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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第六部 転生少女の混迷期

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探究編③ ジロウ兄さん


 神縄をくぐって、その先に進んでみたけれど景色は潜る前とさほど変わらない。


 ただ、空気がちがう。それだけははっきりと分かった。

 口には出していないけれどほかの三人も私と同じように感じたのだろう。

 緊張しているのがわかる。


 正直怖かった。神縄の中は未知の領域になる。

 それでも私達は先に進むしかない。


 ゆっくりと周りに最大限の警戒をしながら四人で進む。

 途中で、森の様子が変わって竹林地帯に入った。

 ルビーフォルンにはいくつか竹の生える場所がある。ここもそうらしい。


 結構奥まで来た。距離にして一キロ程だろうか。いや、もっと短いかもしれない。

 でも、いつもより警戒して進む一キロは途方もなく疲れた。

 きっとほかの三人も同じだろう。


 今のところ魔物との遭遇がないのはありがたいけれど、ジロウ兄さんの手がかりもない。

 もう諦めて、引き返すべきかもしれない。


「……ここ、魔素が、ありえないほど、濃い」

 あたりを見渡しながら、アランが戸惑いがちに答えた。


「魔素が……?」

 私の目にはなにも見えないが、魔術師のアランにはなにか見えるらしい。

 魔術師といえば、ゲスリーも……。

 目線を向けると彼もキョロキョロとあたりを見渡してる。


「魔素って、このキラキラしたやつのこと? 濃いというか、一つのところに向かって集まってる。ここより、もっと奥だ」

 ヘンリーがそう言って、魔素というのが集まっているらしい方向へと視線を向けた。

 私もそちらをみてみたけど、私の目にはなにも映らない。


 でも確かに、何か感じるものがある、ような気がする。


「どうする? そのまま殿下が言う場所まで行くか、どうか」

 カイン様がそう言った。

 そこにジロウ兄さんがいる確証はないけど……。


 私は結局奥に、魔素が集まっているという方向へと向かうことにした。

 サクサクと落ち葉を踏む音が響くがそれ以外の音がない。

 変な感じだ。


 魔素が集まる場所まで様子を見るという目標ができたからか、不思議と先ほどと比べると疲れを感じなくなった。


 警戒しながらも先に進むと、アランがここだと言って、眩しそうに目を眇めた。

 そこは、円形の広場のようになっていた。

 先ほどまで所狭しと生えていた竹が円を描くようにして、綺麗になくなっている。

 いや、この円形の中心に何かある。

 目を凝らすと何か小さなものが地面から顔を出しているのが見えた。

 あれは何だろう。茶色で、少しとんがってる。

 見た感じは……。


「タケノコだな」

 あっさりアランはそう言った。

 そうタケノコだ。あの形は間違いなく、タケノコ。

 あのタケノコに向かって魔素が集まってるらしい。


 私達は恐る恐るタケノコに近づいた。

 先っちょしか見えないけど、なんとなく、根本はかなり太そうだ。


「大地の中でも魔素が動いてるよ。あのタケノコに向かって。言ったら、大地の中で収束していく魔素の方が大気中の魔素なんて比べ物にならないぐらいだ」

「やはり殿下は、地中の魔素までわかるのか」

 ゲスリーちゃんの言葉にアランが驚いたように言う。

 私は大気中の魔素ですら分からないので、一体何が凄いのかわからないけれど魔術師界隈では凄いことのようだ。


「誰だ!!」

 突然、怒声が響いた。

 声が聞こえた方を見て、私は再度驚きで目を見開いた。

 だってそこにいたのは……。


「ジロウ兄さん?」

 私がそう言うと、先ほどまで険しい顔でこちらを警戒していたジロウ兄さんの顔と目があった。


「リョウか……?」

 私だと気づいたジロウ兄さんの顔が呆然としたものに変わる。

 ジロウ兄さんの顔は、以前ルビーフォルンで出会った時のものとほとんどかわらない。

