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「大丈夫なのですか?」

「一応大丈夫なはずです。それにまだピローネは使えるはずです。協会はこんな幼い子供にまで、こんなことをしてるんですよ? 酷いと思いませんか?」

「なるほどなるほど。確かにそれは酷いですな」


 俺が言いたいことを王様はわかってくれたらしい。民衆の支持が厚いことが協会が強い理由でもあるからな。まずは絶対的な信頼がある協会に明確なヒビを入れる為にもピローネという存在は使うことができる。

 なにせピローネはただの子供だったんだ。いや、ただの……というのは違うか。なにせ神託の巫女だったし。でもそういう存在さえも、協会はこんな仕打ちにする……それを民衆に知らしめることができれば、長年かけて築き上げてきた協会の信頼を揺るがすことくらいはできるだろう。


「やはり向かうとなると『アズバインバカラ』でしょうか?」

「勇者様が信じてるラパンは我ら王族に長く忠誠を示してくれております。それに今一番勢いがあるのも確かですからね。

 彼には迷惑をかけることになりますが……」


 確かに王族がやってくるなんてなったら下手なおもてなしなんてできないよな。でも、別にこの移動は大々的なことではない。むしろ秘密裏にやるわけで……ならあんまり歓迎するのもどうかという気はする。


 まあ最低限、身内でおもてなしくらいはしないとダメだとは思うが。とりあえず目指すはアズバインバカラで決まりだな。

 寧ろ、俺的にはそれ以外の選択肢がない。だって他のところなんて知らないし。ジャルバジャルは最近復興してるが、流石にまだまだ何もないあんな場所に王族を迎えることなんて無理だろう。

 他の街もまだあるにはあるんだろうが、状況がどうなってるのか……わからないからな。なら一番信頼と安心できるのはアズバインバカラだということになる。


「どのくらいで準備はできるんですか?」

「急げば今夜までに終わらせて、明日には」


 宵がなければ、夜逃げみたいに夜を利用して中央を脱出することも考えることができた。けど、この世界には宵があって、その間は全ての人が強制的に眠る。そうなると移動なんてできない。そもそも街以外の場所は崩壊してそして再生をしてるという状況だからな。そして宵の怪物の存在。俺や魔王でも下手に宵に街の外に出るのは危なくらいだ。

 だからこそ、朝とかになるか。実際、一日で準備を終えてくれるというのならありがたいとは思う。中央に来て慌ただしいことこの上ないが、ここまで王家と協会の力の差があると……な。拮抗してるんなら、ここで王家の側に立って協力もできたが、彼らには中央での地盤がそもそもないときた。

 なら、ここにいること自体が危ない。でも王家の立場はまだ権威はあるわけで、それを後ろ盾にアズバインバカラが立ち上がれば、一応の正当性ってやつを持たせられるかもしれない。


 そして協会の悪事を暴いて、その信頼を傷つければ、こっちに傾く陣営だってあるかもしれないし。実際、ピローネのことだけでは弱いよな。なんかこう、決定的な証拠が欲しい。


「あなた、あの子は……」

「仕方がないだろう。これも王家に生まれた運命。受け入れてもらうしかない」


 何やら王様と王妃様が話してる。何かと俺は聞いてみる。


「実は私たちには子供いるのですが、その子達は協会の方に……」


 王妃様が悲しげにそういう。その表情から、それは望んでしたことじゃないとわかる。それって……つまり……


「人質にされてるってことですか?」


 その俺の言葉に二人はうなづいた。本当にどれだけクソなんだ協会って。

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