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ピリ辛×ちょい甘+コク=猛愛?一夜を共にしたからっておかしくありません?  作者: はるくうきなこ


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12/40

12いきなりおかしな力降臨


 その夜の食堂は私は裏方に徹した。

 リントは注文を聞いて食事を配り食べ終わった皿を下げた。

 私はむしゃくしゃしながら野菜を切った。

 はぁぁぁ~こんな時はとびっきりスパイスのきいたピリ辛料理が食べたい。

 チキンにスパイシーな香辛料をまぶしたやつとか、麻婆豆腐なんかもいいし‥ううん、そんなのでなくても肉にコショー振りかけてニンニクで香りづけした。

 あぁぁぁぁ~

 私は無造作に手を伸ばした。

 何かが現れた。

 缶に入ったコショーが。

 どうして?私、今何した?

 どうしようもなくコショーが欲しいって思った。けど。

 そしたらコショーがいきなり?

 そうだ。

 今度は唐辛子とか欲し~い!!

 私はふざけてまた手を上に差し伸ばした。

 またしても瓶に入った一味唐辛子が手の中に現れた。

 これって‥魔法で?こうなったらハンバーガー欲し~い!!

 何の変化もない。

 じゃ、キムチ欲し~い!!

 またしても現れない。

 ラーメン欲しいよ~!

 だめか。

 じゃ、マヨネーズ欲し~い!

 がさっ、現れたのは瓶入りマヨネーズ。

 じゃあ、今度は醤油欲し~い!

 またまた瓶に入った醤油が現れた。

 ああ、生の食材は無理って事?それとも調味料オンリー?

 


 それから色々な食材を脳内で願ってみたがどうやら手に入るのは調味料の身だと結論が出た。

 それでも、調味料があれば大抵の料理が作れるわけで‥これって革命じゃん!

 


 それから私は気が狂ったみたいに卵サラダを作り豚肉のピリ辛たれ焼き(いわゆる焼き肉風)そして肉じゃがを作った。

 

 気づけばもう食堂は閉店時間を迎えていた。

 「ごめんマベル。私ったらすっかり料理に夢中になっちゃって」

 「ミルフィそんなの気にしなくていいですよ。店はリントさんがいてくれたから」

 ああ、そうだった。あいつか‥

 「はぁぁぁ~さすがに疲れた。腹減った」

 リントが最後の食器をトレイに乗せてキッチンに入って来た。

 「マベルさん、これで食器は最後です。俺、テーブルとか拭いてきますから‥グゥ~‥すみません。あれ?これは?すげぇいい匂いじゃないか」

 突然リントが私が作った料理に食いつく。


 私は思わず調理台に乗った料理の皿を一つ持ち上げた。

 「やべぇ~すげぇうまそうな匂いが‥ミルフィちょっとその皿見せてくれよ。まさかお前が作ったのか?」

 信じられないと言う風な顔で私をまじまじ見つめて迫って来る。

 「ちょっと、近づかないでよ。これは私が食べようと思って作った料理なんだから!あなたなんかにあげないわよ」

 「そんなぁ、頼むよ。こんないい匂いを嗅いだらもう我慢できないだろ~?」

 リントが甘えた声を出してすりすりする子犬みたいに見えるのは気のせいだろうか?


 「それにしてもほんとに美味しそうな匂いですね。さっきからミルフィが一生懸命作っていたのはそれだったんですね。私も一口頂きたくなってきましたよ」

 マベルがにこにこ笑ってそう言った。

 「もちろんマベルにはあげるつもりよ」

 「だったら俺にもくれよ」

 頬を膨らませて口をとがらせるリント。

 ぶっ!可愛い。

 大きなずうたいのくせして、角は折れた竜人のくせして、子供みたいに甘えん坊で、じゃれつく子犬みたいで‥

 あっ、もう!

 「わかった。わかったから、あなたも食べていいから」

 「ほんとか?俺にも分けてくれるのか‥あ~ん」

 しゅんとした顔がぱぁっと輝いて緋色の瞳は嫌いだったはずなのにリントの目はものすごく輝いてきれいで。

 思わず見とれてしまう。

 

 「な、何よ。その口は?」

 「だって俺達番だろ。だから給餌は愛の証だから‥あ~ん」

 「だから番じゃないって言ってるじゃない。ここに置くから自分で食べなさいよ」

 私は皿を置くと急いで料理を取り分けた。

 三等分した焼肉もどきの肉と卵サラダ。鍋にあった肉じゃがも添えて行く。

 「すげぇ、三種類もあるのか。ミルフィどれもいい匂いだ。あ~んして欲しかったけどこの料理を前にしたらもう我慢できない。いいか食べても?」

 失礼なのか礼儀正しいのかさっぱりわからないリントの言動だが。

 「ええ、一応食堂手伝ってもらったんだし‥そうだ。マベルさんも一緒に食べようよ。後片付けは私がやるから」

 マベルさんは皿を洗い場に持って行っていて。

 「そうね。じゃ、冷めないうちに頂こうか。それにしてもほんとにおいしそう」


 私達はキッチンの小さな丸椅子に腰を下ろした。

 「「「いただきます!」」」

 リントが肉にかぶりついた。

 「うっ!う、うまい!こんな肉初めて食った。何だこれ?絶妙にピリッとした味が‥やべっ、これいくらでも食べれる奴じゃないか!」

 それからは猛烈な勢いで肉、卵サラダ、その合間に肉じゃがを口にほおばって行く。

 私はそんな姿を見ているだけで心が満たされて行く。

 人が美味しそうに食べるってホントに幸せを感じるなぁ~。


 私も肉を頬張る。

 うん、うん、うん、うっ、ま~い!!!

 両手で拳を作って悶絶。

 マベルさんも一口入れると満々の笑顔で「お、おいし~い!これ止まりません。ミルフィ天才です」と大絶賛。

 それから3人ですべての料理を平らげて大満足。


 「いやぁ~食った。食った。こんなうまい料理初めてだ。ミルフィこれ以上俺の心を掴むなんてどうしてくれるんだ?俺はもうお前なしじゃ生きていけないぞ」

 「はっ?そんなつもりで食べさせた訳じゃないわよ。そんな事言うなら二度と出入り禁止にするわよ!」

 「そんな~マジそんな事されたら俺死ぬから。頼むからそれだけは‥」

 「まあまあミルフィ。それほど美味しかったってことでしょ。リントさんも直球すぎるからよ。さあ、リントさんはヒュートの所に行ってゆっくり休んで頂戴」

 マベルはリントを立たせて表に連れて行く。

 リントも仕方ないとすごすご出て行く。背中を丸めてしょんぼりとして。

 何だかこっちが悪いみたいな気がしてそわそわして来る。

 彼は扉の所で振り返ると「ミルフィ、気を悪くしたらごめん。君の料理すごく旨かった。じゃあ、おやすみ」って言った。

 もう、そんな風に言われたら‥狡いじゃない。

 「わかったから‥もう怒ってないから。明日もマベルさんの事よろしくね。おやすみ」

 わかりやすいリントの顔がぱぁっと明るくなる。

 「ああ、おやすみミルフィ」

 

 なんて野郎だ!

 そう思いながらも憎からずって思ってしまう。

 それにしても私どうしてこんな力が使えるようになったんだろう?

 治癒魔法も調味料が湧き出て来るのだって‥







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