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 魔王は先代魔王から全てを受け取った様だ。それからの魔王は、今までの野生児ではいられなかった。魔王の知識、歴史、力……そして責任、使命……そういうのを魔王は理解したんだ。それから魔王は魔王となった。そして宿敵の勇者が誕生するまで待つことになった。

 あの野生児の魔王が勇者を待つ……信じられない事だ。でも今の魔王は襲ってきた奴をただぶっ殺しその血肉を食らう奴では既にないんだよね。まあそれでも待つ意味は? と思うが、魔王の歴史に、責任に、そして使命にその答えがあるんだろう。


 私はいきなり場面か変わるからどのくらい待ったのかはわからない。案外早かったのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。けど、次の場面はあの勇者が魔王の前に仲間達と共に現れた場面だった。


(これって、私が目覚めるちょっと前の感じ?)


 私が目覚めたとき、既に魔王と勇者は最終戦闘してた。そこに勇者の仲間はいなかったから、これはきっとあのちょっと前。


「魔王!! 貴様を討つ!!」


 その勇者の言葉に魔王はニヤリと笑った。そう心から……それが私にはわかった。




「はっ!! ――はれ?」


 周囲を見ると、まだ見慣れたとは言えない機械とモニターがある。モニターには石となった魔王の姿がある。


「戻ってきたんだ」


 どういう基準で戻されたのかわからない。けどまあ楽しい物を見たとは思う。戻ってきたら実は魔王が復活してる。とか思ったが、やっぱりだけど、現実はそんなに都合よくは行かないらしい。過去を見れたんだし、それってつまりはこの目の力を私は使ってる? 受け取ってる? と言えるとは思う。ならそれをもっと操れる様になれば、二人を元に戻せると思う。


ニヤリ……


「これは仕方ない。二人を助けるためにはもっとこのアビスの目玉の力をしる必要があるからね。だからこれはプライバシーの侵害とか……そんなんじゃないんだよ」


 誰に言い訳してる訳でもないんだけど、なんかそんな独り言をつぶやいてしまう。とりあえず今回は魔王を満たし、次は勇者だろう。今の流れを見るに、きっと魔王と同じ場面までは見れるんじゃないかな? そう思って再び目を抱えようとすると目がホロリと崩れだした。


「ええ……」


 取り出した目玉はそれなりに頑丈だったんだけどな……


「力を使い果たしたとか?」


 それくらいしか心当たりがない。まあけど問題はないか。なにせまだあるし。――と言うわけで、別の目玉を勇者の前に持って行く。


「今度はもっと解析するぞ」


 そう気合いを入れる。目玉の視界に勇者をいれると再び熱くなってきた。私にそれに集中して――


「おらーいくぞーー!」


 そう言って目の前の子供追いかける。周囲には他にも四・五人の子供達がみえる。どうやら鬼ごっこしてる?


(え? ちょっと入るのがナチュラル過ぎて何も出来てないんですけど!? そっち上手くなっちゃってるじゃん!!)


 私は嘆いた。

これで今年最後の投稿です。次回は明日あげますね。来年もよろしくお願いします。ではではよいお年を。

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