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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第2部 転生少女の青春期

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新入生編21 -ルビーフォルン生活前編-

ルビーフォルンにいくので、後がきに登場人物紹介をいれます。必要ない方は飛ばしても問題ありません。

 レインフォレストに到着した初日で婚約破棄が成立し、その後はアランやカイン様と一緒に過ごした。

 アランが馬術を習いたいと言うので、その練習に付き合ってあげたり、市場に行ったり、近くの滝を見に行ったり……。前世でも、こんな風に友達と遊びまわるようなことはしたことなかったから、ものすごく楽しい。


 レインフォレスト領といえばグリグリ村がある領地。様子を見に行きたかったけれど、結構遠いところのようで、そこまでは行かせてもらえなかった。ただ、以前と同じようにレインフォレストで働いている精霊使いから、あの村は元気にやってると思うという風に聞いたので、それだけで満足することにした。


 あと、クロードさんに今後の活動内容についてとかを色々と話したりもした。そのついでに、私が小間使いだった時に、私を探しているという謎の怪しい覆面男がどうなってるか聞いたところ、あれ以来姿を現していないらしい。

 もしかしたら、その人が村を出たジロウ兄ちゃんかもしれないと思ったので探りを入れてみたけれども……結局は分からず。


 そんなこんなをしていると、あっという間に数日経過し、コウお母さんのお迎えがきた。王都での仕事に一区切りつけてダッシュでこっちに来てくれたみたい。


 アイリーンさんとコウお母さんで、大人の挨拶的なものを終わらせてから、私は出発した。出発間際、アランがものすごーく不安そうな顔をして、私の出立を阻もうとしてきた。

 最近は山賊の出没例はないし、特別荷物を積んでるわけじゃないし、万が一山賊がいたとしても狙ってこないよって言ってどうにかアランを宥めすかして出発した。


 ごめんよ、アラン。私の出立を青い顔して見送っているアランが痛々しかった。どうやら私が山賊に攫われた事件が相当アランの中でトラウマになってるっぽい。すまん。


 数日、旅を続けて、ルビーフォルンのお屋敷に到着した。

 レインフォレストほどじゃないけれど、ルビーフォルンのお屋敷もなかなか立派。でも、手入れが行き届いていないのか、ちょっとコケとかが生えてる。

 ボロ……なんていうか、わびさびを感じる厳かな建物だ。


「おかえりなさいませ!」

 盛大な声と共に、玄関までお迎えに来てくれた人達が、全員何故か両膝、両手、そして額も地につけてるような姿勢で待っていた。


 あれ? おかしいな、この世界でそんな土下座みたいな挨拶は確かなかったはず。みんな、どうしたのかな?


 とりあえず、一番手前で、五体投地しているタゴサクさんに目を向けた。

「タ、タゴサクさん、その挨拶? のようなものは一体どうしたんですか?」

 一瞬スルーしようかと思ったけれど、やっぱり恐る恐る聞いてみた。


「お気づきになられましたか」


 私が声を掛けるとタゴサクさんはニヤリと笑ってそう言った。

 気づくわ!『さすがリョウ様よくお気づきになりましたね!』みたいな雰囲気出してきてるけど、誰でも気づくわ!


「この挨拶はリョウ様に対するときだけの専用の挨拶なのです。リョウ様の偉大さという名の光があまりにもまぶしいため、直視できない者が出るでしょうから」

 いや、でないよ! でるわけないでしょ! だって、私光ってない!


「……ひ、膝をつくような挨拶は、皆さん大変でしょう。普通にしてください」


「しかし、リョウ様、それでは、まぶしさに目がつぶれてしまう人が出るやも知れません!」

 でないよ! タゴサクさんの目には私が光ってるように見えるの? え、もしかして私って、知らないうちに光ってるの? そういう体質なの!? やだ、何ワット? ねえ、何ワット!?


