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「貴女にはもう、声は聞こえない。そうでしょう?」

「そうね。せいせいするわ。でもそっか……うん……それからだった。家にいた使用人たちの目からやさしさがなくなったのは」

「なるほど……貴女はそういうのには敏感でしたか」

「そのくらい、わかるわよ。だって誰だって送られてくる奴らは私に敬意を払ってたしね。でも……態度は変わらなくてもそのくらい、わかる」

「ふむ、思ったよりも、聡い子だったみたいですね」


 ローワイヤ様と老子がそんなやり取りをしてる。その間にも周囲の中央協会の人たちは一生懸命何やら唱えてる。魔法……というものに疎い私たちではそれが何かはわからない。でもよくはないだろうとはわかる。

 でもなかなかに……ね。どこで動くのか……それは賞金稼ぎの皆さんに任せてる。なにせ私は戦闘経験なんてないし。そんな私がでしゃばるわけにはいかない。けど、ソワソワとはしてしまう。だって結界で守られてる私たちには彼らは何もできないだろう。


 それをきっとよくわかってるはずだ。なら狙うのは一つしかない。それは結界の外にいる勇者様。普段の勇者様なら、何が起きても大丈夫みたいな安心感がある。でも今の勇者様は心配だ。なにせ私たちの声に何も反応してくれないし、さっきから微動だにしてない。


「いずれ、あなた達はその身を捧げて人よりも上の存在にならねばならない。そして新たな世界の柱へと至る……それがあなた達巫女の本当の役目です。

 ですが、それには天の声を聴き続け天の色に染まる必要がある。でも人は罪使い。我らには原罪があるのですよ」

「原罪?」

「ええ、それはとても罪深き罪。だから我らはそれを忘れる。そして天の声を聞き逃す。人は純粋であるほどにその声を聴けるのです。ですが、成長するにつれて余計なものが増えていくでしょう? それが魂を汚していく。そしていつか、声を聴くことはできなくなる。そう貴方のようにですローワイヤ」

「なるほど……ね」


 巫女とはどうやら、その天の声を聴けるまでが巫女であれる条件らしい。でも成長するにしたがって、人は汚れていくから、その声から遠ざかってしまう。そうしてついには聞こえなくなる。


 そうなると、その人に巫女としての価値はなくなる。だから……ローワイヤ様は処分されたってことか。ショックを受けてるだろうか? 私は……いや、みんなどう声をかけていいかわからない。てか私たちの関係性ってうっすいからね。あくまで彼女が見てたのは勇者様だけで、私たちのことって本当に路傍の石同然だったし……だからなんていうこともできないというか……


「ふふ、あははははははははは!!」


 なんか突然ローワイヤ様が笑い出した。ええ? 壊れてしまったの? とか思った。だって夜空に響きわたるくらいに盛大に笑ってる。いつもは上品に、けど意地悪そうに笑うのに……そんな大口開けて空に向かって笑うような人ではない。そんなのするのこの賞金稼ぎの人たちくらい……


「そっか、私はもう、自由ってことね」

「いいえ、貴女には死んでもらわないと困ります。また純粋なローワイヤを作らないといけないですから」


 なんか老子がとんでもないことを言ってさらにその手の中のシンボルをローワイヤ様に向けようとしてくる。それが合図だった。賞金稼ぎの人たちはいつだって戦闘中にけたたましい。けど今回は静かに……けど確実に動き出した。

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