12:ダチョウと頑張る人
「あわあわ~!」
「すごーい!」
「ふしぎ~!」
「そうだね、不思議だね……。はぁ。」
ねぇ、見てよ。このニコニコ笑ってるこの子たちの様子を。初めて見た石鹸を面白そうに見てるこの子たち、ついさっきまで「「「「「ギャビビビビビィィィィイイイイイ!!!!!!!!!!!!」」」」」とか言いながら暴れまわってたのよ? しかも周りにいる敵兵を文字通りにミンチにしながら。それが今、あれからたった一時間後に「あわあわ~?」とか言ってるんだよ? 脳壊れるわ。
「もうちょっと、加減とかできたらいいんだけどねぇ……。ほら、足出して。洗ってあげるから。」
「はーい!」
翼だと色々限界があるが、なんとか足やその爪を洗って上げる。比較的若い個体の体を洗って上げたせいでね、ウチの群れの全員が私も洗って欲しいとくっついて来たのよ。こうなったらもう満足するまでしてあげるか、全部忘却するまで待つしかない。なので仕方なく洗って上げてる、ってわけだ。
あの戦いのあと、本当に色々大変だった。ウチの子たちは一度暴走すると、本当に止まらない。敵を殺しつくして満足するか、ぶっ倒れるまで暴れて起きたら全部忘れてるかのどっちかだ。他の仲間が攻撃された時も怒るけど、私がやられるってのがこの子たちにとって一番ダメみたいでね。ただのキリングマシーンに成っちゃうみたい。
ある程度敵をやっつけた後、残った敵はみんな森の方へと逃げ出そうとしてて、うちの子たちもそれを追いかけようとしてた。けれどおバカなこの子たちは、私がいなければ普通に巣の場所を忘れる、故に森に入っちゃうってことはそのままお別れ、になりかねない。なので無理矢理彼らの道を遮るようにしたり、一緒に高原を走ってた時たまに暇つぶしで歌ってた鼻歌を歌ってみて気を逸らしたりして、なんとか押しとどめてた。
……あ! もちろん人間の肉は食わせてないからね! そこは安心して!
(ま、まぁそのおかげで? 敵兵さんは何とか逃げられて、うちの子たちも敵がいなくなったから落ち着けたって感じかな。……でもまぁ、逃げられたのって100以下だと思うけど。)
敵兵たちは逃げるために武器を捨てたり、馬を無理矢理走らせたりしてた。怒り狂ったうちの子たちが自分たちのことを攻撃してくる人や、すごく声を出してうるさい人。まぁ指揮官を狙って踏みつぶしてたせいで、多分逃げ延びたのは一般兵ばっか。この子たちがまだ正気だったら全員うまく捕まえてマティルデさんとかにお渡ししてたんだろうけど……、ねぇ。
(多分あのキレてる状態で、目の前に人がいたら問答無用で蹴り飛ばしてただろうから……。)
それで、なんとか落ち着かせた後は、さっきまでのことを無理矢理彼らの頭の中から消し飛ばすために、全員の注目を浴びながら色んな事をした。なんで怒ってるのか忘れてる子もいたけど、私が全くの無傷であることを証明したり、前世で馴染みのある童話みたいなのを話してあげたり、お歌を歌って上げたり。まぁ保育園ですね、はい。それでようやく記憶をさっぱりさせて、普段通りの彼らに戻したわけ。
これぞダチョウ流忘却術! 記憶を全部吹き飛ばした後、楽しい気分にさせてしまえばもう何があったのかすら思い出せないって寸法だ……! やってる側が言うことじゃないかもしれんけど、ほんとにお前らこれでいいの? いいんだろうなぁ……。
ちなみに一応私が守れる位置にいて貰いながらだけど、プラークの兵士さんとか、冒険者の人たちに会わせて襲い掛かることはなかった。同族ながらウチの子たちが何考えてるのか全然わかんないんだけど、多分『人間ぜんぶきらい! やっつける!』という刷り込みは行われなかったっぽい。これに関してはマジで安心しました。
