273食目、獣人国家アルカイナへ出発
明日出発のため、ご馳走を食べた後に早く寝た。フォルスの話によると勇者以外は連れて行けないらしい。
その理由は話してくれなかったが、獣人国家アルカイナに到着すれば分かるという話だ。
翌日
「悪いな。帰って来て早々、もう出る事になって」
「大丈夫」
「ミミ殿、儂も行っても大丈夫なのか?」
「勇者しか行けないのなら、カズトとリンカにシシノスケしかいない。メグミとココアがいれば、ここは大丈夫。ミミにお任せあれ」
ポンと胸を叩くミミ。ミミが言うなら任せよう。俺は、ご褒美としてミミの頭を撫でた。
ミミは何も言わずに俺に撫でられるまま口角が自然と上がり笑みを作る。
メグミとココアも勇者だが、まだ神樹の森フリーヘイムでの疲れが取れておらず、今回は留守番らしい。
「兄さん、これ獅子之助さんにとメグミが渡して来た」
リンカからアイテムボックス越しで手渡されたのは聖刀ライキリ。何故、聖刀ライキリをメグミが持っているなか?首を傾げるカズト。
「神樹の森で、敵が持っていたと」
「そうか。これは後で何かご馳走を作らないとな。ほら、獅子之助お前のだ」
まさか自分の聖武器が目の前にある事に衝撃で開いた口が閉じないでいる。
「これが儂の聖武器なのか」
鞘から抜いて見ると、実に綺麗で向こうが透き通って見えるようだ。昔から扱っていたかのように馴染んでいるように、その場で何振りか斬撃を繰り出す。
「これは凄い!持った瞬間に分かった。これで全力が出せる」
シャキン
鞘に仕舞うと、帯に通し固定する。レストラン"カズト"に来てから忘れていたが、獅子之助は刀の勇者であり、侍でもあったという事に。
「タマモとフォルスさん遅いな」
ドタドタと走って来る足音が聞こえる。
「済まぬ。タマモのやつが寝坊してな。遅くなった」
「フォルちゃん、ウソはいけないのよ。フォルちゃんもグッスリと寝ていたのよ」
「それは、お前が【恐】で妾を眠らせたからだろうが」
「まぁまぁ喧嘩は、それくらいで出発します」
タマモとフォルスは、店のドアを通れば直ぐに国へ帰れるのだが、それでは楽しく………ゲフンゲフン、案内が必要という事で、一緒に行く事となった。
「歩いて行くと1月は掛かるが?」
「そこはご心配無用です」
古都の門から出て街道を数分進み、人影がない事を確認した。
「こんなところで良いだろう」
カズトは、アイテムボックスからワンボックスカーを取り出した。それも前回よりも大きい自動車だ。
「これは何じゃ?!」
「鉄の箱?魔物の気配はしない?」
初見だと、そういう反応するよね。タマモとフォルスの反応が面白く、クスッと笑ってしまった。
「これは!まさか車とな。この世界に車があるとは」
「これはね、兄さんの技術で出したんだよ」
俺の事なのに自分の事のように言うリンカ。まぁ分からんでもないが。
「俺の技術知ってるんだろ?」
「あれか?【異世界通販】というやつやろ?それで、まさか!買ったのか?」
「その通り、店もあるし、勇者としての蓄えもあるからな。高い買い物だったが買えない値段ではない」
でもまぁ、これで2台目だ。金貨数百枚使ったが、良い買い物を出来たと自負している。
「さぁ乗ってくれ」
運転手はカズト、助手席はリンカ、真ん中にタマモとフォルス、1番後ろは獅子之助で決まった。
「みんな乗ったな?さぁ出発するぞ」
カギを差し込み、ブルルルルとエンジンを掛ける。アクセルを踏み込み走り出した。
「本当に走ったぞ。馬もないのに実に不思議じゃ」
「うわぁ速い速いのよ。ねぇこれ、輪入道より速くない?」
輪入道は、確かフォルスの家臣だったか?魔法大国マーリンで何度か話した。
普段は気のいい老執事だが、戦闘や運搬の時には車輪の真ん中に顔がある獣妖族へと変貌する。
「それにイスがふかふかでお尻が痛くないのよ」
「あぁ、こんなに速いのに揺れが静かだ」
この速度だと、凡そ3日程で着きそうだ。ナビの案内を頼りに獣人国家アルカイナを目指して行く。
「ねぇ兄さん、リンカあれ乗りたい」
「それはダメだ」
「あれとは何だ?カズト殿」
「ぶぅ、兄さんのケチ」
「この前、運転してどうなった?暴走しただろ」
中国雑技団顔負けのアクロバチックな運転を披露した事があるが、それ1回だけでバイクをダメにしてしまった。




