13俺の番と出会うまで(リント)
俺はリント・アル・フォン・ヴァルデマル。
竜人で国は竜人国のピュタール国だ。
それで俺は竜帝の子どもで第二王子だが、上には竜帝である父ルブル・アル・フォン・ヴァルデマルと王妃メデスとの間に出来た王位継承一位の兄ジュードがいるが何しろ病弱だ。
俺の母は平民だったが父である竜帝の番と分かり俺が生まれた。
でも、王妃から激しい嫉妬を受けて母は毒殺された。
ピュタール国はこの大陸で一番力を持っている国でその始まりは5000年以上も前と言われている。
この世界に竜が降臨して人間に恋をした竜が国を作ったと言われており始祖のアプラスと人間の女レアがピュタール国を作ったと言い伝えられている。
そしてアプラスは魂玉という宝珠をもっており物凄い竜力を持っていたらしい。
そして二人の間に出来た子供も同じく魂玉を持って生まれたらしく竜人ではあったが絶大な力があったと言い伝えられている。
だが、竜人としてピュタール国を収める竜帝は長生きではあったが番と巡り合うのは並大抵ではなかったので、何代か後の竜帝の代には番が現れず別に愛した女性を娶りその子どもに次代を引き継がせて行くことになった。
そうしているうちに番との間に出来た子供にだけが魂玉を持って生まれることが分かった。
番でない相手との子供には始祖の竜帝の力が引き継がれない事がわかったのだ。
それがわかると竜帝は竜帝の血を引き継ぐもので番を娶ったものが竜帝を引き継ぐようになった。
だが、それも長くは続かなかった。
番に巡り会えない時代が続いたのだ。
それでここ3代ほどは竜議院で竜帝の血を濃くものから竜帝が選ばれていた。
だが、今の竜帝に番が現れた。
そしてその子供が俺だ。
番と魂と身体の契りを交わした竜人の魂玉はそこで最大限の覚醒を遂げるらしい。
これはお互いが愛し合い求めあって初めて遂げられる神事とも聞く。
その神事は創始のアプラスの前で誓いを述べ行われるものらしくその竜人はアプラスの力を引き継ぐことになり、いわゆるこの世で最も力を持つ竜人となってピュタール国の竜帝として君臨すると言われている。
絶対的な力を持つ竜帝はこの世界の安定をもたらすとも言われている。
まあ、これはあくまで言い伝えだが。
まあそんな訳で‥始祖の時代の習わしに元すなら次期竜帝は俺となるべきはずだが、どの国にも勢力を持つ貴族がいるんだ。
結局王妃の父であるロイ・キンリー公爵家が激しく反対をした。
キンリー公爵はピュタール国の前竜帝の従兄弟でもあり竜帝の選定にも最後まで残っていたほどの実力の持ち主だった。
竜帝に番が現れて一番慌てたのはキンリー公爵だったのだろう。
そう言うわけで俺は生まれた時から命を狙われて来た。母が生きているうちはまだ良かった。
父の竜力が俺達を守っていた。
だが俺が8歳の時とうとう母は病で亡くなった。それも毒を盛られたのだろう。
竜帝である父は番を失い抜け殻になってしまった。
それを待っていたかのようにキンリー公爵が表に出て来た。
俺の後継者には竜帝の弟でもあるアレクス・ミュベール公爵がなってくれたがキンリー公爵の力は大きかった。
俺はミュベール公爵から自分の身を守れるようにと毒の耐性を付けられ持っている竜力を最大限活かす事を教えられた。
そのおかげで近づく敵を察知出来るしそれに対する防御も出来るようになったがアレクス・ミュベール公爵がいなかったらどうなっていたかわからない。
それにもう一人従者のクレイブと言う男もいて俺は今まで命を繋いできたようなものだった。
おまけに最近では兄ジュードの婚約者のカロナにまで言い寄られる始末だ。
そんな時俺もそろそろ身をまとめたらと話が出て令嬢を紹介された。
その頃の俺はもう狙われることにうんざりしていたし番に出会えるのも無理だろうと思っていた。
俺も油断していた。
メヒナ・イエリン。大きな商会の令嬢で貴族とは関係ない相手だった。だからその話の乗った。
その席に罠が張ってあった。
俺はかなり強烈な毒薬を浴びせられ意識が混濁したところに、いきなり角を折られて竜力をほとんど失った。
その時ピュタール国のすべてがいやになった。
ただ一人従者のクレイブだけが俺を連れて逃げてくれた。
その避難先がマニール国だった。今思えばそれは運命だったのかもしれない。
俺は力を失って子どもの姿になっていた。毒薬は霧状になるもので毒煙を吸い込んだ喉はひりついて声も出なかった。
そんな俺を見つけてくれたのがミルフィだった。
俺は微かに匂うその甘い香りに胸の奥がズクンをうごめいた。
こんな時に?まさか?まさかだろ!