(人間に対して敵意持ってたら、もう帰るしかなかったからね……。)
と言うわけで、色々見た目が血みどろでアレなので。近場の川に移動してお風呂タイムに突入している。川に向かおうとしたとき、後始末をしてくれるらしい兵士さんが獣人、それも鳥系専用の石鹸を大量に持たせてくれたからそれで今洗ってるってわけね? この子たちにとって初めての石鹸だから、最初は食べようとしてたけど、泡が出るオモチャとして認識してからはちゃんと体を洗ってくれている。
「お客さん、どこか痒いところはありますか~?」
「おきゃく、さん?」
「あぁ、わかんないか。痒いところある? そこ洗って上げるよ。」
「わかんない!」
「はいはい、じゃあ全身丸洗いしましょうね。」
にしても、思いっきり私たち人間を虐殺しちゃったわけだけど。大丈夫かなぁ? 戦闘後マティルデさんとか兵士さんとかとちょっとお話したんだけど、私が話した人たちの顔は明るい方だった。けれど、大きすぎる力ってのは怖がられるものだ。兵士さんたちは大丈夫でも、それ以外の普通の人、一般の人たちから怖がられる可能性もある。
もし『出ていけー!』とか言われながら石を投げられたりすれば……。う~ん、考えたくない。ちょっとそこら辺もマティルデさんに色々お話を聞いた方が良さそうだね。
「ちょうど後始末が終わったらまた宴する、って言ってたし。その時に聞いてみようか。」
「うたげー? あ! おまつり!」
「あら、思い出せたの? すごいねぇ、褒めちゃう。大正解。昨日美味しいご飯いっぱい食べたでしょう? 今日もしてくれるんだって。それにたくさん人を集めてお祭りするみたいよ? 戦勝のお祭り。」
「ごはん! ごはん!」
そうだね~、いっぱい食べようね~。なんて言いながらこの子の体に着いた血を洗い流してあげる。
……あ、そう言えば。久しぶりの暴走だったから忘れてたけど、明日は大変なことになりそうだなぁ。今日、ウチの子たちが扱った力って言うのは全部前借りみたいなものだ。怒りのせいで枷が外れてとんでもない破壊力を発揮したけど、明日は筋肉痛で死ぬって感じ。朝起きたら理由が全く解らない(忘れてる)痛みに悶えながら地面を転がりまわるんだろうなぁ。『いたいいたい!』『なんで!』『うにぃぃぃ!』みたいな感じに。
高原にいたころは、筋肉痛が始まる前に安全が確保できる場所へ移動しないと駄目だったけど、町の近くにいる間は外敵の心配をしなくていいのがラクチンでいいなぁ。
(ま、数時間で治るからそこまで心配はいらないんだけどね~。)
◇◆◇◆◇
場面は変わり、ナガン王国へ。"軍師"のために用意されたこの部屋では、先ほどまでの『戦勝の報告まだかな~!』という少しゆるふわな空気を、一瞬にしてどんぞこへと叩き落す報告が行われてた。
「す、すみませんアランさん。ちょっと私の耳がおかしくなったのか、『プラーク侵攻軍が敗北し、生存者の数不明。魔法兵団は文字通り全滅、デロタド将軍もボブレも戦死した。』と聞こえたのですが……。」
『ざ、残念ながら……。』
「え、ほんとに? ほんとにほんと? な、なんで?」
人は、信じられない現実を突きつけられた時、何も信じられなくなると言いますが……、正に今がその時なのでしょう。
驚きのあまり座っていた椅子から立ち上がってしまう。嘘であると心が叫んでいるが、眼前に表示されるアラン殿の今にも死んでしまいそうな表情を見て、この報告がまやかしでないことを脳が理解してしまう。瞬時に全身から力が抜けていき、先ほど座っていた椅子に崩れ落ちる。え、敗けた? 5500、しかもナガンの誇る魔法兵団を編成した軍が? 傭兵を含めたとしても800程度しかいない守備軍に?