 私は助けを求めるように、コウお母さんを見ると、哀れむような眼差しと供に、首を横に振ってくれた。

「大丈夫よ、リョウちゃん。光ってないわよ」

 ああ、よかった。いつものタゴサクさんの妄想か。ひやひやさせる。蛍光灯のように、ぺカッと光ってる自分を想像してしまったじゃないか。


 盛大なお出迎えが終わると、客室に通された。バッシュさんとのご対面だ。


「リョウ、よく帰ってきたね。コーキも元気そうでなによりだ。王都での生活は問題ないかい?」


「大丈夫よぉ、バッシュ。リョウちゃんも楽しそうに学校へ通ってるわ。お友達も出来てるみたいだし」

「はい、おかげ様で、楽しく過ごさせてもらっています」

「なら、良かった。アレク達も喜ぶ」

 おお、自然な感じで親分の名前が出てびっくりした。

 なんていうか、バッシュさんの前ではアレク親分の話しはタブーっぽい感じがして、今まで避けてきてたんだけど、いいの?

 ……もしかして、親分からなにかコンタクトがあったりしたんだろうか。


 私はここぞとばかりに親分の話を聞きだすことにした。


「お、親分から何か連絡とかありましたか?」


「いや、連絡はないよ」

 うーん、連絡はないのか。しかしバッシュさんは結構ナチュラルに嘘つけるタイプだからな。隠してるのかも……。


「ただ、アレクのことだから、こっそりこちらの様子は見ていると思うよ」

 私が、じーっと見つめてると、バッシュさんが苦笑いしながらそんなことを言ってきた。


「そぉねぇ、アレクはああ見えて面倒見がいいもの。長期休みにリョウちゃんが戻ってくると知って、案外近くまで来てるかもしれないわね、ふふ」


「そ、そうですか」

 な、なんか照れる。


「親分は、何か動きのようなものはあるんでしょうかね?」

 卒業したら、親分に会いに行くって固く誓っているけれども、私が卒業するまできちんと待ってくれるかが問題だ。

 親分のことだから『いつ暴れるかって? 今だ!』とか言ってヒャッハーしそうで怖い。


「いや、まだ動いていないようだ。おそらく今は、剣作りに奔走しているところだろう。本当はもともと、私が剣を生産してアレクの助けになるはずだったんだ」

 そういって、バッシュさんは力なく笑った。バッシュさんは、もともとはアレク親分の協力者だった。昔なじみということもあって、いがみ合っているわけではないけれどきっと複雑なんだろうと思う。


「剣を……ということは、やっぱり親分は魔法使いと、その、戦争をする気なんですか?」


 無謀そうなことをしているなとは思っていたけれども、親分、本気で魔法使いとやりあうつもりなんだろうか……。学校へ行って、魔法使いのことを少し勉強してわかったけれど、正直魔法使いと戦争なんて、無謀どころの騒ぎじゃない。

 私とアランの決闘みたいに一対一だったら、色んな手を使ってどうとでもなるけれど、戦争みたいに大勢対大勢だと、魔法の使えない人間は圧倒的に不利。まず、魔法で大量生産できる剣や鎧が使えない。石で作った矢じりなら弓矢は効くだろうけれど、風の魔法とやらで、投げ飛ばす系の武器は防ぐことができるらしい。それでもって、魔法使いは水攻めや炎攻めなどの大規模な攻撃手段を持っている。

 うん、まったく勝てる気がしない。


「いや、戦争とまでは考えていないと思うが……ただ、魔法使いが仕掛けてきたら抵抗はすると思う。そのために備えるということもあるが、アレクが剣を作る一番の理由は、魔物対策だ。魔法使いの助けがなくなって困ることの一つに、魔物を封じる結界が弱くなることが考えられる。魔物の中には、魔法で作った剣では傷を負わせることが出来ないものがいる。そうすると、魔物に対抗する手段が今の我々にはなくなってしまうから、魔物を倒せる剣がどうしても必要だと考えているんだ。しかも、人の手で作った剣は、魔物封じの結界の役割も果たせるという話しもあるしね」


