279食目、VIP席
「ここが俺達の席か。これ間違いじゃないよな?」
タケヒコから渡されたチケットの番号通りの席に辿り着いた。
だが、誰がどう見てもVIP席だと思う完全個室の席だ。椅子は、ピッタリと人数分。軽く軽食が食べれるようにテーブルも設置されている。
「間違いないっすよ。苦労したっすよ。マジで」
「そりゃぁするだろうよ。これは、どう見てもVIP席じゃねぇか。貴族や王族が来るようなとこだぞ」
カズトは、思わず叫んでしまうが周囲に防音の結界が張ってあるので、ここに居る者以外聞こえない。
「逆に目立ってしまうだろうが」
「兄さん兄さん、ここは逆に考えません」
「逆に?」
「そうですそうです。ここでなら、何をやってもバレないと」
一般席なら剣闘士として出場したケンゴを密かに監視し、バレないようタケヒコの分身を向かわせる必要があるが、ここでならそんな必要がない。
「はぁ、リンカの顔を立ててやるが………俺らが来てる事、既にバレてると思うぞ」
VIP席のチケットを取得するためには本名を明かさなければならない。偽名は通用しないらしい。
「まぁ良いじゃねぇか。こっちには勇者4人もいるんだぜ。それに、ここなら音は漏れない」
来てる事はバレてるが、VIPルームでの行為はバレない。タケヒコは、自らの毛を数本抜き、フッと息を吹き掛けた。
「よし、お前ら今から出て来るケンゴにバレないよう張り付け」
ウキーッウキーッ
ミニタケヒコがVIPルームから出て行った。
「始まるようだな」
『レディィィィィスジェントルゥゥゥゥゥメェェェェェン。長くお待たせ致しました。聞いている方もおるではょう。今宵、予定していた闘技は全部キャンセルして特別な戦いが繰り広げられる事を。ご登場して頂きましょう。赤コーナー、全勝無敗を貫き通す我がクイーンの登場だぁぁぁぁぁ』
司会者のコールと共に白い煙が吹き出ると、バク転やら空中での4回転だの新体操選手も顔負けなパフォーマンスをしながら出てきた1人の褐色肌の美少女がコロシアムの女王。
『圧倒的な人気とその美貌。この国で知らない者などいないコロシアムの女王………アンリ様だぁぁぁぁぁ』
コロシアムの女王もとい、アンリは360度観客に向けて手を振りながらステージの中央へ登る。
『そしてぇぇぇぇ、情報によりますとアンリ様の対戦相手は驚きのお相手です。では、ご登場して頂きましょう。白コーナー、魔法大国マーリンの戦いより行方不明となっていた銃の勇者ケンゴォォォォォ』
白い煙が吹き出ると、人影が歩いてステージへ来る。アンリより歓声はないが、VIPルームにも響いて来る。
白い煙が晴れるとカズト達は目を凝らし見詰めると、確かにケンゴ本人で間違いないと確信が持てた。噂は本当だったと。
『これ程の好カードは中々お目見え出来ない。えぇ、今入った情報ですが…………トトカルチョの倍率が出ました。アンリ様2.5倍、ケンゴ様3.1倍と接戦してます。これは、どっちが勝ってもおかしくないぞ』
司会者の紹介が終わると、ゴング鳴った。
「コロシアムの女王………アンリと言ったか?どれくらい強いんだ?」
無敗とだけ聞いたが、どれだけ強いのかハッキリ分からない。
「うむ、余も戦ってる姿を見た事ないな。だが、近接戦闘で右に出る者はいないと聞く」
「タマモもそんな感じぃ」
ふむ、概ね予想した回答だ。
「俺も調べた限り、女狂戦士族は近接に限りドラゴンさえも圧倒するという。それに、あの他に類を見ない好戦的な性格が強さに拍車を掛けてるらしいな」
あぁ見ていて分かる。こちらがゾクッと恐怖を覚える程に笑っているのだから。
「あれはヤバいな」
「リンカも怖いと思う。でも」
ペロリ
「楽しそう」
リンカが唇を舌で舐め、ほくそ笑んでる。
あぁ、リンカもそっち側なの忘れてた。でも、リンカの気持ちも分かる。
何故なら、顔に出さないだけでカズトも同じ気持ちなのだ。
「うげっ、お前らなんという顔をしてるんだ!」
「えっ?そんなにヤバい顔になっているか?なぁ、リンカ」
「リンカは知らない」
タケヒコが項垂れている。
リンカが言うんだから、リンカが正しい。
「先に動いたのはケンゴのようだな」
目に止まらぬ速さで銃を抜き撃った。見に来てる観客で見て取れたのは何人いる事だろう。
俺でもギリギリ目で追えている位だ。恐らく、ここのVIPルームにいる者ですら、意識しないと見失ってしまう程に。
2月中は、リアルな仕事の都合上、執筆困難なため休みたいと思います。
3月には、再開するのでお待ちしてくださいませ。