脳内に様々な可能性が浮かんでは消えていく、将軍が率いる軍と魔法兵団が上手く連携が取れず敗北したとは考えにくい。デロタド将軍は人間至上主義という思想にかぶれてはいたが、将軍としての能力がなかったわけではない。そしてボブレという男も、自身の信頼厚い男。少々研究者気質があるものの、大軍の中で自身の役割を見極め進言することのできる人間だったはず。
この事実を考えるに、こちら側。ナガン側で何らかの問題があったとは考えられない。……情報だ、何が何でも情報がいる。こちら側に何も問題らしき問題がないということは、相手側に我々ではどうしようもない存在がいたということに他ならない。
彼らの死を悼む時間があるのならば、自身は"軍師"として策を練り、実行する。それが私なりの弔い方だ。そのためには情報がいる、どんな小さなものでもいい。とにかく多くの情報を。
「……昨日、プラークへとやってきた傭兵団、ですか?」
『は、はッ! あの"ダチョウ"を名乗る団体が単体で突撃を仕掛け、盾兵を突破。その後魔法兵団を殲滅後、周囲を固めていた侵攻軍を……。』
ダチョウ、なるほど。"ダチョウ"と言うのですね、その傭兵団の名は……。恐怖か、それとも自責の念か。震えながら言葉を紡いでいくアランさんの報告を聞きながら、相手の姿を脳内で形作っていく。
レイス、と名乗る鳥系の獣人がトップの団体。全員が長と同様の種族であり、鳥系の獣人ながらおそらく空を飛ばず地上を疾走するタイプの種族で固められている。
昨日の夜に行われた宴会の様子を聞く限り、トップ以外の知能は低め、もしくはそう見せており、基本的な交渉などは全てトップが管理している。レイス自体は、比較的温和な性格であり、同族に対し深い親愛がある様に見えた。またアランさんの探るような視線を真っ先に気が付き、警戒する様子を見せていた、と。
(……そして、何より警戒すべきはその戦闘能力。)
騎馬兵の突撃速度を軽く超える速度を単体で出すことが出来、傭兵団全体で行動することが可能。その速度を乗せた蹴りは我がナガンの盾兵、全身を重装鎧で固め、鉄の分厚い盾によって守られた彼らを両断できるレベルの破壊力。速度を乗せずとも、それ以外の兵たちを簡単に蹴り殺してしまう脚力。
そして、"何らかの方法で"雷魔法に対し強い耐性を得ている。雷魔法を受けながらもそのまま突撃を敢行し、敵を瞬く間に蹴散らしていった。5000を300で瞬時に殲滅できる能力。もしかすると雷魔法以外、それこそ"魔法"への強い耐性がある可能すらある。
「特記戦力は基本、個人を指すものですが……。彼らは群でそうなる、わけですか。」
アランさんが防壁の上から見た情報、距離も離れているとのことでどこまで正しい情報なのかは判別できません。しかしながら彼の話を聞く限り、その傭兵団に被害らしい被害はなかったように聞こえます。……つまり、無傷で5000を処理できてしまうという戦力。"特記戦力"と呼んで差し障りのない相手なのでしょう。
「各国に諜報員を送り、特記戦力に関しては神経質なほどに情報を集めていたつもりですが……。」
急に現れた、ヒード王国にとって過剰過ぎる戦力。5000を無傷で処理できるということは、特記戦力として数えられる基準とも呼べる10000の殲滅など軽く出来てしまうでしょう。そんな物騒な集団、我々の諜報網に引っかからない方がおかしい。どこかから急に現れ、私たちを蹂躙した相手。……これほど恐ろしい物はない。
「……解りましたアランさん。報告の方、ご苦労様です。今回の侵攻の命を出したのは私、故に全責任は私にあります。色々と考えてしまうでしょうが、どうか気を強く持ってください。」
『はっ、あり、ありがとうございます!』
