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「下がってなさいピローネ」

「でもペーニャ……」

「いいから、貴女はまだ必要ですもの」

「わ、わかった」


 ペニーニャイアンはピローネへとそう言って彼女を端のほうまで下がらせた。俺はそれをただ見てる。実際、この場で重要なのはペニーニャイアンだ。だから別にピローネはこちらに何もしないのなら、別に何もしなくていいかなって思ってた。

 実際、ピローネはただの子供のはずだからだ。けど――


(なんか引っかかる言い方だったな)


 ――これまでの事で、ペニーニャイアンがただ優しげな仮面をかぶってる奴なのははっきりしてる。それでももしかしたら身内には甘いのかもしれないが……でも、殆ど身内見たいなローワイヤさんは簡単に切り捨ててるんだよな。

 それを思うと……今の言葉がたんにピローネを気遣ったものなのかという疑問がわく。まあとりあえず俺だって子供を傷つける趣味はない。危ない所から離れてくれるのなら、願ってもないからな。

 近くに居たら、もしかしたらいざという時にペニーニャイアンはピローネを盾にでもする気かとおもったが、それができないくらいにはピローネは離れていってる。ある意味、こっちにとっても都合がいい。


「さて、まだまだ勝ったと思わないでください」


 そう言って自然とした動作でペニーニャイアンは扇子をパチンと閉じる。それと同時に、俺達へ天井が落ちてきた。正確には天井だった所から四角い柱が落ちてきたって感じだ。


「ん?」


 俺は実際それに気づいてなかった。なにせペニーニャイアンが扇子を閉じた動作と同じ瞬間には落ちてきてたからだ。だからそれに気づいたのは、落ちてきた天井の柱がぶっ壊れてからだった。


「やっぱりそれでくるよな……」


 俺は余裕そうにそういった。それに対してペニーニャイアンは少し眉を下に下げて悔しげだ。でもなにかを言うことはない。更に次は閉じた扇子を開いて口元を覆う。それと同時に上と横から柱が伸びてくる。今度は警戒してたから、ちゃんと反応はできた。でもあえてなにもしない。


 それでも、問題ないからだ。


「うお!?」「なにが起きてんだ?」「とりあえず全員勇者の旦那の側から絶対に離れるな!!」


 後ろの方は色々と悲鳴やらそんな声やらうるさいが、問題はない。賞金稼ぎの一人がいったように、俺の側にいれば安全だ。それを理解したら、ただのちょっとしたアトラクションとでも思えるようになるだろう。次々と襲いかかる柱は既に数えるのも億劫な数になってる。

 そしてそれに対して、次第にペニーニャイアンの額には再び汗が滲んでる。俺が聖剣で貫いた時以来だな。あれは傷のせいだっただろうが、今回の汗は疲労だろう。やはり自身の力を使ってはいるようだ。


「なかなか、頑丈ですね。ではこれならどうですか?」


 そう言うと、ただ壁が迫ってきてたのに、その先端が鋭くなった。なるほど押しつぶすんじゃなく突き刺す方向できたか。まあ無駄だけどな。俺は腕を掲げて聖剣に力を貯める。光が聖剣へと集う。そしてソレを片手で簡単そうに振り下ろす。

 ソレだけで襲いかかっきてた柱はすべてが吹き飛んだ。


 光が収まると見えてきたペニーニャイアンの顔は目を大きく開けてほうけた顔をしてる。


(少しは理解できたかな?)




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