竜力を失っていてもこの疼くような香りを間違うはずがなかった。
身の奥に確かにある竜人の性が。
しなびた力がむくむくと湧き上がっていくように俺は彼女を力強く見つめていた。
ミルフィは俺を連れて家の中に入って‥俺の頬の傷を自分の唾で‥その瞬間全身に稲妻が駆け抜けた。
俺の番だ!!
身体中がそうだとビンビン感じて。
そんな俺にミルフィは食事を給餌してくれた。
これはもう俺を受け入れていると思っていいのかと思うだろう。
おまけに俺の番。俺と同じ髪色。瞳の同じだなんて。一体どんな偶然なんだよ。
俺の身体の中心にある魂玉がビンビンしてもう暴発するんじゃないかって心配だったけど、まあ、魂玉が破裂したなんて文献は読んだこともないから問題ないだろう。
その夜俺は彼女のベッドで一緒に眠り、夜中に彼女は俺を誘ってきて‥
俺はまさに天国に昇るような気持ちになったのはわかるだろ?
彼女に求められるまま俺はミルフィとひとつになった。
もう夢のような一夜だった。
なのに!
彼女は朝目覚めると俺を拒絶した。
俺は信じれなくて何度も彼女に愛を告げた。でもだめだった。
だけどやっと巡り合った番を手放すはずもない。それに彼女とは一度身体を繋いだ。
俺の力はミルフィと繋がったわけでそのおかげか竜力もかなり戻っている。
だからミルフィの居場所は感じる事が出来るしいざって時には転移で助けにも行く事だって出来る。
それに彼女が欲しがっているものだって俺には与える事が出来るんだ。
だから今夜だって。
ミルフィがコショーが欲しいって願った。
コショーは5000年の歴史を持つピュタール国に転生者が持ちこんな調味料だ。他にも唐辛子やマヨネーズ、醤油にラー油、みりんに味噌って言うものまである。
すべて異世界からやって来た人間が元の世界を懐かしんで再現した調味料だ。
さすがにハンバーガーやラーメンは文献で読んだ気はするが出してはやれないが調味料なら大抵のものはピュタール国で管理してるからな。俺は調味料のある食品庫からそれを念じて移動させるだけでいい。
何しろ転生者が苦労して作ったらしいから今も大切に管理がしてある。
今まで使いもしないあんなものを管理して何の得があるんだって思っていたがこの日の為だったのかと感謝する。
それにしてもミルフィがあんなに料理のセンスが抜群だったなんて俺はなんてラッキーな男なんだ。
あの、肉は一体どうやってあんなに?今まであの調味料にそんな事が出来るなんて知らなかった。
卵とマヨネーズがあんなに絶妙なハーモニーを奏でるなんてはじめて知ったぜ!
ったく、肉じゃがってあんな味だったのかよ。マジやべぇ。
こうなったたら、何がなんでもあいつを俺のものにしなくちゃな。
ミルフィは番の猛愛がどれほどかを知らないんだろう。
いいか、ミルフィ。俺は君の心を絶対に掴んで見せるからな。覚悟してろよ。
愛してる。俺の唯一俺の‥俺の番ミルフィ~!!!




