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「そうか……」

「そうだ、おとなしく食われてろ……食われテロ……食われ……」

「ごめんだが、おとなしく食われる気はない」

「なにが何がなにがナニがなにがなにがなにがなにが――」


 めっちゃヘドロからできた人型の何かが言ってる。しかもその「なにが」を言うたびに実は口がふえていた。そしてどんどんと増えた口はそれを言うと地面に落ちて砕け散る……奴は既に俺は動けないとおもってるんだろう。

 体を縛る茨から入ってくる何かは既に俺の全身を赤く染めてる。この状態なら、もうほぼ奴は全てを支配してるんじゃないだろうか? それをやつもきっとわかってる。だからだろう、奴は終始余裕がある。


 何を言ってるのかわからないが、ただ淡々と気持ち悪い言葉を紡ぐって感じでね。


「なにができる、何もできない。食事の準備は整った。食わせろ、食われろ、いただきま――す」


 そういうと、奴はヘドロへと戻った。そしてそのヘドロが俺の足元へとくる。それはうごめきつつ、地面が俺を飲み込むかのように、体が沈みだす。奴が俺を包み込むとかじゃなく、俺が奴の中へと落ちていくらしい。でも俺はこれをまっていた。


「うぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!」


 ヘドロは吹き飛び、俺の存在は再び地を踏みしてる。


「ようやく、お前の存在をちゃんと認識できたな」

「どうして? どうやって……なにをなにをなにをなにを!!」


 ヘドロが一斉に周囲四方八方から迫ってくる。俺は茨の拘束を振りほどき、まずは正面のヘドロに一瞬で近寄って腕を刺した。でも優しくさしてやったから吹き飛ぶことはなかった。だがその俺が腕をさしたヘドロはどんどんと硬質化して俺の腕を埋めていく。


「俺の!? 体が!!」

「体? お前は実態がない存在だろ? 体なんて概念はないんだと思ってたよ」


 俺はパキッと硬質化したヘドロから腕を引き抜く。


「なにを……何をした? ここは俺の場所だ。お前には何も……何もできない」

「それは間違いだ。ここは俺の精神世界でもある。ならもともとの支配者は俺だ。お前は部外者でしかない。俺の精神に入ってきたことを後悔させてやるよ」

「無力な人間……ここでは何も、何もできるはずがない」


 どこからともなく、茨が空間を覆いつくすほどに現れて、俺を包む。けど……芸がない。ああそっか、俺はいまだに全身を赤く侵食されてる。だからこれが効いてる感じに見えてしまってたのかもしれない。


「ごめんごめん。俺にとってこの姿はただの皮でしかないんだよ」


 俺は茨を拳一つで一掃した。そしてそれと同時に、俺の体は元の色を取り戻してく。


「なぜ、なぜだああああああああああああああああああああああ!!」


 俺になにも効いてなかったと知ったからだろう。ヘドロのような何かが叫ぶ。まあしょうがない。俺の本当の体は人の肉体とはかけ離れてるからな。あんな茨に侵食されるほどにやわじゃないってことだ。


「お前は喧嘩を売る相手を間違えたんだよ」


 俺はそういってやる。

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