62食目、ユニが戻って来た
アイテムボックス内にあった〝チョコチップクッキー〟を全部シロに奉納しカズトは自分の職場・レストラン〝カズト〟に戻って来た。
天界というべき場所に行ってる間は時間停止してるので、一部の者を除き誰もカズトが居なくなっていた事は気付いていない。それによってか、たまに天界に行ってから元の違う箇所にいると驚かられる事があるので注意が必要だ。
「流石は元料理人か。手際が良いな」
ブランクがあるとは思えない程、獅子之助の包丁捌きでは魚を卸すのが早い。魚に関しては俺よりも早く正確かもしれない。魚が気付くのが遅れたかの様に切った後に血がジンワリと流れるのだ。
「一度覚えたもんは体が覚えてるもんだな。こんな基礎的な事が出来なくて何が和食料理人だ」
え~っ、相当な高等テクだと思うだけどな。
俺でさえ料理の聖剣エックスを意識して100%━━━いや、150%位の力を引き出さない無理だと俺は考える。出来るけど、それは相当な集中力が必要で出来もなくはないが、毎日は無理だ。
毎日違う味を出していてはレストランとして失格なので、カズトは諦め魚貝類の調理を獅子之助に全部丸投げしようかと一瞬思ったが、ギロっと獅子之助がこちらを睨んで来たので止めた。
「何か言われた様な気がしたのだが?」
「いえ、何でもない。ただ、獅子之助のアジの三枚卸しに惚れ惚れしてただけだ」
刀の技術だけではなく、見切りを主とする闘い方からかどうしても勘が鋭いみたいだ。まったく、勘が鋭いのはウチの嫁だけでいいのに。
「誉めても何も出ないぞ。このやろう♪」
誉められる事に慣れてないらしく、獅子之助の頬が朱に染まりツンデレぽい口調で照れまくる。包丁を持った手で髪を掻くから危ない。
女性のツンデレは可愛いくて役得だが、男性のツンデレはただキモいだけで誰得な感じで目が腐る程だとカズトは思っている。まぁ本人は喜んでいるようだしヨシとするか。
☆☆☆☆☆
昼間のピークが過ぎた頃、みんなで賄いを食べようと作る準備を一人で進めていた時バァーンと厨房の裏口のドアが勢い良く開け放たれた。
ドアを開けた犯人を見てカズトは驚きを隠せないでいる。
な、何と一ヶ月前に王様や騎士団の幹部達に騎士団を辞めると説得するため王都に出向き、一週間前に戻り副隊長を説得するためカズトと副隊長が決闘する事になった。
もちろんカズトが勝利を修め再び正式な手続きをするために再び王都に出掛けていた元赤薔薇隊隊長ユニだったのだからだ。
「カ~ズ~ト~、ずっと会いたかったぞ」
勢い良くカズトにダイブし抱き締め頬ずりをしてる。相変わらずデカイ胸をしており、俺の顔をその豊満な胸で沈没させ窒息しそうだ。でも、赤薔薇隊に所属していた時とは違いビキニアーマーは装着しておらず、代わりに質素な白いワンピースを着ている。
「ぷはぁ~」
だから、俺は窒息しそうになった訳だ。ビキニアーマーだったなら痛くて悲鳴をあげていた事だろう。ていうか、俺の顔が変形していかもしれない。
どうにか俺は顔を上げる事が出来、窒息は免れた。が、まだ苦難は続く。
ユニは赤薔薇隊の隊長をやっていた事だけはある。凄い力で抱き締められ別のところが悲鳴をあげている。来てくれた事は嬉しいが、もうそろそろ離して貰わないと本当に永眠してしまう。
「ユニ、ギブギブ離してくれ」
パンパンと肩甲骨当たりを叩いた。それに気付いたユニは離してくれて助かった。もう少し遅かったら内臓が出ていたかもしれない。
「す、すまない。つい、カズトに出会えた事が嬉しくて」
頬を赤らめモジモジと指を弄り、体型や顔は変わってないはずだが、ずいぶんと女性らしく可愛らしくなったと思える。ていうか、その仕草にカズトの男心がズキュンと射ぬかれた。
ユニが赤薔薇隊にいた頃は、時々性的に誘われたり無理矢理に既成事実を企んだりとされたもんだが、今のユニはそういう欠片が見えない。まぁ俺の嫁となったからには、その必要なくなった訳だからな。
「いや、俺もユニに会えて嬉しいよ。それにしても、一人で来たのか?」
いくら元赤薔薇騎士隊に所属していたとはいえ、こんな無防備な格好では道中危険ではなかったのか?まぁユニなら襲って来た輩を逆に返り討ちなんて簡単だろう。
「いや、今日は青龍隊の隊長と隊員で店に来たのよ。私は早くカズトに会いたかったから裏口から来たの。迷惑だった?」
首を傾げ潤んだ瞳でカズトを見詰める。
そ、そんな表情で見られたら迷惑とは言えないじゃないか。むしろ、迷惑ところか嬉しい。
「いや、迷惑なはずがないじゃないか。むしろ、嬉しいというか、ユニってそんな服を持ってたんだな」
「似合わぬか?赤薔薇隊のみんなに選んで貰ったのだが」
むしろ、似合い過ぎて怖いくらいだ。麦わら帽子を頭に被って向日葵畑にいたら絵になると俺は思う。着る物が違うとこうも印象が違くなるとはな。




