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説明だけを聞くと、なんかヤバそうな薬に思える。なにせ腕が生える? 薬でそんな魔法みたいな事が出来るのか? という気はする勇者である。なにせ勇者の世界では薬……なんてのはそんなに発展してなかった。ゴリゴリとすり鉢で擦って何種類かの草や種を混ぜて飲ませる……なんてくらいの医療技術だったのだ。
それは精々お腹の痛さをやわらげたり、もしかしたら解熱したり……便通を良くしたり……が関の山であった。だから魔法でもない薬で腕が生える? 勇者はとても信じられない。けどさんざん、G-01のテクノロジーは見てる。それらは信じられないことばかりだった。
なにせG-01が使う技術は大抵が魔法ではない……らしい。それが一番信じられないことだろう。魔法には様々な可能性がある。でも化学やらそっちは勇者の世界がそっち方面であまり発展してなかったから、なかなか受け入れるのが難しい。分かってる。これが魔法ではない……と。そして今の自分の体も機械の集合体という事も。時々それを忘れそうになるほどになじんでるが、勇者の体はもう生身ではない。
「私たちが信じられないですか?」
アイがそんな風に勇者にいう。信じてないわけじゃない。ただ信じられないだけだ。頭はこれまでの事を考えるにG-01達の技術が信じられるものだってわかってる。けど……「そんなわけないじゃん」――という気持ちがなんかあるだけだ。
「大丈夫だよ! だから早くお願い。実は痛いんだよ?」
「……それもそうね」
確かに腕がなくなってるのだから、リファーちゃんは痛いいよね。痛くないわけないよね。いや、ここに戻ってくるまではアドレナリンが大量にでて痛覚を麻痺させてたかもしれない。でも仲間の元に来たち安心するものだろう。そうなると徐々にアドレナリンだって引いていき、そうなるととんでもない痛みがリファーちゃんを襲う筈である。
だって腕がなくなってるんだからね。ちなみにリファーちゃんの血は黄金だった。真っ赤……ではなくキラキラとしてる。固めたらインゴットになるんだろうか?
とりあえずアイは「いいですね」――みたいな視線を送る。だからそれに対して勇者はうなづいた。するとアイの行動は早かった。一つの筒をとると、それを握ってリファーちゃんの鎖骨の下あたりにその筒を押し付けて、反対側を指で押し込んだ。すると一瞬、リファーちゃんの体がビクン――と跳ねた。




