274食目、ロコモコ丼
「ここで野営するか」
ナビの通りにすすんで来たら半分こくらいは進んだ。やはり転移魔法とかの魔法を除けば、地上での移動は科学の域を詰め込んだ自動車に限る。
「ねぇ、この前のキャンピングカーは?」
「今回は急ぐ旅だからな。馬力は、こちらの方があるんだ」
正直な話、キャンピングカーは移動+冷蔵庫やキッチンなどの家電にも電気を使う。それに魔力を使い疲れる事が、この前判明した訳だ。
暗くなる前にテントを張り、夕飯の準備をする。久々にお世話になる魔道具である自動で展開するシステムキッチンだ。
「何が食べたい?」
「お肉」
「儂は何でも良いぞ」
「カズトが作るのか?」
「あのご馳走も美味しかったわよね」
何にするかな。そうだ、ロコモコ丼にしよう。アイテムボックス内に、まだデュアルボアとニュウギュウの肉が入っていたはずだ。
それらを合い挽き肉としてフードプロセッサーで細かくミンチにしていく。
玉ねぎを微塵切りにし、キツネ色まで焼きミンチの中に投入、ニュウギュウの牛乳とフワフワのパン粉にコカトリスの卵を入れ混ぜる。
十二分に混ざったら野球ボールの大きさに持ち、左右の手の平でキャッチボールみたく空気抜きをするのと同時に成形する。その際に、チーズを中に仕込む。
成形したハンバーグのタネを鉄板の上に並べ、焼いて行く。
「良い匂いなのよ」
「くんくん、お腹減って来たぁ」
「これは誰も抗えないな」
「早く食わせろ」
「ちょっと待てって」
作ってるカズトさえ、ヨダレが出るのを我慢している。ヤバいな、普通に家畜として飼われてる豚や牛よりも魔物の肉の方が数倍美味しい程に、どの魔物の肉は最高級品だ。
ハンバーグが焼き上がる前にコカトリスの卵の目玉焼きを焼く。黄身の色が濃く、箸で掴める程に弾力がある。
目玉焼きにすると、その濃い黄身がより濃く黄色が目立つ。これだけでもメインを張れる程に存在感を醸し出している。
「よし、もうそろそろか」
ハンバーグの片面に焦げ目がついたら引っくり返し、もう片面にも焦げ目がつくのと同時に中にも熱を通さなければならない。
素人だと、焦げ目だけつくが中が焼けていない事が多い。表面だけ焼けて中が生焼けにしちゃう訳だ。
ステーキなら、それでも良いだろう。だが、挽き肉だと嫌な食感となってしまう。
でも、カズトはそんな失敗はしない。とある域に達してる料理人になると、食材の中まで把握出来るようになる。
「ご飯をドンブリによそってと」
アイテムボックス内に予め炊飯器にセットしておいた白飯をよそい、キャベツの微塵切りにコカトリスの目玉焼き、デュアルボアとニュウギュウのハンバーグを盛り付けた。
その上からハンバーグから肉汁をベースに赤ワインや各調味料で味付けを整えて、最後にトロミを付け足し上から掛けると完成だ。
「出来たぞ」
「うわぁ」
「ジュルリ、お、おいしそうなのよ」
「はしたないわよ…………でも、タマモの言う通りに、ヨダレが垂れそうね」
「ゴクリ、これは見事な………ここに酒でもあれば」
チラッ………チラッ………と、獅子之助がカズトに訴えかけるように視線を送る。
「はぁ……分かった分かった。ビールで良いか?」
「カズト殿、話せば分かる御仁よのぉ」
「酒とな?これは!昨日飲んだ美味しい酒じゃないか」
「しかも冷えてるのよ。昨日初めて冷えたエールを飲んで感動したのよ」
「リンカはオレンジジュース」
中世ヨーロッパに近いこの世界では、先ず酒を冷やす発想は中々浮かばないだろう。それに冷蔵技術が未発達で、食べ物を冷やして保存という事が難しい。
地下に作った冷暗所で保存食や冬の間に切り取った氷の塊を置いとく位ならあったらしいが、日常的に使う事はなかったそうだ。
「さぁ冷めない内に食べようか」
「「「「頂きます」」」」
ご飯に肉汁と半熟卵の黄身が混ざり、何とも言えない美味しさが口の中で広がる。
それに、このグレービーソースがまた美味さを倍増させている。
「お代わりっ」
「済まんが、お代わりを頼む」
「お代わりなのよ」
「儂もお代わりを」
「クスッ、俺もお代わりをしようとした所だからいいぞ」
お代わりがあると予想して、多目にハンバーグのタネを仕込んで置いて良かった。




