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ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


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全知全能と人探し

 学校から帰って来た僕はふぅと息を吐き、ベッドに座り込んだ。


「ふぁ……疲れた」


 あの後、筋トレについて調べ終えた僕は裏世界に赴き、スイや他の木人、ソラと交流した後に帰って来た。本当はもう一回くらい異世界に行きたかったのだが、もう時間が遅くなっていたので諦めた。というのも、そろそろレティシアに会ってお金を返したいのである。


 あ、でも利子付けて返せなんて言ってたっけ。冗談交じりの言葉だった気がするけど、そっくりそのまま返すというのも誠意が無い気はする。一応、お金に余裕はあるし色を付けて返すくらいなら全然出来るけど……レティシアはお金持ちだろうし、折角なら別の恩の返し方が望ましいよね。


「……そうだ。一日一善も出来てないや」


 一応、昨日はナーシャに魔術を教えたのが一善と言えなくも無いけど、アレも別に元から約束してただけのことだしね。


 うん、気合い入れて生きないとね。生き甲斐が無いや。


 何にしても、レティシアの言う利子は考えないといけない。何が喜ぶかなぁ。やっぱり、冒険者だし武器とかが良いかな? でも、メインの武器は既に優秀な奴を使ってる筈だよね。今更別のを渡されても、逆に困っちゃうかも知れない。だったら、良い感じのナイフとか、特殊効果のある指輪とか……あ、そうだ。


「これで良いでしょ」


 僕はにやりと笑い、頭の中にそれを思い浮かべた。これならきっと、貰って困ることも無いし、嬉しくもある筈だ。






 ♦




 何度目かも忘れた異世界。宿屋のおじさんに挨拶をして、こちらをチラリと見ていたリリアちゃんに手を振って僕は宿を出た。


 しかし、こうして異世界の街の中を歩くとやっぱり新鮮さというか、不思議な清涼感のようなものがある。歩いているだけでも心地良くて、だけどちょっと落ち着かないような、そんな感じだ。


「うーん……」


 ただ、僕はレティシアの居場所を知っている訳では無かった。彼女を見つけ出す為の画期的な方法も思いつかない。全知全能に聞いても良いけど、折角なら冒険ついでにちゃんと探してみたいよね。


 ギルド、行ってみようかな。見つかりそうな気配が無かったら、適当に依頼でも受けたって良い。もしかしたら、今日は忙しいって可能性もあるしね。冒険者なら、護衛依頼とかで一時的に街を離れてたりなんかも有り得る話だし。



 という訳で、ギルドに辿り着いた僕だけど、誰に話しかけようかと迷っている内に、寧ろ先に話しかけられてしまった。


「やぁ、治。何をキョロキョロしてるんだい。もしかして、人を探してるのかな?」


「あ、うん。そうだけど……」


 そこに立っていたのは青みがかった美しい黒髪の美少年、アシラだった。


「アシラ、日曜、稲の日はごめんね。てっきり、あれだけ収穫があったから活動は無いものかと思ってて」


 僕が言うと、アシラは首を振った。


「いや、大丈夫だよ。探しはしていたけどね。もし君が居たら狩りでもしようと考えていただけさ。それに、前回の狩りで……君に頼り過ぎることは、パーティの毒になるとも考えていた」


「毒?」


 僕がそのまま聞き返すと、アシラは頷いた。


「そう。だけど、君が悪いと言ってる訳じゃないよ。ただ……甘えすぎると、寧ろ力が衰えかねないと、自分を戒めていただけの話さ」


「あー……どうも?」


 僕が言うと、アシラはふっと笑った。


「すまないね。君に直接話すようなことじゃ無かった。さて、それで人探しをしてるんだったかな」


「うん。レティシアって分かるかな?」


「勿論だよ。この街に住んでいて、彼女のことを知らない人間なんてのは居ないんじゃないかな」


「あはは、やっぱりそんな感じなんだね」


 流石はレティシアだ。って言うほど、僕は彼女のことに詳しくは無いけれど。


「君の師匠、何だったかな?」


「へ?」


 僕が素っ頓狂な表情をすると、アシラは意外そうに首を傾げた。


「あれ、違うのかい?」


「え、うん。違うけど。まぁ、ある意味で人生の師匠とも言えなくは無いけど……」


 この街というか、この世界における生き方とかを知れたのはレティシアのお陰な部分も大いにある。彼女が居なければ、今も色々と大変だったかも知れない。


「レティシアは、迷子の僕をこの街に連れて来てくれた存在みたいな感じだよ」


 周りでどんな風に伝わってるのかは知らないけど、事実はそれだけだ。あ、いや、お金を貸してくれたりとかの恩もあるけど。


「……君は、本当にどこから来たんだ」


 アシラはどこか呆れたように溜息を吐いていた。


「遠くからだよ」


「……そうかい。まぁ、それでも良いよ。兎に角、レティシアさんがどこに居るかを知りたいんだったね?」


 僕が頷くと、アシラは小さく手招いた。


「付いて来ると良い」


「え、知ってるの?」


 アシラは歩き出しながら、首を振った。


「いいや、ウィーに聞きに行く」


「あ、自分が知ってる訳じゃないんだね……」


 僕が呟くと、アシラは物言いたげに一瞬固まったが、何も言うことなくまた歩き出した。

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