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ピリ辛×ちょい甘+コク=猛愛?一夜を共にしたからっておかしくありません?  作者: はるくうきなこ


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18クレイブとの話(リント)


 俺はヒュートのパン屋に戻って来た。クレイブは外で待たせておく。

 ヒュートは30代の男で両親の後を継いでひとりでパン屋をやっている。無口だが真面目でいい奴だと思っている。

 まだ、奥の調理場で明日の仕込みをしているらしい。

 「ヒュート。帰ったぞ。これマベルさんから預かった夕飯だ。明日は何時だ?」

 俺が声をかけると奥から声がした。

 「リントさんいつもすみません。そうだな‥明日は7時でお願いします」

 「わかった。ちょっと友人が来たから部屋に通しても?」

 「はい、どうぞごゆっくり。夕飯ありがとうございます。あっ、もし良かったらパン持ってってください」

 籠には今日もパンがたくさん入っていた。

 「ああ、じゃ」

 俺はパンを2,3個掴むとクレイブと部屋に入って行く。

 クレイブは顔を見られないようにマントのフードを深くかぶっている。


 俺はクレイブと部屋に入ると周りに結界と防音魔法をかけた。これで声も気配もわからない。

 早速クレイブと話を始める。

 「それでピュタールの様子は?」

 「はい、キンリー公爵が殿下がいなくなった事を竜議院に公にしました。孫のジュードを次期竜帝にする準備を始めたようです。このままではキンリー公爵の思うつぼです。あいつは裏で私腹を肥やし邪魔なものはおらゆる手段を講じて排除するような奴です。それにミュベール公爵にも危険が及ぶかと‥」

 「ああ、でもなクレイブ。俺が竜帝をはっきり事態すればいいんじゃないか?俺には番が現れた。なぁ、俺はこのままマニール国でミルフィと生涯を共にする生き方だって出来るんじゃないかって思うんだ」


 「でも、それではピュタール国はどうなるのです?キンリー公爵は国を乗っ取るつもりですよ。下手をしたらジュード殿下の命さえ‥そうなれば次の竜帝はキンリー公爵が竜帝になるやもしれません。そんな事になったらあの男は他国に攻め入り暴利をむさぼるかも知れません。そんな事を見過ごせるんですか!!」

 「だが、竜議院もそこまで腐ってはいないだろう?もしジュードが竜帝になったとしても竜帝の弟であるミュベール公爵が正当な後継者のはずだ。そんなのはお前の思い過ごしじゃないか?」

 「思い過ごしならいいんですけど‥まっ、今の殿下の一番の心配事はミルフィさんでしょうからねぇ」

 「良くわかってるじゃないか。竜人に取って番は何より大切なものだからな父があんなになったのがやっとわかったよ」

 今までは母が亡くなって生きる屍とかした父を心底嫌っていたが‥言い伝えによると番を得てその番を失った竜人は持っていた魂玉が砕け散ってしまうと言われている。

 もしミルフィが俺より先に死んだら‥

 そう考えただけで腹の底がぐるりと裏返るような気がした。

 俺の中心には魂玉があるって言うけど実際にそれを見た事はない。

 ほんとにそんなものがあるんだろうかとも思う。

 確かに始祖の竜だったアプラスにはあったのかもしれないが‥



 「そうだ。ミルフィさんと言えばあの管理官何だか彼女に気があるみたいですね。何やらこっそり彼女に頼みごとをしてましたよ」

 俺はミルフィに嫌われたくないので職場にまで押し掛けることは出来ないのでその分クレイブにミルフィの身辺警護を頼んでいた。

 先日は偶然ミルフィの匂いを感じて近くにいると分かって見に行ったら、マジ危なかった。

 あいつ油断も隙もない。俺が言合わせなかったら!

 「クレイブ。お前なぁ、あの時俺がいたから良かったものの、そんな時は即座に相手を排除しろよな!」

 「でも、リントさんそばにいたじゃないですか。それにあいつ何やら彼女に頼み事をしてたんですよ。だからその話を聞き出そうかと‥」

 「何だって?何でそれを一番に言わないんだ!それであのマクフォールとか言う奴は何だって?」

 俺のミルフィに内密で頼み事するなんて、ふざけてんのか! 

 もしおかしな態度をしたら許さん!!


 「ええ、何でも今度の休日に自分の領地に来てほしいって、病人の治療をして欲しいみたいですよ」

 「あいつがそんな気の利いた領主に見えるか?ミルフィを誘い出して何かしようとしてるに決まってるだろ!」

 「まあ、そうかもしれませんけど、でも、言い寄られて彼女も負けてませんでしたよ。上司の権限を振りかざして横暴だって。俺、惚れ惚れしましたよ」

 「クレイブ。お前一度殺さなきゃな!」

 「ちょ、勘弁して下さいよ。リントさんの番は実にいい女だって言ってるんですから。人の番に手を出すバカはいませんよ。ったく!」

 「分かっていればいい。クレイブ、お前はミルフィから目を離すな。俺は仕事があるからそばにいてやれないからな」

 「それにしても一国の王子が何でまた食堂の手伝いなんか‥」

 「ミルフィがそうして欲しいって言うからに決まってるだろう?お前、愛しい女の頼みを断れると思うか?それに俺は頼りにされてるからな。ミルフィがうまい料理を給餌もしてくれるって言うご褒美もあるんだ。こんないい仕事止めれるわけないだろう!!ったく」

 俺は信じられないって顔でクレイブを睨みつけてやった。おまけに今日は勢い余ってキスまで‥くぅぅぅぅたまらんな!


 「‥チッ!恋は盲目ってやつですね。無理やり食堂に押し掛けたくせに‥殿下のエプロン姿をミュベール公爵が見たらなんて思うでしょうね‥」

 「絶対に秘密だからな。もし裏切ったらお前殺すぞ!」

 「はいはい、わかりましたから‥じゃあ、明日も監視やっと来ますんでリントさんもお仕事頑張ってください。じゃ、俺はこれで失礼します」

 「ああ、パン持って帰れ」

 「いいんですか?」

 「ああ、俺はもう腹いっぱいだからな」

 「すげぇうまそうなパンじゃないか。俺、こんなこんな柔らけぇパン初めてですよ。うまそう!!」

 クレイブは滅茶苦茶嬉しそうに部屋を飛び出して行った。

 まあ、竜人って言うのは食事にはほとんど関心がない。腹さえ膨れりゃいいって思ってるからな。

 そう考えたらクレイブも料理の味を少しは覚えたって事か?まあ、この国も料理もピュタールよりかなりましだからな。

 それにしても、ミルフィの作り料理を食ったらもうあれには戻れないな。俺は絶対ミルフィを手に入れて見せる!

 クレイブにはミルフィの料理はご法度だな。ありゃ竜人を狂わせる料理だからな。

 俺はにやにやしながらそんな事を考えた。











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