272食目、帰って来たら不死鳥と妖狐がいた
ドロシーとレイラには、他の部屋で休んで貰う事にした。短時間とはいえ、タマモの【恐】に常人が掛かってしまえば、本人に自覚がなくとも精神的にも肉体的にも疲弊する。
「それでお2人は何しに店に来たのですか?俺が帰る1時間前に来たという事は、俺があげた魔道具を使ったんですよね?」
そうじゃないと、こんなタイミングで来れないだろう。緊急事態か?はたまた単に遊びに来ただけか?
「うむ、初めて使こうたが、本当に別の国に限定的とはいえ転移するとはのぉ。驚きじゃ」
「そうなのよ。やっと来れたのよ。これでも王の1人だから忙しくてね」
本当に後者なのか?タマモさんだけならいざ知らず、フォルスさんも着いていながら単に来ただけという事はないだろう。
「何かカズちゃんが失礼な事を考えているのよ」
「いいえ、気のせいです」
ギクッ!冷や汗が止まらない。未だにこちらを見るタマモ。こういう勘の鋭さは流石と言うべきか何と言うべきか。
「それで、本当に来ただけではないのでしょう?」
「うむ、確信がある訳ではないのじゃが」
「マーリンで話した訳ではないけどね。一応、カズちゃんのお仲間の1人だし、伝えようと思ってぇ」
俺の仲間?他の勇者に何かあったのか?
「マーリンで、魔神教会に連れ去られたはずの銃の勇者が我々の国に現れたかもしれないのじゃ」
ケンゴが?!魔法大国マーリンで、魔神教会教祖兼盾の勇者である俺の実姉…………皇花音の鏡の盾に吸い込まれ、そのまま連れ去られた。
それから一切音質普通で、生きてるのか死んでるのか不明であった。
「ふぅ、無事だったのか」
安心したら、腰が抜けたらしく、その場に座り込んでしまった。
「じゃが、あくまで噂じゃ。確かめようにも今の段階だと我々にも無理じゃ」
「あそこは独立国家みたいなものだしねぇ」
「どうして来たのか分かった。どうもありがとう」
俺がお礼を満面な笑みで言うと、フォルスとタマモはヒソヒソと背を向け話し始めた。
「フォルちゃん、あの破壊力はヤバいのよ。嫁がいなかったら、女誑しと言ってるところなのよ」
「それには同感だ。妾も数千年生きてる中で、十数年しか満たない小僧に見惚れるなどと」
「2人共、どうかしたか?」
具合でも悪くなったのかとカズトが声を掛ける。2人の話し声は、勇者の聴力を持ってしても聞き取れなかった。
「な、何でもないのよ」
「ゴホン。そ、そうじゃ。出発は何時にする?」
「明日で良いか?急いだ方が良いだろう。今日は、折角来てくれたんだ。俺が美味しい料理をご馳走してやる」
神樹の森フリーヘイムでの経験は、カズトに料理の更なる追随をしてくれたようで、数段上な料理を披露した。
カズトは汗1つ掻いておらず、むしろ清々しい気分で支配されている。
「今日はどうしたのだ?カズト殿」
「ミミ、ビックリ!」
「いやぁ、今日は作りたい気分だったんだ。いつの間にか、こんなに作り過ぎていた」
獅子之助とミミが驚いてる。一切、2人に手伝いをさせずに作り上げた。パーティ用に使用する大部屋にある大テーブルに、ズラっと並んでいる。
美味しそうな匂いに釣られ、大部屋へ入ってくる人影がチラホラいる。
「クンクン。兄さん、何か良い匂い」
「くぅー、腹が減って来るぜ」
「メグミ、はしたないですよ」
神樹の森フリーヘイムから一緒に帰って来たリンカ・ココア・メグミの仲良し3人組が匂いに釣られて入って来た。
「これは豪勢じゃのぉ」
「凄いのよぉ。これ全部カズちゃんが作ったの?」
続いて、フォルスとタマモ。獣妖族の八王の2人も入って来ては、大テーブルに並ぶ料理の数々に驚きを隠せないでいる。
「まだ頭が痛いけど、この匂いには逆らえないわ」
「痛たッ。クンクン、良い匂い」
「2人とも起きて大丈夫か?」
ほんの1時間前に寝かしたばかりのレイラとドロシーが匂いに釣られて起きてきた。まぁこの様子なら大丈夫だろう。
「まぁ、これは何かのパーティなのかしら?」
最近、レストラン"カズト"で働く事になったニーニエ・マーリン…………つまり、魔法大国マーリン第2王女だ。そして、最近俺の嫁となった。
「この良い匂いなーに?」
「実に美味しそうな匂いがするのじゃ」
犬耳が特徴のルーシーと魔道具のリボンで隠蔽してるが魔族の角を持つリリーシアの姉妹もやってきた。
「カズト仕事終わったぞ。これは良い匂いだな」
「良くここがわかったな」
まぁ全員が匂いに釣られて来た訳だし、元赤薔薇隊隊長なら匂いだけで場所を特定するのは簡単か。
これで全員が集合し、まだ子供のルーシーとリリーシアはジュースで、それ以外はビールを注いだジョッキを片手に持つ。
「たまには、こういう宴会を開くのも良いだろう。難しい事は言わん。今夜は、たくさん食べて楽しんでくれ。カンパイ」
「「「「「「カンパイ」」」」」」




