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 幼い王子様『プライム』を肩に乗せて俺は近くのもう少し年齢層高めのエリアへと向かってた。プライムは本当はもっと複雑で長い名前なわけだけど、なんか愛称で呼んでいいと言われた。


「それにしても……本当に貴方はすごいですね」

「そうですか?」


 多分だけど、堂々と廊下の真ん中とか歩いてるのを言ってるんだと思う。さっきから何人かの協会の奴らにすれ違ってるが、俺はもちろんプライムだって見つかることはない。

 案外ここのセキュリティはガバガバなんでは? と俺は思ってきてるがな。まあ俺がここに侵入してまだ5分も実は経ってないかもしれないが、人間が積み上げられてるのは結構なインパクトだと思うんだが?

 それに結構目立つところに置いてきたはずだ。なのに5分も経ってもはっきり言ってこの中央協会が慌ただしくしてる様子は全くないんだよな。


(もしかしたら、魔法での侵入者の検知に絶対の自信があって、慢心してるのかも知れない。そもそもが大人たちが被ってるのあのローブってどうやって外を見てるかわかんないしな)


 別に穴が空いてるわけではないのは確認してる。多分魔法的な何かで見てるんだろうけど、そもそもが見えてないとしたら……あの積み上げてる協会関係者は実は気づかれないという可能性がある。


 あんまり楽観論は考えたくないんだが、でも結構有り得そうなんだよな。

 5分も経てば、あの中庭を通る奴はいると思う。でも誰も気づいてない。


「ええ、ここまで堂々としてて誰も私たちに気づかないんですから」


 もしかしたらこの子供たちを相手にしてる大人なら、あの中庭に積み上げた人の山に気づくことができたかも知れない。なにせここの人たちは普通に顔を出してるから。

 多分、あんな変な格好では泣き出す子供とかがいるから……だと思う。プライムと話してると失念するが、三歳児はもっと感情に素直だし、十歳以下の子供たちは感受性が豊かだろうから、あんな怖い見た目ではまともに接することはできないだろう。


 だからここら辺の大人たちは格好が違うんだと思う。


「ですが、ここから逃げるのはどうするのです? 流石に三人も担ぐなんてことは……兄上も姉上も私よりもずっと大きいですよ」

「まあ子供を三人程度、担ぐことはわけないですけど……両手使えなくなるのは困りますからね。お兄さんとお姉さんにはちゃんと歩いてもらいますよ」

「他者にもちゃんとこの魔法付与できるんですね」

「ええ、なので心配しないでください」

「わかりました。ですが……なら問題は兄上と姉上の方かも知れません」

「どういうことですか?」


 問題はこの子の兄と姉になるって……それは一体……一番問題だと思ってたプライムがあっさりと聞き分けてくれたから、あとはもう簡単だと思ってたんだが?


「お二人は私よりも長く協会に保護……いいえ、拉致されてます。その間ずっと教育されてるんです。洗脳という教育を……」

「そういうことか」


 王様や王妃様は子供たちは変わってないとか言ってたが、どうやらそんなことはなかったらしい。いや、考えれば当たり前だ。

 赤子の内から取り上げて、協会によって都合よく教育すれば、都合のいい傀儡を楽に作ることができる。そもそもがそのためにも王様や王妃様から取り上げてるんだろうしな。


「なら、接触するのはまずい?」

「けど、私も兄上や姉上がこのまま協会の傀儡になってるのは心痛ましいです。勇者様、どうか……二人を救ってください」


 そう言って幼いプライムが頭を下げる。こんな三歳児にここままで言われて、その願いを跳ね除けるなんて、勇者のすることではないだろう。


「任せてください」


 俺はそう言って歩みを早めた。

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