすると単に『他種族との交流が少なくてどう付き合えばいいのか解らない』状態かしら? 周りは『人間以外駄目ー!』って言っているけど、現実を見てみるともしかしたら違うんじゃないか、みたいな。
(大陸は戦乱が続いているけれど、種族ではなく国家間のもの。時代は変わったわねぇ。)
「ッ!」
「驚いている場合かしら?」
そんなことを考えながら、持っていた杖を即座に彼女の脳天目掛けて振り落とす。即座に剣によって防がれるが、まだ完全に動揺が晴れたわけではない。押し込んでいこう。
杖を"杖"としての持ち方から、"棍"へ。遠心力を上手く使いながら、打撃を連続して叩き込んでいく。
「ッ! 単純な魔法職でありません、でしたかッ!」
「エルフは長生きなの、趣味って大事よ? メインは魔法なんだけどね。」
近接戦闘能力では、どれだけ全身に魔力を流し身体能力を底上げしようともあちらの方が上。相手が5000で、私が良く見積もっても3000程度。けれど今勢いに乗っているのは私、どれぐらいやれるのか知りたいし、ちょっとペースを上げてみよう。
ただの木の杖に魔力を流し込み硬質化させ、相手の剣を受け止める。しかし棍の利点は得物の長さ、剣を片方の端で受け止めることが出来れば、もう片方の端は自由に扱える。てこの原理を扱いながら、赤騎士ちゃんの攻撃の威力を利用し、棍をその横っ腹へと叩き込む。
「ぐッ!」
くぐもった声を発しながら、吹き飛ばされる彼女。しかしながらこの手には全く手ごたえはない。腹部に力を入れ、同時に攻撃される方向へと飛ぶことでその威力を受け流したようだ。うん、やっぱり純粋な前衛職は強いね。
ほんの少しだけ転がり、立ち直す彼女。多少服が汚れた程度でダメージは0。今のこの子は町娘みたいな恰好をしているけれど、鎧を着ていればさっきの攻撃は体で受け止めていただろう。そしてそこから相手の武器破壊か、上からの振り落としか、まぁまともに喰らったら死ぬ攻撃だね。
「仕切り直し、かな? なら少しだけ準備させて貰うよ。『混合木石人形』」
懐から取り出した二つの植物のタネを地面に放り投げながら、魔法を唱える。次からは確実に本気の勝負、さっきまでの小手調べの勝負ではなくなる。そもそも私の魔力防壁は"対魔法戦"用のもの、物理攻撃に対しあまり強いものではない。物理専用防壁の魔法はあるけれど、それを使うぐらいならこうやって前衛を増やし、後ろからチクチク攻撃する方がいい。
地面に着地した種が急速に成長し、人のような形を取る。その骨格は木だが外側を鎧のように石で固めたゴーレムが、二体。普通の木と石ならば即座に破壊されてしまうだろうが、この子たちは魔力で強化済み。彼女の実力を考えれば時間稼ぎにしかならないだろうが、それで十分。
「……。」
「あら、待ってくれるの? なら甘えましょうか。『木槍砲台』」
もう一度懐からタネを取り出し、今度は四つ後ろへと投げる。即座に魔力によって成長されたソレが形を作っていき、出来上がったのは四つの固定砲台。この木の砲台は『木槍』、文字通り木の槍を発射する魔法を注ぎ込んだもの、魔力の分だけ吐き出してくれる砲台ね。昔暇していた時にロックオンとホーミングの効果も付与しちゃったから、設置すれば後は放置で大丈夫な優れものなのよ。
大体威力は一発で10人の兵士が吹き飛ぶくらい、連射速度は一秒間で20発ぐらいね。特記戦力相手じゃ何の意味もないし、準特記戦力でもちょっと痛いぐらいだろうけれど……、模擬戦だしちょうどいいでしょう?
