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「ごわごわー」
どうやら本体はゴワゴワとしてるらしい。リファーちゃんは捕まえた本体を抱きしめてるから、その感触を堪能しようと思ったんだろう。だって他の……分身である他のまん丸い生物達は、とてもふわふわとしてそうな見た目してる。それにくすんでもない。いろいろな色のまん丸い生物がいるが……どれも鮮やかだ。そして見た感じその体毛はとてもサラサラふわふわそうに見える。
まさか本体よりも分身のほうが体毛の感触がいい? そんな事が……
「あり得る……か」
よくよく考えたら生きてる……のならそういう事もありえるかもしれないと思った。だって考えてみてほしい。生きる……ということは簡単なことじゃない。なにせここは野生の世界といっていい。サンクチュアリを宿してるのなら、この世界でも頂点に立てるポテンシャルは有るだろうけど、今までの世界でサンクチュアリを持った存在がそれに自覚的だったことはない。
ということは、あのまん丸い生物もそうなのかもしれない。自分が生き残るための策……と考えたらそれはある意味で合理的なのかな? って。だって多分だけど、このまん丸い生物はそれこそこの森でも捕食者の立場ではないだろう。どちらかというと狩られる側の生物のはずだ。だって牙も爪もこの生物にはない。
きっと葉っぱとか木の蜜とか……そんなのを食べるタイプの生物ではないだろうか? どう考えても獲物を狩る存在には見えない。そうなると、自然と狩られる側ということになる。
そんな狩られる側なのに自身を目立つようにするのはおかしい。つまり分身たちのほうがおかしいのだ。そしてあれが分身とわかれば、その役目だって見えてくる。分身の本来の役目はそれこそ身代わり……なんだろう。分身が綺麗で派手な色をしてるのはきっとそのせいだ。
本体よりも目立つように……美味しそうにすることによって、本体が生き残る可能性を少しでも上げてるのだ。だからこそ本体よりも分身のほうが毛も柔らかそうだし、綺麗を保ってる。
本体がみすぼらしい姿をしてればしてるほどに、敵の目は分身の方に向く。それがきっとこのまん丸い生物の生きる術……なんだ。
『一応その生物はこの世界のサンクチュアリを宿してるのです。あまり刺激はしないように。優しくしてあげてください』
「はーい?」
『リファー?』
何やらリファーちゃんの返事が遠ざかったというか? なんか一瞬緊迫したような? すると次の瞬間、リファーちゃんが戻ってきてた。その腕をなくして……




