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104/105

#104 犬神の正体

※クロエ視点※


「……ガルゥ」


 みんなが乗ってきた船の甲板で横になっていたボクは、ルルリラの気配が消失したのを感じ取り、顔を上げる。


 まさか……なにかあった?

 そのせいなのか、レオンから発せられる魔力と気配も、毛色が変わった気がした。


 これは――激しい怒り。

 燃え上がるような怒りが、レオンの身体中を暴れまわっているのがわかる。


 ……あのままじゃ、いけない。

 またレオンが、一人で背負おうとしている。


 レオンの魂には、危険な魔法が刻み込まれている。

 彼の魂を近くで観察し続けることで、ボクはそれを知った。


 犬神――アヌビス神であるボクには、感じ取れる。

 アヌビス神には、魂に干渉する力があるから。


 レオンはあの魔法を使って、この戦いを終わらせる気だ。


 ボクは起き上がってすぐに走り出す。

 レオンの魂を、消しちゃいけない。


「ガァウ!!」

「クロエさん!? 大丈夫なんですか!?」

「クロエ!? どうしたの!?」


 レオンの元へ向かう道中、アリアナやシェリとすれ違う。

 一瞬、人型に変身して言葉を交わす。


「レオンが危ない! みんなの力を貸して!」


 ボクが叫ぶと、アリアナとシェリは黙って頷いてくれた。

 その後、すぐに周囲の皆へ声をかけてくれる。


 ありがとう、アリアナ、シェリ……!


「ガルゥゥ!!」


 変身し、駆け抜けながらアヌビス神の力を開放させていく。

 すれ違うみんなから、少しずつ“魂”を分け与えてもらう。

 

 ボク自身はまだまだ未熟だけど、レオンと一緒にここまで来たことで、ようやくアヌビス神としての力――『魂の天秤』、いわば魂へ干渉する力を習得できた。


 これを使えば、レオンの魂に、鎖のようにずっと絡みついている恐ろしい魔法『シャングリラ・ディストラクション』から、彼を救い出すことができる。


 あれをずっと、なんとかしなくちゃと思っていた。アレがあり続ける限り、レオンに平穏な人生はやってこないと思ったから。


 シャングリラ・ディストラクションは、魔力で発動するのではなく、魂を爆裂させ、術者自身を爆弾と化す凶悪な魔法。

 あれを使用した途端、レオンは魂ごと消えてなくなってしまう。だから、蘇生魔法などでも決して生き返らせることができなくなる。


 これをなんとかするには、レオンの魂に干渉し、完全消失するのを防ぐしかない。

 でも、あの魔法によってギドラを倒すとしたら、効果を打ち消すわけにもいかない。


 だったら。

 ――ボクのと、みんなから少しずつ分けてもらった“魂”をレオンに注ぎ込んで、魔法分の魂を補完する。


 そうすれば、シャングリラ・ディストラクションの威力を下げることなく、レオンを生かすことができるはず。


 それには、できる限りたくさんの()()()が必要。

 ……みんなが来てくれた今なら、それが実現できるはず!


「ガァルルゥ!!」


 レオンの元へ、ボクは跳ぶ。

 彼を一人にはしない。


 まだお腹が痛んだけれど、止まる訳にはいかない。

 止まれば、レオンがいなくなってしまう。


 レオンと出会わなければ、ボクはそもそも今まで生きてこれなかったんだから。


「クロエ! 大丈夫なの!?」

「上に行くのか?!」


 エンシャントギドラへと近づくと、ユースティナとヴァンが、息絶えたルルリラを抱いて魔法障壁を張ろうとしていた。

 ルルリラは、大丈夫。魂が消えたわけじゃない。

 ユースティナの蘇生魔法で、生き返らせることができるはず。


「あのバカを連れて帰ってきて、クロエ!」

「こっちはオレたちに任せろ!」

「ガウゥゥ!!」


 二人からも力をもらい、ボクはギドラに爪を立て、その巨躯を一気に駆け昇る。


 レオンはいつも一人でカッコつける。

 みんなそれが似合ってないって言って笑ってる。


 でもそういうところも含めて、レオンはみんなの真ん中にいる。

 もっとボクらに頼っていいし、みんなレオンに頼られたいんだ。


 だからボクが今こそ、みんなを代表してレオンにそれを教えてあげるんだ。


『『『ま、まさかテメェ、自爆する気か?!』』』

「そのまさかだ。消し飛べ」

『『『や、やめろぉぉ、やめろぉぉぉぉ!! 冗談じゃ――』』』


 少し上空で、レオンと魔王がやり合っている声が聞こえた。

 やっぱり、自爆する気だ。


 急げ、間に合え――絶対に、レオンを助けなくちゃ!


「――『シャングリラ・ディストラクション』」

「ガルルォォン!!」


 ボクは、アヌビス神としての今持てる力を、全て解き放った。


 魂の天秤――皆の魂の断片をまとい、レオンの元へと跳躍した。


『『『だァ、だだ誰か、た助け――――!?』』』

「「「ギギャアアアアアアアア――――」」」


 真っ白な光の中で、ボクはエンシャントギドラと魔王の、最後の悲鳴を聞いた。




貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

次話『#105』で最終話となる予定です(もしかしたら終われないかも……?)。


最後までお付き合いいただけますと幸いです!

よろしくお願いします!

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