魔物襲来編③ シャルロット嬢救出作戦
私たちは、先生や講堂にいる生徒たちに見送られながら出発した。
少し薄暗くなってきてもいたし、火魔法がすぐ使えるようにとランプを持っていく。
講堂は、建物の一階の中央。保健室は、同じ一階だけど、建物の端にある部屋だ。
大きな、校舎なので、そこまでは結構距離がある。
廊下を走っていくと、少し遠くの方から、風を切るような音や、人が慌ただしく走るような音がする。それにかすかに焦げ臭い。
「さっき運ばれてきたカートン先生から聞いたけど、校舎の東側に、魔物が大量に出てるらしい。そこでカートン先生は怪我したみたい。それで、今は多分トーマス先生がほぼ一人で対応してるって」
私は、こげ臭い匂いに気づいて鼻をすんすんしていると、リッツ君が、そう解説してくれた。
トーマス教頭……ということはこの臭いも、彼が魔物を火魔法で焼いてる臭いか……。
彼にはマッチを渡してるし、魔物は火に弱いと聞いてる。
七三の教頭には頑張ってもらわないと……。ここで、怪我なんかして、活躍できずに帰ってきたら、マッチ没収の刑!
私が、心の中で、マッチ没収の刑という名のエールを教頭に送っている間も、慎重に廊下を進むけど、教頭が頑張っているらしい東側に比べて、こっちは静かだ。
魔物が、東側にばかり気を取られて、集まっているのかも。
教頭先生には悪いけれど、ここは頑張って対応してもらって、魔物は東側に集まって欲しい。
穏便にシャルちゃんと合流できるのが一番。
でも、私のそんな小さな希望は、直ぐに消えた。
もうすぐ保健室のある通路を曲がるというところになって、『ガンガンガンガン!』と強く壁を打つ音が聞こえてきたからだ。
はっきり言って尋常な感じの音じゃない。
私も含めて、みんな一瞬足を止めて、この音って!? という感じで顔を見合わせる。
でも見合わせたところで、みんな思ってることは一つ。
この音はおそらく魔物がしでかしている音で、明らかに保健室のある場所周辺でなっている。
一度止めた足を、一斉に駆け出した。保健室へ向かうための廊下へ曲がった時に、それはいた。
下半身が、翼の生えた馬のようになっており、上半身は人間の女のような姿。頭に大きな一本の角をつけてる。全体的にひょろひょろで、翼と角だけが異様に大きく感じる。なんか魔物ってツギハギな見た目のものが多い気がする。その気持ちの悪い魔物が、その人間のような腕を扉に何度も打ち付けていた。
魔物がガンガンと打ち付けている扉の部屋は、最悪なことに保健室。
シャルちゃんがいるかもしれないところ……!
リッツくんが高速で呪文を唱えてると思ったら、私とアランの間を火球が通り抜けた。
後ろを見ると、リッツくんが、ランプの火を掲げている。
どうやらランプの火をもとにして魔法ででっかい火球を作って、魔物に放ったみたい。炎が魔物に激突する。
リッツ先生、半端ない、ていうか容赦ない! あと危ない。危うく私とアランにも炎が当たりそうなぐらいスレスレでした。
「おい、リッツ、落ち着けよ。危ないだろう!」
「ご、ごめん。でもあの魔物、保健室の前にいたから……シャルがいるかもしれないのに!」
「それよりも、魔物よ! さっきの火球で吹っ飛ばされたけど、まだ死んでいないわ」
サロメ嬢に促されて、前方を見る。多少吹っ飛ばされ、体を焦げ付かせながらも立ち上がる魔物がいた。
ただ、リッツ大先生の火魔法のおかげで、翼が燃えている。多分、もう飛ぶことはできないんじゃないかとは思う。
カテリーナ嬢の呪文の詠唱が聞こえた。
ぶわっと風を感じたと思ったら、魔物が何かに吹き飛ばされて、かなり後方に飛ばされる。
「今のうちに保健室の中に入ってシャルロットがいるかどうか確認してちょうだい」
そう言って、カテリーナ嬢とサロメ嬢、それにアランがそのまま魔物の方に向かい、私とリッツくんで、保健室の中に駆け込んだ。
慌ただしく、保健室の中に入る。でも、目の届くところにはシャルちゃんの姿がない。静かな保健室だった。
カーテンで仕切られているベッドがひとつある。
寝ているとしたらあそこのベッドのはず。私が、思い切りカーテンを開けると、頭に枕を抱えて、布団にくるまって震えているシャルちゃんがいた。
「シャルちゃん!」
私が声をかけて、肩に手を置くと、最初こそびっくりした様子でこちらを見たけれど、私だとわかったシャルちゃんは、耳元を抑えていた枕を下ろして泣き崩れた。
「リョウ、様……!」
そう言って、しがみついてきたシャルちゃんを安心させるように、背中を抱いてさする。
まだ、震えてる。怖かったよねぇ。遅くなって、ごめん!
