表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
345/1598

254

「わかっていただきましたか? それなら――」

「確かにあなたの言い分はわかりました。けど……だからってローワイヤさんやペニーニャイアン、ピローネを渡す気はありませんよ。すぐにその犠牲の中に入れられても困りますし」

「そうですか。私達がいくら言葉を重ねても、信用には足りないのでしょうね」

「そうですね」


 だっていきなり砂獣出して攻撃してきたからな。そんな奴をいきなり信用なんてできるわけない。


「神託の巫女とは、ローワイヤさんはなんで切られたんですか?」

「ははは、それも全ては太陽へと辿りつくためですよ。そして私たちは言った通り、小を切り捨ててでも、大を救うのです。

 それがたとえ、可愛い育て子だとしても。それだけの覚悟なのですよ」


 体のいいことがぺらぺらと流れるように出てくる奴だ。この老子バンドゥンって奴は。はっきり言ってこれまでの会話で俺はこの人の事、何一つ信用できないと思ってる。別に根拠なんてのはない。ただの勘みたいなものだ。けど、勇者の俺はそういう感覚が鋭いと自負してる。

 いうなれば、言葉の端に乗る感情、悪意や偽弁を感じとれるらしい。


「そうですか。素晴らしいですね。けど……その覚悟に……その犠牲の中に自分を入れることは出来るんですか?」

「はははは、何を言っておりますか? 民衆は……世界はより良い導き手が必要なのです。誰かがみちびかなければ、この世界は業火に燃やし尽くされるでしょう。

 そうならないために、神は私達を選ばれた。なので、私達が犠牲になることはできない。私たちの役目は生きて……そう生き続けて永遠にこの世界に尽くすことなのですよ」


 本当に……とうあってもうまい事着地させてくるなこの老人は。自分たちは絶対に犠牲にならない立場を確立してるけど、それは逃げではなく、この世界の人々のために死なずに戦うという誓いだと……そう言いたいらしい。


 言い換えれば……だけどな。まあもしかしたら、本当にもしかしらそれだけの覚悟と執念があるのかもしれない。生きることも戦いではあるし、こんな世界を本気で導くと覚悟を決めてるんだとしたら、それこそ辛いことは沢山あるだろう。


「いくら言葉を着飾っても、やっぱりまだ出会ったばかりでは本心までは見抜けません。あなたたちが本当にその覚悟を持ってこの世界の人々のために行動をしてるなら、自分は身を引いてもいい」

「勇者様……」


 不安そうなローワイヤさんがそうつぶやいた。結局俺や魔王、ジゼロワン殿は部外者だ。この世界に過度に干渉するのはどうかと思う。けど……


「だから貴方のその身で証明してください」

「それを貴殿が望むのであれば、儂は全身全霊を尽くそう」

「ありがとうございます。なら――」


 俺は聖剣を頭上に持ってきた。浮遊してる聖剣は淡く輝いてる。


「何を?」

「簡単です。この聖剣は邪悪なるものに対して絶大な威力を誇ってます。神聖領域に極限まで振り切れば、邪悪にしか作用しなくなる剣です。

 これで貴方を斬ります。今言ったことがすべて本心なら、きっと傷一つなく生還できるでしょう」


 俺のその言葉にわずかに老子バンドゥンが息を飲むのが分かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