「イレギュラーが出てしまった以上、この計画は破棄し新たな策を練らねばなりません。アランさん、貴方は次の計画が決定するまでその"ダチョウ"という傭兵団の調査をお願い致します。どんな小さな情報でも構いません、できるだけ怪しまれずに、可能な限り懐に入り込んでください。必要ならば救国の英雄のように称えるのもいいでしょう、貴方は"プラークの御用商人"なのですから。」
『……かしこまりました。』
「それと、もう一点。ヒード王国は我々のように長距離通信の能力を持ちません、故に早馬などで今回の侵攻を王都へと伝えようとするでしょう。他の地に潜伏している諜報員にも頼みますので、無理のない程度でいいです。可能な限りその伝達を遅らせてください。」
『はっ!』
「では、次の定期報告で。御武運を。」
彼の礼を受け取りながら、通信を切る。アランさんを始め、諜報員の方々は全て私の下で育成した信頼厚い方々。いくら劣勢になろうと、いくら自身に命の危機が訪れようとも国のために働いてくださる方々です。二重スパイなどになってしまった時のことは常に考えるべきですが、彼を信頼し、次の報告を待つことにしましょう。
彼への指示は出しました。……次は、私の仕事だ。
時間は有限、すぐに次の策を講じなければならない。なによりもまず、我が王へと報告を。
全身に力を入れながら、ゆっくりと椅子から立ち上がる。歩きながら身だしなみの確認をし、王の待つ部屋へと動き始める。"軍師"は焦ってはならない。何が起きようとも、全て自身の手の中であると敵に思わせる。もちろん、味方にもだ。故に信頼を得て、調略を含めた軍の全責任を預けて頂いているのだ。
今回の件で処断されてもいい。しかしながら自身が死んだ後、国を引っ張れるものはいない。この戦乱続く大陸において、最低でもナガンの存続を任せられるような後続は、誰一人育っていない。すべての戦いが終わった後、自身のせいで死んでしまった者たちの責任をとり、首を差し出す。今の私にできるのはそれだけだ。
「……なぜ、このタイミングで。なぜ、我々の侵攻する都市へ。」
脳を支配する疑問。いくら考えても、答えが浮かんでこない。この作戦、確かに失敗した時の策も考えていたが、成功すると確信していた。それだけの準備はしていたし、イレギュラーに対しての対応も間違ってはいなかったはずだ。それが蓋を開けて見てみると最悪な結末。文字通りの全滅だ。
アランさんに聞く限り、逃げられた者も見受けられたそうだが、回廊の突破は少人数では不可。魔物に食べられるか、プラークの防衛隊に捕縛されるかのどちらかだろう。
(せめて、生き残った彼らの無事を祈る。今はそれしかできないですね……。)
そして、何より痛いのが魔法兵団だ。ナガンの技術の粋を集め作り出した魔道具を持つ魔法兵団500、瞬く間に殲滅されたということはこちらの魔道具がほぼすべてあちら側に渡ったということ。流石にすぐさま複製などはされないだろうが、致命的な技術流出。魔力の流し方を変えることで魔道具を自壊させる機構を搭載していたが、どれだけの者ができただろうか。まっさらな状態で相手に渡ったと考えたほうが良いだろう。
……しかし、魔道具はまだ、素材と時間さえあればまだ作ることが出来る。国力を投入すれば、さらに先の技術を手に入れられるかもしれない。けれども、兵は不可能だ。500もの人間を集め、教育するのにどれだけの時間と労力を費やしたのだろうか……、考えるだけで気が重くなってしまう。
そもそも、魔法を使用できる人間は一握りだ。魔力自体はこの世に生きる者すべてが所有しているが、その魔力を外部に放出できる才を持つ者は驚くほど少ない。100人規模の村で1人2人見つかればいい方だ。運が悪ければ誰一人いないこともある。その貴重さ故に私たちの先祖は魔法を使用できるものを囲い込み、貴族として取り立てていった。特権階級出身の人間に魔法使いが多いのも、それが理由だ。
