第二十四章
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王宮のパーティーは華やかに進んでいた。アルメリアは隣国の王女カトリーヌの隣で通訳となり、各国の要人や貴族たちと談笑していた。
『アルメリア、本当にあなたがいてよかったわ』
カトリーヌは心からの笑顔を見せ、周囲の貴族たちは、そんな王女殿下と対等に話すアルメリアの知性と教養に感嘆の眼差しを向けていた。しかし、そんな光景が面白くない者がいた。
「お姉様、よくもあんなふうに王女殿下に取り入って……」
セレナが少し離れたところから、アルメリアを嘲るように見ていた。
「まさか、自分が特別な存在になったとでも思っているのかしら?」
アルメリアはセレナと目が合い、静かにため息をついた。気付いたセレナが近づいてくる。
セレナは笑顔を浮かべながらも、その目は明らかにアルメリアに対して挑戦的だった
「お姉様、いつの間にか王女殿下とも親しくされているようで、少し驚いていますわ。以前のお姉様の姿からは想像もつきませんでした」
「セレナ、あなたが何を言いたいのかは知らないけれど、今はパーティーの場よ。言葉を選んだほうがいいわ」
その冷静な態度に苛立ったのか、セレナはさらに言葉を続けた。
「でも、王女殿下は本当にお優しい方ですわね。お姉様に声をかけてくださるなんて。きっとお姉様のことをよくご存じないのだわ」
セレナの声は、表面上は優しさを装っていた。アルメリアの目が一瞬鋭くなった。しかし、セレナの発言に対して直接反応することは望ましくない。
「セレナ、王女殿下とはお会いして以来、少しでも異国の文化を学びたくて親しくさせていただいています。それに、貴族社会のことも、まだまだ学ぶことが多いですから」
アルメリアは冷静に答える。
だが、セレナはその言葉をあざ笑うように続けた。
「学びたい、ですって? でも、私が見た限りでは、どれほど貴族らしく振る舞おうと、根本的な部分は変わらないと思いますわ」
その言葉にアルメリアの表情が一瞬固まる。だが、再び微笑みながら、冷静に答えた。
「私も日々努力しているつもりです」
そのやり取りを見ていた周囲の貴族たちは、次第にセレナの態度に違和感を覚え始めた。セレナがあくまで礼儀正しいふりをしているが、その中には明らかな皮肉と嫌味が感じ取れるからだ。何度も繰り返される微妙な挑戦的な言葉に、参加者の中には「セレナ様、少し厳しすぎるのでは?」という声も漏れ始めていた。
「そもそも、お姉様が王女殿下に失礼なことをされると、レグニエ侯爵家にとって汚点となりますわ。その自覚はおありかしら?」
セレナの声は、極めて礼儀正しいものの、その中に込められた意図は明らかにアルメリアへの挑発だった。
その瞬間、アルメリアの顔に一瞬の冷たさが漂った。しかし、再び微笑みを浮かべ、
「王女殿下とはかなり親しくさせていただいております。王宮へもよくご招待いただいておりますわ」
と答える。セレナはさらに言葉を続けようとするが、すでにその場の空気が変わり始めていた。周囲の貴族たちは、セレナの意図に気づき、彼女の態度に不快感を感じていた。
「そもそも、隣国の王女殿下があなたのような無能を気にかけるなんて、信じられませんわ」
その場にいた貴族たちの間にざわめきが広がった。アルメリアを庇う声も上がり始める。
「それは言い過ぎでは? 」「アルメリア様は語学に堪能で、隣国との交流に貢献されているのですよ」
しかし、セレナは周囲の反応など気にも留めず、なおも言葉を続けようとした。その時だった。
「黙りなさい!」
場を震わせるほどの強い声が響き渡った。カトリーヌだった。彼女は怒りを露わにし、セレナを鋭い目で睨みつけた。
「あなたは一体何様のつもり? アルメリアがどれほど優秀か、私が一番よく知っているわ。あなたのような人間が彼女を貶めるなど、見ていられない!」
セレナの顔が青ざめた。まさか王女殿下がこの国の言葉を理解し、直接叱責されるとは思っていなかったのだろう。
「そ、それは……」
言い訳しようとするセレナだったが、カトリーヌはさらに冷たく言い放った。
「あなたの言動は品位に欠けるわね。そんな態度をとる者が、貴族社会で尊敬されるとは到底思えないわ」
周囲は王女殿下がセレナに言い返すとは予想していなかったため、その言葉に驚き、また失笑を浮かべた者もいた。さらに、王族の一人が厳かな声で言い足した。
「このような無礼は、王家としても看過できない。レグニエ侯爵家の娘がこのような振る舞いをするとは、嘆かわしいことだ。」
その言葉に、セレナの母であるレグニエ侯爵夫人の顔がみるみるうちに青ざめた。周囲の貴族たちも、この場の空気を感じ取り、レグニエ侯爵家への不信感を強める。
「お姉様のせいですわ」
焦ったセレナは最後の悪あがきのようにつぶやいた。しかし、その瞬間、アルメリアの傍らに立っていたエヴラールが一歩前に出た。
「アルメリアにこれ以上無礼を働くのは、許しませんよ」
彼の低く鋭い声に、セレナは息をのんだ。エヴラールの強い視線に耐えきれず、彼女は後ずさる。
「セレナ、子どものようにだだをこねないでちょうだい」
セレナはその言葉に面食らったような表情を見せ、ついにその場で顔を赤らめた。
その瞬間、エヴラールがそっとアルメリアの側に歩み寄り、
「アルメリア、僕は君を誇りに思うよ」
と小さな声で言った。アルメリアは少し驚いたものの、すぐに微笑み返し、心から感謝の意を表した。
セレナはその一連のやり取りに、心の中で強く反発を感じたが、表面上は気丈に振る舞い続けることに必死だった。しかし、その場に集まっていた貴族たちの目が次第にセレナに向けられ、彼女がどれほど演技をしても、もはやその偽善的な態度は隠しきれなくなっていた。
王女殿下の言葉とアルメリアの堂々とした態度が、セレナにとってはさらに堪え難いものとなり、周囲からは次第に失笑の声が上がり始めるのだった。
そこへ、カトリーヌが改めてアルメリアに向き直る。
「アルメリア、あなたの家族があなたを侮辱する場面を見てしまって、とても胸が痛みます。あなたのような素晴らしい人が、不当に扱われているなんて」
王女の言葉に、周囲の貴族たちも同調し始めた。
「確かに、レグニエ侯爵家の言い分は疑問ですね」
「今までのアルメリア様に対する評価も、正当ではないようですね」
「こんなにも優秀な令嬢に対する態度ではないですね……」
「跡継ぎをセレナ様に変えられたと言うことですけれど……よろしいのかしら?」
次第に、レグニエ侯爵家への評価が急落し、彼らの立場は危うくなっていく。セレナと侯爵夫人は人々の冷たい視線に晒され、立ちすくんだ。
こうして、セレナの傲慢な態度は王族と貴族の前で完全に否定され、レグニエ侯爵家の立場も急速に崩れていくこととなった――。