「っと、こんなものかしらね。ドロテア? 待ってもらえたから再開は貴女に任せるわ。」
「……いつでもどうぞ。」
「そう? なら……、"始め"。」
私がそう呟いた瞬間、砲台が火を噴く。
ダチョウたちからすれば全て見えているのかしれないけれど、私からすれば一本の線のような槍たちが赤騎士ちゃんに向かって降り注ぐ。さぁ、どう対処するのかしら。
私がそう考えた瞬間、彼女が動き出す。
「噴式・乱発ッ!」
彼女が剣を振るった瞬間、空気が押し出される。単純に空気を切るのではなく、複数の空気を押し出す一閃。放射されていた木の槍たちは一斉に吹き飛ばされ、同時に空気の弾丸はゴーレムたちを撃ち抜く。
準特記戦力ともなれば、剣一本を振るうだけで数百人の命が吹き飛んでもおかしくはない。そんな腕力によって巻き起こされた風は、確実にゴーレムたちの関節を貫いた。何も為せず、その場に倒れ伏す木偶の坊。
「……へぇ?」
◇◆◇◆◇
「ふギューッ! ふギューッ!」
「はいはい、落ち着こうねデレ? 野生に戻ってるよ? あれ本気で戦ってるわけじゃないからね?」
なんかよくわからない声を上げながら激怒しているデレの体を全力で押さえつけながら、二人の戦いを眺める。
一瞬にして赤騎士ちゃんがゴーレムを破壊し、今現在マシンガンのように打ち出される木の槍を避けたり剣で打ち払いながら距離を詰めている。うん、普通にすごいや。アメリアさんはアメリアさんで魔法がすごいし、魔力操作も獣王には劣るけどヤバい。んで赤騎士ちゃんは単純な身体能力と技術でアレを捌いている。すごいよねぇ、アニメみたい。
「ギュギュギュギュ!!!」
「あーい、落ち着け~? ……あ、そうだ軍師さんや。あのドロテアちゃん、だっけ? 彼女が使ってた"技"。あれなぁに?」
「え、あ、はい。アレはですね……」
今も私のお膝の上で暴れまわっているデレを恐ろしいものを見るような眼で見ながら、軍師さんは説明を始めてくれる。
どうやらさっき赤騎士ちゃんが使った技、っていうのは彼女の実家に伝わる『噴式』という術の一種だそうだ。赤騎士ちゃんの家が始まった時に編み出された技術らしくて、特記戦力とかに何とか対抗できないかと色々頑張った結果、空気を自由に操る術を生み出したそうな。さっき彼女がやったみたいに剣を振るいながら複数の空気弾を発射し対象を撃ち抜いたり、空気を蹴り上げて空を走る様に動き回ったりすることが出来るんだって。
「まぁ専ら対中距離・遠距離用の技だそうです。彼女の御父上から聞いたのですが、熟達し十分な力量を持っていれば空間を裂くような攻撃もできるようですよ。……ま、赤騎士殿にとってはまだ未完成の技らしいですが。」
「へぇ、すごい。かっこいいねぇ。……ちょっと私も空飛んでみたいし、後で教えてもらおうかな? デレも一緒に……」
「ヤ!!! ギュピィィィ!!!」
「あ、うん。ソウダネ。」
この子。デレの中ではすでに、アメリアさんのことを自分の群れと同じ扱いになったみたいで、さっきからずっとこんな感じだ。他種族との融和ってことを考えるととってもいいことだし、デレが成長した証なんだけど……。も、もうちょっと賢くなろうね? 大好きなアメリアさんが攻撃されるのが嫌なのは解るけど、これはお遊びの戦いだから。ほらアメリアさんも興味深そうな眼で赤騎士さんのこと見てるでしょ? もうちょ~っとだけ、我慢しようねぇ?
「うに?」
「てき?」
「おこってる?」
「だいじょうぶ?」
「ままー?」
「はーい! 集まっちゃった子はかいさーん! ほら遊んでおいで!」
しかもデレの声に釣られて定期的にウチの子が集まって来ちゃうし……、デレが『やっつけろー!』とか言い始めたら集団リンチになっちゃうでしょうが! せっかくアメリアさんにお願いしたのに、意味が無くなっちゃうよ! ほら帰った帰った!
キミは走るの好きでしょう? あっちで走ってる子いるから混ぜて貰いな、んで穴掘り大好きっ子はあっちの方で助けを求めてる子いるし一緒に遊んでおいで! んでとりあえず私に撫でて貰いたい子は……、一列に並べぇ!
