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「排除……とはまた物騒な物言いだな」

「そうですか? ただの事実を語っただけですが」


 どうやらアヴァーチェはプライムの言葉に賛同しかねるようだ。それはアヴァーチェが本当の協会の姿を知らないからだろう。まあけどそれならばプライムはどうなんだってことだが……これまでのプライムの言動から、プライムは協会にいい印象は持ってない。それはアヴァーチェとは正反対だ。

 こんな子供が明確に他者を評価する――なんてことは普通はないと思う。なにせ幼い子供には他者を判断するだけの経験がないからだ。普通は。それにそういう思考だって育ってないだろう。三歳児なら特にそうだと思う。

 けどプライムは普通の三歳児ではない。それはこれまでの言動でよくわかってる。まあ普通に考えたら親と強制的に離れさせられたら、子供としてはいい思いはしないとは思う。

 でもそこから、アヴァーチェくらいまでには教育を完成させてるということでもあるのかも。さすがに三歳児にいきなり教育的なものはしてないみたいだし……いや一応刷り込み的なものはしてそうだが、プライムは例外的にただの子供じゃなかったからな。


 でもプライムも今のアヴァーチェの歳まで教会で教育をされてたら、どうなってたのかは正直わからないよな。目の前の兄のようになってしまってたのかもしれない。


「事実など、お前はしらないだろう! 協会がそんな事をするはずがない」

「ではどうしてその記述がないのですか?」

「それは……書く必要がなかったから」

「立派な事をしたのだといいませんでしたっけ? けどそういえば、最初に簒奪者とも言いましたね。矛盾してませんか?」

「ほら……あれだ。確かに最初は神父は魔法の知恵を無断で市中に広めたが、制御できなくなって恐ろしくなったから再び協会を頼った。それを協会は快く引き受けて、混乱する市中に『血浄』という手段を残して収めたのだ!」

「それが事実だと?」

「ああ、そういう状況が目を閉じれば見えてくるようじゃないか! きっとそうに違いない!!」


 やばいなこいつ。洗脳ここに極まれり……という感じになってるぞ。確かにプライムの言ったことも妄想ではあった。だから真実ではないし、そうかもしれないという程度だと自分でだって思ってはいたはずだ。

 けどそれでも色々と考察した結果ではあると思う。その資料から魔法を広めた神父の名前や後世の協会からはその存在が抹消されてたりするから、それを考えての考察だろう。


 けど……アヴァーチェのこれはそうじゃない。はっきり言えば、妄想と言えるレベルだ。自分の信じたい虚像を作り出し、そしてそれを正しいんだと叫ぶ。

 自分が信じるものが壊されるのは誰だって怖いから……だから奇麗なものにしたいと人は思う。それがうれしいし、そして正当性を得れるからだ。

 もっと簡単にいえば、楽だからだ。信じたものが信じた通りのものなら、人は楽なんだ。安心するんだ。それにアヴァーチェは幼い時から協会から教育されてるいわばサラブレッド。

 ようは協会の考えを刷り込まれてるといっていい。つまりは協会を否定することは自分のアイデンティティを否定することになりかねない。そんなのは簡単には認められない。大人にだって難しいだろう。それを十歳程度の少年に求めるのは酷だろう。


 でも……それでも……彼の弟は躊躇しないらしい。

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