14魔力判定
翌朝私はマヨネーズがあるならサンドイッチに使えると思い立ち、朝から奮起してかなりの量のサンドイッチを作った。
マヨネーズに少し辛子も足してみた。
「マベル、これ今日のランチにどうかな?」
「これもミルフィの?」
マベルがサンドイッチを一切れ頬張る。
「こ、これは‥これ食べたら今までのサンドイッチは食べれないかも知れませんね。でも、いいんです?ミルフィこの調味料ってずっと手に入るんです?」
私は少し恥ずかしかったが手をかかげてマヨネーズと念じる。
あっという間に手の中にマヨネーズの瓶が握られている。
「何故かいきなりこんな力が使える様になったのよ。それに昨日は治癒魔法が切れきれっで使えたし、何だかびっくりなんだけど取り敢えず使えるものは使わないと」
「まあ、そうですけど、ちょっと心配ですね。そうだ。このサンドイッチは職場に持って行かれたらいかがです?店で出すのはしばらく様子を見てからでも良いでしょうし」
「さすがね。ええ、マベルの言うとおりにする。じゃ、今日の昼は職場のみんなに分けて食べるから」
そんな訳で私は職場にサンドイッチが大量に入った籠を持って行った。
昼休憩がやって来た。
「あの‥皆さん、もし良かったらサンドイッチを作って来たのでいかがです?」
すぐに嬉しそうな顔をしてレドス君が近づいて来た。
「うわっ、うまそうなサンドイッチだな。あれなんだかいつもと違う匂いしてないか?どれ、早速!」
「さあ、皆さんも良かったら」
私は手招きをしてみんなにサンドイッチを振る舞う。
もちろんチャムナさんもサンドイッチを手にしている。
何だかうれしい。
「おっ、旨そうだな」
そう言ってマクフォール管理官がサンドイッチをつまむ。
「う、まぁ~、なんだこれは?こんな旨いサンドイッチは食った事がない」
目を白黒させて驚きを爆発させる。
「良かった。みんなに喜んでもらえて」
「そう言えばミルフィ、昨日はご苦労だったな。聞いたぞ。みんなの傷をあっという間に治したそうじゃないか。君がそんな魔力があったなんて聞いてないぞ。学園で魔力測定があっただろ?そんな魔力のあるやつが、なんで庶務課なんかに回されたんだ?」
管理官が言うのも無理はない。
この国でも魔力を持つものは全員魔力測定を受ける事になっている。
学園に入るとそれは一番に行われる事で、私も受けて微妙な魔力量だと判定された記憶がある。
昨日は咄嗟のことで何も考えてなくて、必死だったから、困った。何て言えばいいんだろう?
私だって信じれないんだから。
私は口ごもった。
でも、マクフォール管理官はお構いなしに「午後はお前の魔力測定をしに行く。わかったな?」
「はい」
午後一番にマクフォール管理官と魔力判定の検査に向かった。
部屋に入る。中は窓もなくうす暗い。まがまがしい水晶玉が部屋の中央に置いてありランプの光を反射して鈍く光っていた。
魔力判定機の水晶玉に手をかざすと台のそばにある時計のような判定機が数値を示すという仕組みのものだ。
私は思わずごくりと唾を飲み込む、おずおずと手を差し出せばすぐに数値が跳ねあがった。
うそ‥前に判定を受けた時とは月と鼈ほどの違いだ。
そして結果はもちろん上級魔法力ありの判定。
私、一体どうしたんだろう?確かに元は貴族だから多少の魔力は持っていたけどここ数日の変化について行けない。
管理官が上機嫌で話しかけて来た。
「ミルフィ、こんな魔力があるなら是非ともやって欲しい事がある。他の奴らには極秘任務なんだ。いいな?」
魔力判定の場所は政務局の3階で政務課の奥の部屋だ。
私は早くここから立ち去りたいとすぐに席を立つと急いで部屋を出ようとした。
あいにく人はもう私達だけで‥
「おい、ミルフィそんなに急がなくてもいい」
「いえ、管理官。私は仕事がありますので」
事実だった。昨日の事故の後処理でチャムナさんは忙しそうだった。
幸い怪我は治せたけどショックはかなり大きかったはず、それにチャムナさんは自分がもっと早く確認に訪れていればと口にしていた。
きっと真面目で責任感の強い人なんだと思った。だからこそ少しでも力になりたいと思う。
「まあ、昨日の事で庶務課は大忙しだがミルフィのおかげで大惨事を免れたんだ。それにあんな差し入れまで‥ありがとう」
「いえ、私もまだ半信半疑なくらいで‥お役に立てて良かったです」
いきなり管理官の顔が目の前に迫って来た。
ちょ!なに?
見惚れるような顔が目の前に晒され私は唖然とした表情でそれを見上げている。
金色の髪は窓から差し込む光でキラキラと輝き湖面を思わせるような濃い碧の瞳を長いまつ毛が縁取っている。
うわっ、ちょっと近くないですか?