「わかった!」
「はーい!」
「まま! ごはん!」
「ママはごはんじゃありま……。お腹減ったの? じゃあおつまみになっちゃうけど、これお食べ。ちょっとしょっぱいよ。喉渇いたらお水飲みなさいね。」
「わーい!」
「ごはん?」
「ごはんだ!」
「たべる!」
「ちょーだい!」
◇◆◇◆◇
戦闘のさなか、ダチョウたちに揉みくちゃにされるレイスを横目に見ながら後方へと下がり続ける。
同時に懐に貯めていた植物の種をばら撒きながら。
(少し、面倒ね。)
私の勝ち筋は赤騎士ちゃんの無力化か、スタミナ切れまで粘ること。対して彼女の勝ち筋は近寄るだけ。最初は勢いで押すことが出来たが、そもそもの身体能力はあっちの方が上。距離を詰められるだけで敗北が近づく。単純な戦闘、殺し合いであればもっと高火力の魔法や、即死級の魔法を撃てばいいだけなのだが、コレは模擬戦。命を取るのも四肢を捥ぐような攻撃も避けるべきだろう。
となると、本当に使える手札が少ない。
(非殺傷の魔法がないわけではないけど、速度が足りない。)
これでも魔法の教師、もう40年前の話にはなるけれど特記戦力を一人育て切ったんだ。そういう魔法使い同士の模擬戦で使えるような魔法は頭に入っている。けれど目の前にいる彼女、赤騎士と言う称号を持つこの子に対応できる魔法はあんまりない。
(仕方ない、罠でも張ろうか。)
植物の種を地面に撒きながら、先ほど使った魔法を連続的に使用していく。多数の砲台やゴーレムを生成し、足止めと罠の作成と撹乱。それを同時にやるわけだ。けどまぁ、そんな簡単に準備させてくれるはずもなく。
「噴式・貫発ッ!」
彼女が剣を振るった瞬間、空気の弾丸が私の頭部を掠める。身体能力の強化をしていなければ確実に避けられなかった攻撃、避けた弾丸は後ろに生成したばかりのゴーレムの胴体へとあたり、鉄よりも固いはずの木に大きな穴が開く。そして。
「噴式・斬発ッ!」
「『最大強化木盾』」
回避のために止めてしまった足、その隙を逃さず彼女が大きく踏み込む。たった一歩で十数mの差が無くなり、剣が振り落とされる。さっきの空気の弾丸の、斬撃タイプ。避けられないと判断し、足元に撒いていた砲台用のタネに掛かっていた魔法をキャンセル。即座に木の盾を生成する。最大まで強化された盾と斬撃がぶつかり、両方ともに消滅するが、すでに彼女はすぐそこに。
振り下ろされる剣を、強化した杖で受け止める。 ッ! やっぱ膂力勝負じゃ勝てないわね。
「捉えッ、ました!」
「あら、それはどうかしら。」
即座に足から地面に魔力を流し、彼女が立っている地面を"押し上げる"。詠唱無しの土魔法、魔力消費は多いがやはり便利だ。結構な魔力を込めたおかげで、勢いよく空へと吹き飛ばされる赤騎士ちゃん。高さは大体数百m、しかしながらその顔は全く動じていない。
即座に体勢を整え、空気を蹴ってそのまま地面へと向かってくる彼女。
「……なるほど、蹴りでも行けるのね。今のうちに距離を取らなきゃ。」
降りてくるまで数秒もかからないだろう、すぐさまトラップを作成する必要がある。
魔力を足に回し、身体強化を施しながら地面を走る。それと同時に、彼女を空へと打ち上げた時と同じ要領で、魔力を地面に。トラップの作成だ。魔法使い相手ならばすぐに見破られてしまうものではあるが、相手は単純な戦士。魔力を持っていても扱う才がなければ罠の障害にはならない。
あとは、追い込むだけ。
この模擬戦で彼女の思考パターンはある程度読めた、こればっかりは経験の差だ。落下地点を"こちら側で指定して"あげる。生き残っている砲台に指示を出し空を駆ける彼女へと斉射、またゴーレムにも指示を出し腕部を『木槍』と同じように発射させ、赤騎士ちゃんを誘導する。
「ッ! 多い!」
空気を蹴りながら縦横無尽に宙を駆ける彼女、けれど私の弾幕は確実に彼女を追い込んでいく。
そして。
「ッ! ようやく……!」
「あら、そこにおりても大丈夫?」
魔法陣が、起動する。
地面に撒いた種の中には、いくつか何も命令を与えずに魔力を込めただけのものがあった。私が扱う種は一センチにも満たない小さなもの、それを大量にばら撒いていたが故に彼女はそれに気が付かなかっただろう。今それを、叩き落す。
彼女が反応するよりも早く植物が成長し、半球状のドームを作り上げ、彼女を閉じ込める。もちろん地面には強く根を張って下から通り抜けることがないようにしているし、壁となっている木の硬度は時間制限を定めることでミスリル級にまで叩き上げた。下位の特記戦力ですら破られてしまうような檻だけど、ドロテアにとってはちょうどいいものだ。
模擬戦ではなく本当の戦闘であれば内部に水を生成させながら、さらに木に魔力を追加して『迫りくる壁』+『水攻め』をするのだけど、今日はお休み。
「さて、手はあるかしら。」
内部で木に空気がぶつかるような音や、剣によって切り付けられるような音がするが、檻自体には何の問題もない。もし一部破壊されたとしても、魔力がある限り追加で木を生やせばいい。レイスの魔力砲みたいに全てを吹き飛ばすぐらいの攻撃がなければ穿つことは出来ない。
何度か内部で試行錯誤する音が聞こえたが次第に聞こえなくなる。それと同時に、中から聞こえるのは降参の声。
……とりあえず、彼女の壁には成れたかしらね?