 結界っていうと、あの法力流しの見学会で見たやつか。しめ縄で囲ってるやつ。

 あの結界がなくなったら、あの猿みたいな魔物が出てくるんだもんね。それは確かに恐ろしい。あの時現れた猿の魔物はカイン様が華麗に腕を切り落としていたから、魔法で作った剣が効いているタイプだったけれど、効かないタイプだったら……。ていうか、剣が効かないってどういうことなんだろう。弾いちゃうのかな? どちらにしろあんな化け物相手に武器を持たない人間が勝てる気がしない。


「なら、親分が動くのは、まだまだ先ですね?」


「そうだね。剣の作り方は、私と、ルーディルとクワマルが学校の授業でなんとなくさわった程度だ。貨幣を作る授業で、鉱物を溶かしているのを見た。あの要領で剣を作れるんだとは思うが、なかなか難しくてね……。アレク達も手こずるとは思う」


 なら、そうすぐには親分は動かなそうだね。


 ―――コンコン。


 扉をノックする音が聞こえて、バッシュさんが声を掛けるとタゴサクさんが入ってきた。


 部屋に入るなり、数秒間五体投地をしてから何事もなかったかのように、バッシュさんの隣の席に座った。


 ねえ、あの数秒間の五体投地に意味あるの? ねえ、意味ある? 今、普通に目の前に座って私のこと見てますけれど、まぶしさで目がつぶれてないですよね。 


「実は、リョウに相談があってね、タゴサク様を呼んでいたんだ」

 タゴサクさんの奇行にはまったく触れずバッシュさんは、軽やかにそう私に声を掛けた。

 バッシュさんもなかなかやりおる。

 私もバッシュさんを見習って触れないようにした。


「農業のことですか?」


 私がそう問いかけるとタゴサクさんが大きく頷いた。


「ええ、開拓村の村人から相談が入りまして、どうやら獣害・鳥害で困っているようです。実った作物が、山から下りてきた猪などの獣や、鳥達によって荒らされているとか。なのでリョウ様のありがたいお言葉を拝したいのです!」

 タゴサクさんはそう言って、期待に満ち溢れた目を私によこしてきた。ありがたいお言葉って……。


 でも、村人の相談は、由々しき事態。多分今までまともに作物が実ってなかったから、相手にしてなかった動物達が、実り始めた畑を見て寄ってきてしまったんだろう。


 唐辛子の苗で垣根をつくろうか……。アレはなかなか効果がありそう。獣の数が多いようなら、猟師会のようなものを作って、定期的に狩猟させたほうが良いかもしれない。鳥被害については、うーんと、案山子が良いかな? 原始的だけど、効果があるからこそ、現代の日本でも使われていたんだろうし。


「唐辛子の苗で畑に垣根を作るようにするのはどうでしょうか? 唐辛子の辛味の刺激は動物にも効果的です。あと、案山子を作りたいと思います。藁と木で簡単な人型を作って、服を着せて人間に似せたものです。それを畑のところどころに立てます。人がいると思って、鳥達も警戒して畑に入りにくくなるでしょう。それでも、もし、獣が多すぎて、被害が出るようなら、定期的に獣狩りをする必要があるかもしれません。唐辛子の苗を持っていく人は騎士職の人にしましょう。苗を持ってきた時に、騎士の方から狩猟の方法を村の若い人に教えるのがいいと思います」


 うん、それがいい。出来ればそのまま騎士の人は村に住み着いて欲しい。だいたい開拓村のおかしいところは、何も知らない村人をかき集めて、一つの知識だけ与えて放り込んでるのがいかんと思う。

 この国では、農業をやる人には簡単に作物の育て方を教えて道具を渡して終わり、漁師には、魚の捕まえ方を教えて道具を渡して終わり、炭鉱で働く人には、掘り方を教えて道具を渡して終わり、という感じで、専業しかやらせないようにしている節がある。

 だから、ただ言われたことを言われたまま行なうだけの集団になって、不測の事態に対応できないんだと思う。


 一人だけでもいいから、色々な知識のある人や指導力のある人を長として入れないと、何か問題に直面した時に、解決できる力がない。

 だから、私が生まれたばかりの頃のガリガリ村だって、あんなにやせ細っても何も改善しようとしていなかったし、グリグリ村だって、アレク親分が来なかったら、多分みんな死ぬまでボーっとして終わっていたと思う。


