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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第二章 騎士と姫

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犬に噛まれようともクルーザーで接待するしかない

「これはビーチバレーというスポーツで遊びだよ。簡単だし、楽しいからやってみない?」


「ほう、面白そうじゃな。わらわはやるぞ!」


 ドリスは遊びに食いつく。

 俺はバレーのルールを教えて、模範プレーを見せるとすぐに覚えた。


 ドリスは頭も勘も良く、亜人なので運動神経は悪くない。


 試合前、俺はエルフ達に目配せによる合図をした。


「アタックなのじゃー!」


 ドリスのスパイクが次々と決まる。

 対戦チームは俺の意をくんで手加減してくれていた。


 みんな、忖度そんたくしてくれてありがとう。

 なんの便宜べんぎも図れないけどね。


 八百長のおかげで、ドリスの機嫌はかなり良くなっている。

 そのまま夕方までビーチバレーをした。接待はまだ続ける。


「あー楽しかったのう。しかし、えらく汗をかいてしまった」


「それでドリス。クルーザーで風呂に入らないか? あとご馳走もしたい」


「クルーザー? そこは泊まれる場所かえ?」


「ああ、俺が住んでる船だ。そこでおもてなししたい」


「……いきなり初夜か……もともとそれが目的じゃし……わらわも覚悟を決めねばならんか。よし一晩世話になるとしよう」


「歓迎するよ。こっちだ」


 一瞬、ドリスが動揺したように見えたのは気のせいか?

 やましい事をする気はないが、勘違いされたかもしれん。


 俺は先頭に立ち、ドリスは犬達を引き連れてついてくる。


 クルーザーにつくと、なぜか犬たちが吠え出す。


「やめい! ヨーゼフ、パトラッシュ!」


「お腹が空いてるんじゃないかな? ちょっと待っててくれ」


 ボールにエサを入れて出すと大人しくなり、ガツガツと食った。

 こうして犬達は俺にもなついてくれる。


 じゃれつかれて甘噛みされるが……かなり痛いのは気のせいか……?


 やっぱ痛てーよ! この犬どもめー!


 ドリスの手前、噛まれていても表面上は仲良くするしかなかった。


 ようやく犬達から離れて、船の中をドリスに案内する。

 フローラの時と同様に、機器を使って見せると――


「なんじゃー! こりゃー!」


 機械を見てドリスは大いに驚いた。初めて見るから無理もない。

 風呂と料理にも満足してくれたようで、借金交渉の下準備は完了だ。


 あとは話を切り出すタイミングが問題。

 バスローブを着ているドリスと、俺は雑談をしていた。


「へー、鉱山の近くに温泉があるんだ?」


「うむ、じゃぐじーとやらも良かったが、温泉は体によい」


「分かる。日本じゃ近くにあったから、穴場をタダで利用していた。久々に温泉に入りたいな」


「ならばドワーフの村にくるとよい。わらわの元で働いて、鉄の代金を払ってもらおう。ただ重労働はさせん……夜の生活もあるでの」


「う……」


 やはり誤魔化しはきかない。ドリスはしっかりしており、俺は強制労働に連れていかれそうだ。

 あと、何やら不穏なことを言ってたような……これは何としても避けたいとこだ。


「と、ところで、鉄の採掘ってやはり大変なの?」


「うむ、掘るのも運び出すのも手間じゃ、ノームに木車で外に運ばせてる。製鉄するのにも時間がかかる」


「あれ? トロッコとかは使わないの?」


「なんじゃそれは?」


「知らないか……とすると」


 俺は気づいた。おのれの肉体と精霊が動力だから機械が存在しないのだ。

 現状に反発する異端者がいなければ、発明も生まれない。


 となれば、現代技術をもたらせばかなり楽になるはず。

 俺はノートパソコンを立ち上げて、百科事典で検索する。


「この薄い板も機械とやらか、すごいのう」


「これがトロッコだよ。レールの上を走らせる貨車だ」


「なんと!?」


「手押しトロッコでもいいし、ジェットコースターのように山や谷を作れば、動力なしでも鉄を外に運べるよ」


 動画を見せると、ドリスは目を丸くしていた。


「これさえあれば、皆の苦労が減る!」


「それと、俺としてはコレも作ってみたいんだ」


 ある機械を見せると、ドリスは声を失った。よしあともう一押し!


「それで機械ができたら、借金を帳消しにしてほしいんだけどー……」


「これが動くようになったら、逆に支払いをせねばならぬ」


「いやいや俺一人じゃ作れないから、お互いに協力して進めよう。リンダや他の部族の力もいる」


「そうじゃな、そうしよう。それで鉄の対価は十分じゃ」


 話はまとまった。俺達は朝まで語り合う。

 眠くなったところで、ドリスは騒いだ。


「しまったー! 子づ……するのを忘れとった……」


「何を?」と聞く前に俺のまぶたは落ちた。二人で寝落ちしてしまう。

 昼になって目を覚まし、俺は旅支度を始めた。


 このドリスとの出会いが、へスペリスに工業革命を起こすこととなる。

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