(故に、この500はあまりにも貴重。同じ数を用意するのにどれだけの時間が掛かってしまうのだろうか……。)
皆、軍人となるからには死ぬ覚悟をしていた者たち。しかしながらそれが丸ごと急にいなくなってしまったワケだ。対帝国との戦いのために編成し始めた兵団ではあるが、帝国との戦いだけに使うつもりではなかった。できるだけ秘匿するつもりではあったが、投入すべきタイミングが来れば出すつもりだった。それが、今回だった。
そもそも、我がナガン王国はヒード王国を含め三つの国家に囲まれている。
そして運の悪いことに、ヒード以外の二か国は一人ずつ特記戦力を抱えている。そして我が国には、誰もいない。私も一応『策を以って10000の兵を殲滅できる故に特記戦力』と国内でもてはやされているが、本来の"特記戦力"とはそんな生易しいものではない。
言葉で表現すること自体がおこがましい、そんな化け物たちが、"彼ら"なのだから。先の戦争において、その特記戦力の一人と戦場で相見えることがあったが、できればもう二度と戦いたくない。なんとか痛み分けに持って行くことが出来たが、同じことを何度もできるかどうか……。
「そう考えれば、"ダチョウ"もまだ特記戦力の中でも下の方。と呼べるのは幸いなのでしょうか……。」
たった一人で戦場を変えるわけではない、団体で動くということはまだ策略が通る。300という数がいれば、その分個々人の好みや欲は変わって来る。そこをうまく突くことが出来れば、勝機が見えてくるはずだ。他の特記戦力のように、所属する国自体を分裂させ弱体化を図るなどと言う面倒な手をとる必要がないかもしれない。
けれど、安心などできるはずがない。もし"ダチョウ"たちがナガンへと侵攻した場合、この国は終わる。まともに対応できる戦力がない以上、この王都まで一直線に突っ込み、陛下の首を天高く掲げて王国の滅亡だ。もちろん討ち取られた首の中に私のものもあるだろう。
「そして、傭兵団であることに助けられた。」
これがヒード王国が有する特殊部隊だったりした場合。速攻で反攻作戦が立案され、こちら側が作った回廊を通って逆侵攻を仕掛けられたに違いない。しかしながら、アランさんの報告ではそのような動きはなかったという。そして彼以外にヒード王国に潜入している諜報員の情報を見ても、彼女たちの姿はない。
勿論相手の防諜がこちらを上回っている可能性もあるが、アランさんの報告を聞く限り、彼女たちはプラークの周辺から離れていないという。とりあえず、ただの流れの傭兵団として考えていいだろう。その背後に何がいるのか、何の目的でそこにいるのか、なぜこれまで発見できなかったかなど、疑問は尽きないが。
(……ん? 本当にただ近くにいただけ、の可能性……? いや、さすがにあり得ないか。)
思考を戻そう、アランさんが上手く彼らに取り入ることが出来れば、そのあたりも判明してくる。傭兵団の長であるレイスという者の目的、それが我らが提示できるものなのならばヒード王国よりもより多くの物を差し出し、懐柔することが出来るかもしれない。そして、それが無理だとしても、レイス以外の好みを把握できれば、内部分裂も狙えて来る。
つまり、彼らの情報が必要で、彼らを知るための時間が必要だ。
ゆえに、今やるべきことは。
(時間を、稼ぐ。そして我がナガン王国が"ダチョウ"によって滅ぼされないように、彼らの依頼主であるヒード王国がこちらを攻められないような状況を作るべきだ。それも早急に。"ダチョウ"が動けば、我らは死ぬ。)
そのために、アランさんに"伝達の遅延"をお願いした。こちらが侵攻したのは紛れもない事実。それが王都へ伝わるより前にこちらが行動を起こし、策を成立させねばならない。他の諜報員にも指示を出した、限界まで妨害して、長くて二週間。その間に整えなければならない。