 バッシュさんのところに勤めている騎士さん達は、騎士爵こそ得ていないけれど、学校に行って騎士科を卒業している人もいるし、学校にこそ行ってないけれど、貴族や準貴族の家に生まれてそこそこに教育を受けた人がほとんど。


 それなりに物の道理も分かっているし、文字の読み書きもできる。何か問題が起こったときでも対応できる力を持っていると思われる。

 それに、村の人にこっそり文字の読み書きや算術を教えられるじゃないか。本来は、勝手に学校的な機関を作っちゃだめだよって王様に言われてるけれど、別に学校的な機関を作ってるわけじゃないし、ちょっと教えてーって言われたら教えるぐらいだし、それぐらいなら問題なかろう、うむ。

 そういう人が村に一人いてくれるだけで安心できる。まあ、騎士の人達が嫌がったらアレだけど。


 そういえばタゴサク氏の取り巻きは騎士が多いから、そいつらを行かせたい。取り巻きがいなくなったら、タゴサク氏も大人しくなるだろうし……タゴサク教が自然消滅するかもしれない! うん、いい考えだ! 


 私は早速タゴサク氏とバッシュさんとで鳥害・獣害対策本部を作って、今後のことを話し合うことにした。



登場人物紹介


コウキ

心は乙女な男性。

顔立ちは整っており、学生の頃は乙女の部分を隠していたため、女子にモテモテだったらしい。

主人公をさらった山賊の一味の治療師だったが、現在は主人公の保護者に落ち着いている。学生時代からの友人であるアレクのことが好き。

主人公の母親代わり。万が一、主人公が彼氏を連れてきたら、味見をしようと思っているらしい。好みのタイプは筋肉質な男性。アランは守備範囲外だったらしいが、カインの将来は楽しみにしているようなことを言っている。

呼ばれ方:コウさん、コウお母さん



アレク(本名:アレクサンダー)

男性

主人公を攫った山賊の親分。魔法使い嫌いで狙う相手は貴族関係者で、農民に狩猟の方法を教えたりということもあり、義賊のような雰囲気を出してきている。

スキンヘッドで顔が怖い。面倒見がいいところもあり、周りからは慕われていることが多い。あまりにも慕われているため、主人公に『この世界ではあの顔がイケメンなんだろうか』と不安を頂かせる。

コウキの思い人。実は子供好きらしい。とにかく決めたら今すぐ行動を起こしたがる性格。

魔法使い至上主義なこの国を変えたくてなにかしらしようとしている。

呼ばれ方:親分、アレク、スキンヘッド


バッシュ=ルビーフォルン

男性

ルビーフォルン伯爵家の主人。

魔法は使えないため、魔法使いを妻に迎えて領地経営をしている。子どももいる。

アレクとは学生時代からの友人で、途中まではアレクに協力するつもりだった。農業改革がうまくいきそうになっているため、今は協力関係を絶っている。

基本的に穏やかな性格だが、飢えで苦しむ領民のために、アレクに協力しようとしたり、農業改革に自ら乗り出したりと、精力的に働く熱い面もある。

呼ばれ方:バッシュさん(様)


タゴサク

男性

主人公が産まれたガリガリ村の村長の息子。髪の毛が寂しいことになっている。

農業の発展が著しいガリガリ村の噂を聞いたバッシュさんにスカウトされて、ルビーフォルンに連れてこられた。

ルビーフォルンの領地で行なっている農業改革の大先生であり、結構優秀で、バッシュさんはものすごくありがたがっている。

幼少の頃から、飢え死にしないように動いていた主人公を神聖化しすぎて、やばい人になっている。主人公を天上の神の御使いと信じており、その教えを広めるために色々と奮闘している。主人公の教えを広めるために、文字を勉強中。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] それ逆にタゴサク教の宣教師になって信者が村レベルで増えるパターン……( ゜д゜)あーあ
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