「シャル、大丈夫!?」
横からリッツ君の心配そうな声が聞こえてきた。
「は、はい。何かが、いて……! 死の精霊が……ガンガン! って。私、怖くて……!」
泣きじゃぐりながらさっきまでのことを話してるシャルちゃん。
話している内容はよくわからなかったけれど、すっごく怖い思いしたんだなって思って、シャルちゃんを抱く手に力がこもった。
良かった。シャルちゃんが、無事で……!
「シャルが無事なら、良かった」
そう言って、心底ホッとしたような顔のリッツ君。
リッツ君たら、心配のあまり、ものすっごい火球を魔物に投げつけたんだよ、シャルちゃん。それで私もアランも焦げそうでした。
あ、よく考えたら、私が先にシャルちゃんに声をかけちゃったから、抱き合っちゃったけれど、ここはリッツ閣下にお譲りするべきだったか。気のきかない私め。
「シャルちゃん、立てますか? 実は保健室の前に魔物がいて、今アラン達が戦闘中なんです」
「ま、魔物? あれって、魔物、だったんですか?」
目に涙を溜めながら、驚きの顔をするシャルちゃん。
ガンガン扉を叩く得体のしれない何かがいるって思っただけで、魔物だという発想はなかったらしい。
「はい。最近の大雨で、結界が壊れてしまったみたいで、魔物が学園を襲ってきているようなんです」
「では、魔物っていうのは……」
―――ガシャーーーン!
シャルちゃんのつぶやきは、突然なったガラスを盛大にわるような音で掻き消えた。
アラン達が魔物と戦闘しているあたりからだ。
私達三人は顔を見合わせると、リッツ君は頷いて「僕、3人の様子を見てくる!」と言って、保健室の扉の方へ向かっていく。
私とシャルちゃんは抱き合いながら、リッツ君の方を見ると、何かを確認した彼は、顔を青ざめてつぶやいた。
「外から、壁を壊して、もう一体魔物が来てる……!」
「ア、アランたちは!?」
「無事だよ! 最初の魔物をたくさんの剣で刺して、動かなくしてるし……でも、僕もいってくる!」
リッツ君はそう言うやいなや、保健室から出て行った。
「わ、私も、もう、立てます! 私も行きます!」
まだ少し震えているシャルちゃんが、強い目で私の方を見てそういった。
私は、彼女の腰を支えながら、ゆっくりとベッドから立たせる。
「本当に、大丈夫ですか?」
「本当は、ちょっと、こわいですけれど、でも、大丈夫、です……! リョウ様が一緒にいてくれれば、私、大丈夫な気がするんです! 早くみんなのところに行きましょう」
立ち上がったシャルちゃんには、もう震えてなんかいなかった。
私たちは頷きあってから、保健室を飛び出した。
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