数か月の猶予があれば他国に忍ばせた間諜をうまく使い、ヒード王国への包囲網を作れたかもしれないが、それでも"ダチョウ"たちがこっちに向かってくれば死ぬ。今ですらいつ動き出すか、爆発するか解らない爆弾だ。早急に『絶対にこちらを攻められない』方法をとるしかない。
(狙うのは最低でも、不可侵条約の締結。最高で軍事同盟。『過去の諍いは全て忘れて』の文面も忘れずに。……我ながら卑怯な手で嫌になりますね。)
事態が発覚した瞬間、必ず我が王国は恨まれる。しかしながら一度条約を結び、周辺諸国に宣言してしまえばその期間内に於いて攻められることはないと言える。我々が先に攻撃したことは確かだが、周りから見ればヒードが勝手に条約を無視したようにしか見えない。もしそのことについて追及されても、国のために戦った彼らには本当に申し訳ないが『一部の独断』という風にし、謝罪し簡単な金銭による賠償を行えば何とかなる。
我が国と同じように複数の国家に囲まれているヒード王国、もし彼らが条約を無視した場合。周辺国から『契約を守らない国』として見られ、大義名分を得たその国家たちによって袋叩きに遭うだろう。戦乱の世において、弱みをさらすとはそう言うことだ。つまり成立さえすれば、国が破壊されるという最悪の事態は避けられるはず。
単純な停戦交渉ではいけない、相手に場を動かす権利を与えてしまう。交渉の場に座ってもらえなかった瞬間、我が国はダチョウに滅ぼされる。故に、最低でも不可侵。そしてもし可能であれば、ダチョウのことについてよく知るため、軍事同盟を狙う。
(メリットは我々が"ダチョウ"に攻められないこと、デメリットはヒード王国にこれ以上ないほどに恨まれる可能性があること。)
だが、考える限り我が国が生き残る方法はこれしかないと思う。まだ、『傭兵団が勝手に動き、我が国へと侵攻してきた場合』というのがあるがもうその時は白旗を振って頭を垂れるしかない。私の首一つでなんとかなればいいのだが……。まぁ無理だろう、その時はもうあきらめるしかない。
「と、とにかく今できることをすべきですね。王に許可を頂かなければ……。」
今回の最上である、軍事同盟まで結ぶことが出来れば"ダチョウ"たちをこの目で見る機会があるかもしれない。もしその軍事同盟中に、ヒード王国が他国に攻め込まれた場合、救援を出せば関係改善も狙える。"軍師"として、やるべきことをしなければ……。
〇ダチョウの水浴び
元々のダチョウが泳げるのと同じように、ダチョウ獣人ちゃんも泳ぐことが可能。彼らのリーダーであるレイスが綺麗好きというか、身だしなみに気を付けるタイプであったため、定期的に水浴びをしていた。そのため群れにいるダチョウたちは水への抵抗はないし、むしろリーダーと一緒に遊べる機会なのでかなり好きなようだ。
ただ、高原の川は時たま例の"ビクビク"級の魔物がいたり、ダチョウと同レベルの魔物が水を飲みに来ているのでかなりの注意が必要である。他の群れが水を飲みに来ていたりすることもあるので群れが増えるタイミングでもあるが、大幅に減る可能性も秘めていたため気軽に水浴びしに行くのは難しかった様子。故に何もいない上に、沢山魚が泳いでいる町近くの川は本当に過ごしやすくてよかったようだ。
因みに使用した石鹸は自然に負荷を与えない素材由来のものだったそうなので、安心安全。ただ食べると苦くてまずく、変な後味がするようだ。泡が魅力的であっても、食べないことをお勧めする。(群れのダチョウの証言・超意訳)
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