◇◆◇◆◇
「二人ともすごかったねぇ。アメリアさん、おめでと。あとお疲れ様。」
「ありがとう。デレは……」
「ギュビビビビビ!!!!」
あぁ、という顔をするアメリアさん。デレはこのまま解き放っちゃうと、負けてしょんぼりしてる赤騎士ちゃんの所にアンブッシュしちゃうから、記憶が吹き飛ぶまで拘束中。ほら、もう戦いごっこ終わったから落ち着け~。ほら、アメリアさん勝ったし傷らしい傷ついてないでしょう? だから落ち着きなさいっての。
「……ッ! 軍師殿、申し訳ございませんッ!」
「いえいえ、お疲れさまでした。それで、何か見えるものはありましたか?」
「…………決定力の弱さをもう一度理解させられました。」
決定力? あぁ押し切る力ってコトね。なるなる、あのアメリアさんが作った木の檻を破壊できるぐらいの強さがあれば、って感じか。私も目に魔力を通して見てたんだけど、かなり緻密な魔力操作によってあの檻は作られていた。多分普通のダチョウでも破るのが難しい奴だろう、複数で突撃すればいけると思うけど、高原の下位層相手なら十分通用する技だった。
落ち込む赤騎士さんを慰めるように、アメリアさんが口を開く。
「そうね、あの"噴式"? といったかしら? アレをもっと高威力にするか、そもそもの肉体のレベルを上げるかのどっちかだと思うわ。……それに多分、おそらく、きっと……、貴女まだ若いのでしょう? よぼよぼのお爺ちゃんになってから大成した人も見たことあるし、まだまだこれからだと思うわ。」
「……ありがとうございます。」
うんうん、いいねぇ、こういうの。赤騎士さん私よりも年上だけど、頑張る若人見てたらお母さんもやる気出てきた……! せや軍師さんや! 私らも特記戦力同士で模擬戦せぇへん? ……え? 死ぬ? 瞬殺される? あはは! そんな冗談。ちょっとはいけるでしょ~? ほら魔力砲撃つから跳ね返して見て~!
「(え、ここで殺される?)」
「あは! 本気にしちゃった? 冗談だよー!」
「あ、あはは。ですよね。」
っと、変なこと言ってるうちに、ようやくデレが大人しくなったな。落ち着いた? そかそか、さっきのは戦いごっこみたいな奴だから、二人とも怪我してないでしょう? だからデレも怪我させちゃダメなんだよ? 解った? 解ったか~! 偉い偉い。
「む~!」
我慢出来たデレをわちゃわちゃと褒めてやるが、未だご機嫌は良くない。すっ、と私の手から逃れると、しかめっ面しながら赤騎士さんの前まで歩く。……大丈夫か? 何かしちゃった時すぐに止められるように、全身に魔力を流して身体強化を始める。
「むっ!」
「……私に何か御用でしょうか?」
しかめっ面のデレを見ながら、表情を変えずしゃがみ込む彼女。幼子にするように、下からその顔を覗き込むようにしてくれる。そんな優しい行動をしてくれた赤騎士ちゃんであったが、デレは思いっきり自分の気持ちを言い放った。
「おまえ! きりゃい!」
「あ、ご、ごめんなさい。」
「あと! くちゃい!」
その言葉を聞いた瞬間、口から血を吹きながら倒れる赤騎士ちゃん……、Oh……。
〇そのころの被害者の会・お茶の間
「おぉ~ッ!」
「(ねぇデロタド将軍、なんか獣王さんテンション高くないですか?)」
「(いや、ボブレ。なんでもかっこいい技とか大好きのようでな?)」
「噴式! なんとも心躍る名前か! こう、子供の頃の記憶がよみがえって来るな! 木の棒を振りながら『○○スラッシュ~!』と叫んだ懐かしき日々! 解るよな御両人!」
「「あ、はい。」」
「いや我も実は昔色々考えておったのだよ! ほら我、獣王だろう? 故に"王"をテーマにした技の名前を付けようと思っていてな! 手から出す魔力砲は『爪王砲』、口から出すのは『牙王砲』みたいな感じに! 獣王と言う獣人の王が出す技としてはとってもよくないか!? こうしてはいられないッ! 今から技の練習をしなければ! それにあの噴式とやら! やってみたい!!!」
「あ~、獣王殿? 私の生前の記憶になるのですがな? 噴式はかなり修練のいる技術で、確かあのドロテアちゃんも技を習得するまで数年レベルの修行が……」
「『噴式・乱発!』 おぉ! できた! うむむ! コレがあればあの時空中戦も出来たというのに……! 惜しいことをしたッ! しかしこう、新技の練習と言うのは心躍るな!!!」
「………出来ちゃってますよ将軍。」
「出来ちゃっておるなぁ。」
「あ、獣王様? ちゃぶ台ひっくり返るんで外でやってください。」
「おぉ、すまぬ!」
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