 半分は懐かしいジロウ兄さんの顔だけど、もう半分は、仮面が剥がれたみたいになってまったく別人の顔になっている。


 まじまじとみているとジロウ兄さんは再び険しい顔をした。


「そこから離れて」

 有無を言わせぬジロウ兄さんの言葉は冷たく感じた。

 半分は懐かしいジロウ兄さんの顔なのに、全く知らない人なような気がした。

 すごく迷惑そうに私をみている。

 私がそこから動かなかったら、話も聞いてくれない雰囲気だ。


 私は言う通りにしようと無言でタケノコから離れ、ジロウ兄さんの方へと歩む。

 もともと私の目的はジロウ兄さんに会うこと。

 タケノコのことはどうでもいい。


「ジロウ兄さん、お久しぶりです。私……」

「お前もだ。離れろ」

 私が目的を言おうと口をひらいたら、ジロウ兄さんが怒鳴るようにそういった。

 私にいったようではないようで視線が奥の方を見てる。


 振り返って確認すると、タケノコの近くにゲスリーがぽつんと立って、まっすぐタケノコを見下ろしていた。


「殿下?」

 私がそう声をかけると、彼はゆっくりとこちらに顔を向けた。


「なに?」

「あの、こちらに来てくれますか。ジロウ兄さんが、そこから離れてほしいみたいで……」

 私がそういうと、さっきから険しい顔をしてるジロウ兄さんに初めて気づいたかのように驚いた表情を見せる。


「ごめん。とてもびっくりしたから見入っちゃっただけ。大丈夫、何もするつもりはないよ」

 ゲスリーはそう言うと、こっちに来てくれた。

 さっきからずっとピリピリしてたジロウ兄さんからやっと剣呑なオーラが消えた、気がする。

 私は改めてジロウ兄さんに向き直った。


「私、聞きたいことがあってここまで来たんです。以前ジロウ兄さんが教えてくれた生物魔法について教えてほしくて」

 私がそう言うと、ジロウ兄さんはしばらくまじまじとなにを考えているのかわからない顔で私を見た後、ゆっくりと頷いてくれた。


「わかった。だがここは特別な場所だから、ここから離れよう」

 ジロウ兄さんは、それだけ言うとどこかに向かって歩き出した。

 私達も黙ってジロウ兄さんの後についていくことにした。



 ジロウ兄さんについていくと、少しひらけた場所にやってきた。

 近くに焚き火の跡や毛布などが置いてあるのを見るにおそらくここはジロウ兄さんの住処なのだろう。

 ジロウ兄さんに促されるまま焚き火の跡を囲むようにしてみんなで座った。


「ジロウ兄さん、早速ですけど、生物魔法について教えてほしいんです」

「昔の魔法のことか」

 あっさりとそう言ったジロウ兄さんの言葉に期待が高まった。

 やっぱり、何か知ってるんだ!


「はい! その生物魔法について知ってることを聞きたくて、特に隷属魔法について教えてほしいんですけど、隷属魔法のことは何か知ってますか?」

「隷属魔法……。たしか、生物を意のままに操る魔法だったか」

 ジロウ兄さんはなんてことないような口調でそう口にした。

 隷属魔法のことも知ってる……!


「そう、その魔法です! ジロウ兄さんは隷属魔法のことを知ってるんですね? 呪文はわかりますか? 使い方は……!?」

「さあ、使い方はわからない。興味がなかったから」

「えっ……」

 わからない……?

 一気に膨らんだ期待の分、ジロウ兄さんの言葉が重くのしかかる。

 思わず頭が真っ白になっていると、隣のアランが口を開いた。


「使い方はわからないにしても、何か知ってることがあれば教えてほしい」

 冷静なアランの言葉に私も少し落ち着いてきた。

 そうだ。手がかりだけでも……。


「何か……。そうだな……」

「本当になんでもいいんです。例えば、ジロウ兄さんが生物魔法を知った経緯だけでも」

 私がそう言うと、ジロウ兄さんは思案するようにして顎の下に手をおく。


「生物魔法を知った経緯となると、長い話になるかもしれない……」

 そう言ってジロウ兄さんは、嫌なことでも思い出したかのように、苦々しい表情を浮かべた。


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