271食目、神樹の森から帰還
メグミが元気になり、神樹の森フリーヘイムの任務期限も終え、俺らはレストラン"カズト"へ帰還した。
「ただいま」
濃密な任務だったため半年振りに帰って来た気分だ。俺らは裏口から入り、自分らの部屋へ荷物を置いた後、俺は厨房へと顔を出した。
「カズト、おかえり。まだ、休んでも良かったのに」
「ミミ、そんな訳には行かないよ。ここは、俺の店なんだから」
ミミの頭を撫で、厨房に立つとやっと帰って来たと実感が湧く。やはり、厨房に立って料理をしていた方が俺の性に合う。
「カズト殿、お戻りになられたか」
獅子之助が厨房の奥から板前風な格好で出て来た。寿司職人と言われたら納得する格好である。
「獅子之助、今帰った。何も無かったか?」
「カズト殿の人形でござったか?カズト殿がいるようで助かっていたでござったが…………だが、今日まで何も無かったというべきか?簡単に言えば、カズト殿にお客が来ているのだが」
何やら疲れてる様子の獅子之助。俺は、ミミを見ると、ミミも困った様な顔をする。
「2人ともどうした?俺の客って?」
「獣人族………いや、獣妖族だったか。そやつらがカズト殿の客という訳だが」
「獣妖族の八王の内、2人が今この店にいる。そして、ドロシーとレイラが捕まっている」
えっ?ドロシーとレイラが捕まっている?それに獣妖族の八王で知り合いなんて、2人しかいない。
「見てみれば分かる。客間にいるから案内する」
「儂は、ここにいる」
ミミの案内で、ドロシーとレイラに獣妖族の八王2人がいる客間前まで到着した。
『この気配は!』
何やら中から足音が近付いて来た。そっとドアを開けて、俺は抱き着いて来るであろうモフモフを横に避けた。
「何で避けるのよ」
「タマモさんが抱き着いてくるからです」
「カズちゃんのイケズ」
九尾タマモ…………獣妖族の王の1人にして、性格が残念なところを除けば超絶な美人であり、俺でさえ性格を知ってなければ振り向いてしまうだろう。
「タマモよ、2人が困っておろう。全く、何故お前はいつもそうなのだ。こちらが恥ずかしくなってしまうわ」
タマモの後ろから出て来たのは、同じく獣妖族の王の1人にして8人いる内の更なる王、獣人国家アルカイナの王であるフォルス・フェニックスである。
タマモとフォルスは、まるで性格が正反対なのだが何故かいつも一緒にいる印象を受ける。
「フォルちゃん、カズちゃんはただ単に恥ずかしがってるだけなのよ。ねぇ、カズちゃん」
「フォルスさん、1ヶ月振りですか?お久しぶりです」
「うむ、カズトも精進してるようで何よりだ」
「ヒクヒク、無視しないでぇ」
王の1人のはずなのだが、子供のように泣きじゃくるタマモ。何よりも1人でいる事と無視される事がダメな質で、高確率で自分の領地にいる事よりもフォルスの部屋で寝泊まりしてる方が多いらしい。
「お姉様どうしたの?」
「カズトが、お姉様を泣かしたの?」
部屋の中から捕まっていると聞いていた2人が出て来た。タマモをお姉様と呼び、タマモに寄り添い昔から姉妹だったかのように俺から守るように前に立ち塞がる。
「これは!おい、まさか【恐】を使ったんじゃないだろうな?」
「だって、2人とも可愛いんですもの」
ドロシーとレイラを抱き締めるタマモ。2人も満更で無さそうな表情で笑顔満面だ。
「今直ぐに解かないと、もうここへは出禁にするからな」
「お姉様をイジメないで」
「お姉様を虐めたら、カズト嫌いになっちゃうから」
「うっ!」
【恐】の影響化にあっても嫁の2人に言われると、ズキンと心臓を抉られる様にくるものがある。
「カズト、【恐】を解けば良い?」
「ミミ、出来るのか?」
「もう解析済」
親指を立てて、何時でも出来る準備万端とミミの瞳が言ってる。
「タマモの【恐】が破れる訳ないのよ」
「ミミ様、やっちゃって」
「ミミにお任せあれ【魔法消去】」
ミミが指をパッチンと鳴らすと、糸が切れた様にドロシーとレイラの身体が床に崩れた。
「うぅぅっ」
「うっ……頭が痛い」
これは成功したのか?頭を押さえながら立ち上がる2人。無事なようで良かった。
「そんな!タマモの【恐】が解けるなんて!」
「解析に時間掛かった。1時間も掛かるなんて流石は王の1人」
「タマモさん、何でこんな事したのですか?」
「だって、2人可愛いかったから。つい、やっちゃった。テヘッ」
テヘッ………じゃない。下手したらドロシーとレイラは廃人と化していた。
それ程に凶悪で魅惑的なタマモの【恐】の能力は、魅了を極限的に高めたものとなっている。
それ故に、1回掛かってしまうとタマモには逆らえなくなり、時間が経てば経つ程に泥沼に嵌り一生抜け出せなくなる。
まぁ1週間掛かり続けなければ解けた時に廃人と化す事はないだろう。




