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 豚が虫を押しつけてきて恐怖してたら、押しつけられてた私……というか魔王だと思う小さな手が振り抜かれた。それは本当に小さな赤ちゃんのような手だった。まあ、人間と違って爪は鋭利で、肌は黒いし、なんか皮膚が硬そうで小さな手なのに、あんまり柔らかそうではない。


 そんな小さな手は全然大きな虫を粉砕して、その先にいた豚のメイドまでも粉砕した。


(ええええええええええええええええええええええ!?)


 ちょっと何が起こったのかわからない。てかここはどこ? なんか肋骨の様な骨が見える。まさかとは思うけど、この私……というか多分魔王と思われる小さな存在は肋骨の様な先進的なデザインをしたゆりかごの中にでも居るのかな? 


 ずいぶん高い天井が見えて、垂れ下がってるシャンデリアは綺麗と言うよりも禍々しいデザインをしてる。そんな事を思ってると、がははははは! とかいう豪快な笑い声が聞こえてきた。


「素晴らしい。あふれ出るエネルギーが見えるぞ」


 ズンズンという震動と共に、ヌオッと凶悪な顔が現れた。まさに人類の敵、バリボリと人を丸食いしそうな風貌な化け物がそこにいた。山の様に大きく、おかしな圧力がビリビリと感じる。本能が理解する。


(ああ、これが前の魔王か……)


 そう自然と思った。重いというか確信何だけどね。まあ実際その世代に魔王が二人居てもおかしくはないと思う。でも、なんとなく私の中では魔王は今居る奴だけなのだ。


「くくく、さて貴様は生きて成長する事が出来るか? 魔王試練の開始だ」

(魔王……試練……)


 なんて残念な名称だ――とか思ったが、先代魔王はいたって真面目だ。そして指をバチンとならす。はっきり言ってそれだけで耳が破れそうな音がした。合図じゃなくあんなんもう攻撃じゃん。鼓膜破壊しにきてるよ。そう思ってると、青い炎が現れて、凶悪そうな犬が現れた。

 多分ケルベロスとかいうのだと思う。だって頭三つあるし。そしてよだれだらだらと垂らしてる。第一印象は「きったねー犬」って感じだ。そんなきったねー犬……もといケルベロスは先代魔王の言葉を受けてこっちに駆けてくる。そのあまりの早さに気付いた時には目の前が真っ暗になってた。


(うわっこれ死んだわ)


 とか思った。けどその瞬間「あぎゃっぎゃぎゃ」とかいう汚い笑い声が聞こえたと思ったら、いきなりシャンデリアの禍々しい光が目に入って眩しくなった。


(え?)


 何が起こったからわからない。わからないが、ケルベロスは反応が早かった。もしかしたら想定してたのかもしれない。汚い犬なんていったけど、私よりも賢そうである。今度はサイド二つの首がこっちに向かってくる。ここでようやく、中央の首がもげてるのに気付いた。一体何やったの? 


「あゃぎあーあぎゃあー!!」


 そんな悲鳴……じゃなく、嬉しそうな喜びの声が聞こえる。サイドからはこっちを丸呑みに出来るけど、わざわざその凶悪な牙で骨までかみ砕こうとしてそうな犬の顔が迫ってきてるとは思えない様な声だ。そして実際、魔王に取ってはこんなこと遊びのようだった。次の瞬間、ケルベロスの残りの頭も吹き飛んだんだ。そして大きな音を立てて崩れ落ちた。


(ちょっ!? えええ?)


 私は驚いてるが、先代魔王はどっしり抱えたままだ。そして再び青い炎を使って別の魔物を呼び出した。そしてそれを何回か繰り返すとようやく私も慣れてきた。そして一つ思う。


(こいつ、今より強いじゃない?)


 積み上がる無数の屍の中央で無邪気に笑う小さな魔王に私はそう思った。

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