SS14-10、銃の勇者=《塔》~銃vs《力》~その2
ゴングが鳴る。
《力》………アンリは何も動作しないまま立っている。右手人差し指を立て、クイクイと『早くこんか』と挑発してくる。
「なら、遠慮せずに行きますよ。風の聖銃エヌマ・エリシュ【風速撃ち】」
初速なら1番速い弾丸。それも先日撃った比じゃない。二丁拳銃の形態を持つ性質上、もう片方も同じ属性にしていたらどうなるか?
その答えは、その属性の能力が数倍に跳ね上がる。つまりは、ジュリに使用した時よりも数倍速い。
当然、観客席から目で追える者など、1部を除いて居ないだろう。
「まぁそう上手く行かないよな」
相手は、女狂戦士族内にて最強に加え、《力》という戦闘特化した技術を教祖様から分け与えられている。そう簡単に殺られては逆に困る。
先日ジュリは白刃取りみたく、人差し指と中指で挟み止めたが、アンリは衝撃を緩和させるため身体を後ろへ反らし、歯で受け止めていた。
「ペッ、いきなり放つとはな。余の目じゃなかったら見逃していた」
地面に弾丸を吐き出し、カランと転がる。
「目…………洞察力の強化か!」
「正解としとこう。【動体視力特化】どんなに素早く動こうとも遠くにいようとも余の目には無意味じゃ。まるで止まって見えるのぉ」
例えば、素早く動ける昆虫の中には、我々人間の動きはスローモーションに映っているという。
例えば、侍同士の戦いで稀に感覚が極限に研ぎ澄まされ時間感覚が遅く感じたりする。
だが、それらは自らの身体能力が追い付いてないと成立しない。
いくら、動きがいくら遅く見えようとも自分の速度が追い付いていないと、自分の身体は置いてきぼりを喰らってしまう。
「速度か防御も上げてるな?」
「クックク、良く分かったのぉ。【速度特化】【防御特化】余の技術は併用してこそ真価を発揮する」
両方上がってたか。
「さて、勇者というからには耐えてしんぜよ。【速度特化】【膂力特化】」
「消えっ!」
気づいた時には、アンリの拳は数mmまで迫っており避ける時間はなく、頬辺りを殴られたのだろう。
何が起こったのか?理解する前に吹き飛び、観客席下の壁に激突していた。壁は崩れ、瓦礫に埋もれたが数秒でケンゴは立ち上がった。
「痛てぇなぁ。部分的に変身してなかったら首の上無かったぞ」
「くふっ、良いのぉ。腐っても勇者じゃ。余の拳を目の端で捉えられるとは初めてやもしれぬ。それに、そのウロコは、お主………龍人族じゃな」
ケンゴの首から顔半分がウロコで覆われてる。龍人族は種族特性で【人化】と【龍化】を行える。
これを極めれば、部分的にも可能となり先程のように部分的に防御が可能性となる。その逆も然り。
「ちっ……………使わなくて勝ちたかったが仕方ねぇ。龍人族の力も使っても構わねぇよなぁ」
「構わぬぞ。むしろ、どんどん使ってくれ。龍人族と戦う機会なぞ、そうそう訪れるものじゃないからのぉ」
アンリは笑ってる。久々の胸が踊る戦いに嬉しさと無邪気さが高まっていく。
このコロシアムは、魔神教会の資金繰りの1つとしての興業だが、アンリ自身満足行く相手と戦った事が今まで皆無である。だから、笑みが止まらない。
「そうかよ。俺らと戦いたい物好きなんて、そうそういないぞ」
両足を【龍化】させ、一気にアンリの背後を取り【龍化】させた右拳を振り上げた。
観客席からは目にも止まらぬ早業に見えただろう。司会も何が起こったのか理解出来て無い様子。
だが、その拳を軽々しく受け止めた。いくら力を入れようともビクともしない。まるで、山の麓を押してるような気分だ。
「龍人族の力は、こんなものか?」
「そんな訳ないだろ。まだ始まったばかりじゃないか。それに油断大敵という言葉を知ってるか?土の聖銃ドラグーン【土回転弾】」
右手を掴まれてる状態で、左手でアンリの脇腹にドリル状の弾を撃った。
だが、【防御特化】によって止まってる。止まっているが、回転は止まってない。推進力は止まってない。
普通の弾丸なら障害物に当たった瞬間、多少進むが直ぐに止まる。それなのにケンゴの撃った弾丸は突き進む。




