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 瓦礫から出てる腕には赤い血がこびりついて、その下の方からも実は血が流れてるのが確認できる。はっきり言って、これで生きてるのか? という思いはある。体のいたるところがつぶれてると思えるが、声は確かに聞こえる。この世界で霊体みたいなのは見たことがない。なら、そういう現象が起きてる……ってことはないはず。

 はっきり言って、かなり絶望的だが、でもまだ生きてる。そして俺なら……この状態でもどうにかできる。どれだけショッキングな映像が出てきてもいいように、一応覚悟を決めて、俺は一度その手に触れる。


「すぐに助ける」


 すると弱弱しくだが、わずかだけど、その手が握られた気がした。生きる意志がある……なら大丈夫だろう。いくら助けても生きる気がない命ははかないものだ。でも生きる気持ちがあるのなら、肉体からなかなか魂は離れないものだ。


「流石に強引にはやれないな」


 俺は腕が出てる瓦礫に触れる。そして力を通して、どういう状況か内部まで見渡した。はっきり言ってそれだけでかなり悲惨な事になってるのは分かった。ほとんど下半身はつぶれてしまってる。本当にわずかな空間にこの子は収まってる状況だ。


 無理矢理な力のかけ方をすれば、ずれた瓦礫がこの子を押しつぶすだろう。聖剣を置いてきたのを後悔してしまう。あれがあれば、周囲だけを一瞬で切り裂き、その一瞬でさらに引き出すとかできたと思う。なにせこの程度の瓦礫なら、聖剣を使えばそれこそ抵抗なんてなく切れる。抵抗がないのなら、衝撃やら摩擦やら、そんなものはないに等しい。ただ一瞬の刹那――その重ささえ消える瞬間に、切った場所を引き抜くだけだ。


 人間離れした芸当だが、できる自信はある。でも今ここに聖剣はない。なら自分の力でどうにかするしかない。グズグズしてる暇はない。

 この瞬間にも、この子の生命力はどんどんと小さくなっていってる。それも無理はない。なにせ生きてるのが不思議な程の重傷だ。


「やってみるか」


 力技で解決……は万が一が怖いこの状況ではできない。だから俺は、自分の可能性と言うやつを試すことにする。魔王は高まった力を破壊やら消滅やら物騒な方に振ってるが、俺はもっと別の方向にこの高まった力をもっていこうとしてる。

 それはきっとより多くの人たちを救うことが出来ると信じてるからだ。そしてそれを確かめる絶好の機会じゃないか。


 俺は瓦礫に手を置き、力を高める。そしてさっきこの子の状況を把握した時よりも強く力を瓦礫に浸透させていく。もともと魔法を通すようには作られないからかなり強引に……いや、ところどころ通ったりもするから逆に慎重にもやってる。


 多分材質のちがいだろう。元々の素材が力を通しやすいものってのは自然界にもある。でもそういうのは通しやすいから、他の力が通りにくいところと同じように力を流してると、過剰供給で先に崩壊する。そして通りにくい奴も無理矢理力を通し過ぎると崩壊する。


 そんな素材がごちゃ混ぜな瓦礫だからとても大変だが……それでもやって見せる。


 俺は瞳を閉じて力を流す事に全神経を集中する。額の汗が頬を流れて、そして顎から落ちていく。でも行けた。この子を包んでる……どころかこの建物全体の瓦礫に自分の力を行きわたらせることが出来た。


「ここからだ……な」


 でもこれで終わりじゃない。俺は今からこの力を通した物体に干渉して、その本質を変換していく。そうして埋まってるこの子を埋まってない状態にするんだ。俺は更に複雑な事をするべく俺は自分が考えた魔法の名前を口にする。


「創成魔法発動」


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