65食目、マルゲリータピザ
「王様、王妃様お待たせしました。マルゲリータピザでございます。ただいま、切り分けますので少々お待ちを」
ユニは王様と王妃様の目の前にピザが乗った大皿を置く。そして、円形のピザカッターを手にピザを八等分に切り分ける。
初めてピザを切り分けるにしては均等に切り分けられてる。実は配膳される前に軽くピザカッターの使用方法の手解きをカズトがしてあげた訳だ。
「お待たせしました。八枚に切り分けましたので、どうぞお召し上がりください」
「ふむ、これはパンの一種かのぅ。それにしても、その衣装良く似合ってるのぉ」
「ありがとうございます。それでは、ごゆっくり」
隣に王妃様が座ってるのに、王様は実の娘のように可愛がってるユニをネットリと舐め回すかのように見てる。それに気付かずか無視か、ユニは踵を返して厨房へ戻って行く。
地球とこの世界の住人とでは女性服の美的感覚が大分ズレテるようで女騎士のビキニアーマーや踊り子服等はほぼ特に何も性的に感じないらしい。多少なりには振り向く程度だ。
その逆にこの世界に存在しない服装はほぼ全部カズトが【異世界通販】で揃えた。どうやら地球産の服が魅力的に見えるようで、この世界の男性共はついつい目で追い掛けてしまうようだ。
「あなた、こんなに柔らかいパンなんて初めてよ」
「おぉ、そうだのぉ。城へ帰ったら料理長に作らせて見るかの」
王様は城へ帰ったら早速料理長に作らせようと思案するが、おそらくそれは無理な話だ。
地球みたくパンの製法が確立されておらず、パンに必要なイースト菌すら発見もとい理解されてない。というより、菌という小さな生物がいるとは知られていないのだから。むしろ、誰かが発見しても容易には信じられないだろう。
王城に帰宅後、調理について素人な王様は料理長に作らせようと何度も試行錯誤に調理させるが、どれも失敗に終わる。それでも諦め切れない王様は後にレストラン″カズト″に来る頻度が増える事になるのは先の話だ。
もちろん、一瞬でレストラン″カズト″に来れる御守り型魔道具・扉転移の御守りを使い護衛の者をつけずにお忍びとして来る事になるが、それは城の者には話してない内緒の話だ。
扉転移は、ミミが開発した魔法で扉を介して扉がある場所なら何処にでも繋げられる。ただし、予め潜る扉と転移先の扉を繋げ━━━設定する必要がある。名前は、まだ仮で良い名前があったら募集中だ。
それを容易にしたのが魔道具であるこの御守りだ。転移先をレストラン″カズト″に設定されており、後は潜る扉は何処でも良い訳だ。王様には、既に渡してあるので何時でもここへ来れるのだ。帰る際は再度扉を潜らない限り設定は解除されないので安心だ。
「はむっモグモグ………この白いのがトロッととろけて………モグモグ………美味じゃのぉ」
「そうね、あなた。この白いのが伸びて不思議な食感だわ」
チーズが伸びる食感が実に楽しく、それでいて美味だと喜んでくれた。
この世界は牛乳は出回ってはいるが、冒険時にも乳製品は一切見た事がない。ミミにも聞いた事あるが、首を傾げ知らないらしい。乳製品を含め他の発酵食品はこの世界にほぼ存在してないらしい。
乳製品を含め他の発酵食品は、地球の歴史の中でも生活をする中で偶然発見したものだ。
まだ流通━━━知られていないという事はその″偶然″がまだ為されていない事になる(エールは流通してる)。
なら、今なら乳製品を含め他の発酵食品(エール以外でも、こちらには生ビールがある)を独占出来るのではないかとカズトは思う。
だが、カズトはこの店内だけで留めようと思っている。ただし、出張的な要請があればそれ限りではない。レストラン″カズト″が良い意味で噂になるなら悪い道でなければ、何だってやるつもりだ。
その逆に悪い噂やこの店に悪い事に利用しようとするなら、それをとことん潰すまでだ。
そう考える内にピザが焼き上がる。
「は~い、次々と出しますよ。こちらはボスカイオーラピザ(キノコを贅沢に使ったピザ)、こっちはディアボラピザ(悪魔風ピザ)でございます。レイラ、カットお願い」
「はーい、失礼いたします」
慣れた手つきでピザを八等分に切り分けるレイラ。マルゲリータとは違う匂いでこちらも食欲がそそられる。何の迷いも無く王様と王妃様はピザを手に取る。
「護衛の方々もどうぞ。まだまだ出ますので」
「いえいえ、我らは護衛の任務がありますので」
騎士隊のリーダー(レイラなら名前を知ってるであろうが、カズトは知らない)は一旦断る反面、口内に涎が溜まり決壊寸前だ。俺は王様にアイコンタクトを送り、王様はコクリと頷く。
「そなたらも食べれば良い。この店は安全だしの」
「有り難き幸せ。おい、お前ら許可出たぞ」
リーダーは王様に謁見するよう膝をつき顔を下げた。王様の前で話す時に膝を地面につかないと、処罰の対象になるらしい。悪くなれば物理的に首がとぶ。
騎士隊隊員は、許可が出た途端に無我夢中で手を伸ばし頬張っている。王様の前なのに、もっと静かに食べて欲しいものだ。




