第166話 効果測定
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旧式の囮艦艇を使うこと。
これは今回の作戦において涼井がもっとも重要視していた作戦のひとつだった。
まずかき集めたのは、以前、大増産した急造戦艦のアテナ級や旧式の重巡洋艦の類だった。
「いや幕僚長は本当にこういう下準備を丁寧にするのはいいんですが、初老の身にはつらいですぞ」とバークはやれやれとガランとした統合幕僚本部の来客用ソファにもたれかかった。
かきあつめた1万隻を超えるこの艦艇は、数百隻づつ共和国の工場に分散されて工事を受けた。
「これが大変なんですよ、とりあえず最低限の乗組員で操艦できるように、といっても部品をとっぱらうほうが手間がかかるので、隔壁をいくつか外して、これまたかきあつめた重流体金属を充填しましてな」
「それで?」
その人物は少しイライラしたようにバークに語りかける。
「あとはシンプルな前進、後退ができるようにしたのと、できるだけ人員はすぐに脱出できるようにしたくらいですな……もっとも相手の攻撃をまともに受ける以上、まったく損害皆無とはいかんでしょうなぁ」
バークは左手で自分の右肩をつかんでゴキリと鳴らした。
「……統合幕僚本部がこんなにガランとしているのは?」
「そりゃあ……統合幕僚長のスズハル閣下自ら前線近くまで行くのもあって、幕僚本部のスタッフも開拓宙域で臨時の事務所を開設しているからですな」
「あなたは何故残っているの?」
「スズハル閣下の全権代理として政治やら行政やらとの調整がありますからな……あぁーアルコールがほしい」
バークはため息をついた。
その人物はぷるぷると震えた後、冷静さを取り戻したようだった。
「つまりこういう外交的訪問に対する応接も含まれているということですね?」
「はい、仰る通りです。スタッフがいないので老骨によるお出迎えのみで恐縮ですが……もし前線に向かうなら第4次輸送隊が出発するのでご同行されますか?」
彼女は銀色の瞳をぎらりときらめかせた。
「方法は?」
「応接設備を持った我が国の海軍の宇宙艦艇が護衛につきます。帝国艦との親善訓練の予定もあるとかないとか」
「ふ……」
彼女……アルファ帝国皇帝リリザはニヤリ、としか表現のしようのない笑顔を浮かべた。
「バーク統括官……噂通り仕事ができる人ね」
「恐れ入ります」
「ではさっそく向かうわ……共同作戦を打診しておきながら一人だけ隣の銀河の連中を迎撃にむかったスズハルの顔を拝みにね」
外交儀礼のためのほっそりとしたドレスに身を固めた彼女はさっと護衛の帝国兵に指示を出して踵を返した。
前線に大量の弾薬、リアクト機関のための推進剤、さらに前線のための整備工場建設のための資材を積んだ第四次輸送隊は共和国の惑星ゼウス、軍需工場の集積地帯であるポセイドン宙域、ハデス・ヘラ宙域などから分進して合流する計画だった。
開拓宙域との境界付近にはすでに8000隻近い輸送船団が集合していた。
「これはものすごいわね」
深紅の帝国軍の戦艦「ヴァイン改」はゆっくりと集合しつつある共和国の補給船団に接近した。彼女は電撃的な外交的訪問を共和国に対して実施したが肝心のスズハルがいなかったことを知ってこちらに向かったのだった。
いまここに集まっている補給艦の中でも最新型に属する3型補給艦はスズハルが是非にと建造計画を推進していた補給艦で、工作機械を備え、共和国艦としては空母に次ぐ650m級の大型だ。艦のちょっとした整備や補修も可能で、このあたりは海賊船の工作船を模倣したのでは、という噂もあるが真偽のほどは定かではない。
3型補給艦は多少の護衛火器を備えてはいるが、基本的には巡洋艦隊などの警備がつく。
今次作戦では、涼井は補給を重要視していた。
共和国から遠く離れた開拓宙域で未知の相手と戦う以上、十分な艦艇を揃えるだけではなく統合幕僚本部や司令部の開拓宙域への進出を行ったのもそのためだ。
通常、艦隊の補給船団は1個艦隊につき500隻。
しかし涼井はそれとは別枠で1船団8000隻の補給船団を準備した。
そして、それは前線に涼井たちがいる時、補給しつつある補給船団A、補給を終えて共和国に向かう補給船団B、いままさに準備中の補給船団C、そして前線に向かう補給船団Dと、少なくとも4つの補給船団が同時に稼働するようにした。
補給艦だけで数万隻の大規模輸送作戦だ。
これがあるのでリシャールたちは思う存分、質量弾の残量を気にすることなく撃つことができるのだ。
しかし、その当の涼井は苦い表情でメインモニタに映し出される戦況を見つめていた。思ったよりもニヴルヘイム銀河の攻撃が苛烈で囮艦隊にも想像以上の被害が出たためだ。
「よし、第二フェーズに踏み切ろう、武装短艇隊を出す」
涼井はそう宣言した。
各空母に搭載された武装短艇が次々に発艦を始めたのはそれからわずか数分後だった。
またまた久々の更新になってしまいました。
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