SS2-8、アリスのレストラン暮らし~アリスの父が来る~
朝食を堪能したアリス達は、最後に出て来たデザートとしてオレンジシャーベットを食べていた。
「んっーーー、冷たくて美味しいのぉ」
「口の中で蕩けて不思議な食感」
「甘酸っぱくて幸せな気持ちになる」
スプーンですくい口に入れる度に口角が上がってしまう。もう無我夢中で平らげてしまった。
「無くなってしもうた」
「お代わり出来ないかしら?」
「それは出来ないです。過去に姫様が同じく頼んだところ、デザートは1人1日1個までだと」
「これは王城のシェフでも作れないでしょうし、手が込んでそうね」
名残惜しいが、また明日には食べれる。それだけでも楽しみが増えるというものだ。
「ここがカズト殿の店か」
「えぇそのようです。カズト先輩の気配が、あちらこちらにこびり付いてます」
店の正面ドアからじゃなく、奥から入って来たのは3mはありそうな筋骨隆々な鬼人族らしき男だった。
それに付き従うのは、同じく鬼人族らしき男で背中に背丈程の戦斧を背負っている。
「ち、ちちちちち」
「おぅそこにいるのは」
「父上!」
「我が娘アリスではないか」
アリスが声をする方へ振り向くと、そこには実の父親であるコウリュウ・シドニスだ。
その様相は歴戦の戦士みたく放つオーラは半端なく、近接戦闘にて1、2を争う種族の1つが鬼人族。それを纏め上げてるのが、このコウリュウ・シドニスという王なのだ。
「父上、みんなが見てるゆえ」
「おぉスマンな」
シドニス王に抱き着かれ、胸板に顔を押し付けられた。あわよくば、窒息寸前であった。
「陛下は、お嬢に甘々だからな」
「くわぁっハハハハ、アリスは吾輩の目に入れても痛くない程に可愛いぞ」
「止めてくだせい。みんなが見てる前で」
は、恥ずかしい。
「そこの御仁は、まさか!」
「うん?俺か?俺は斧の勇者をやってる岡崎翔貴、ショウと呼んでくれ」
「おぉ、カズト様と同じ勇者。さぞ、お強いのでしょうね」
「いやいや、カズト先輩と比べられると、烏滸がましい思いになります」
謙遜してるがショウの体つきを見ると、とてつもない猛者だと見てわかる。背中の戦斧が聖斧マリアなのだろう。
「ぜひ、騎士の端くれとして1回戦ってみたいですね」
「ライラは、本当に戦闘狂だのぉ」
「アリス、騎士なら誰でも勇者と1戦交わえたいというものです」
騎士や戦士というよりも近接戦闘系の職業についてる冒険者なら誰でも勇者に挑戦したくなる本能がある。
「今は止めておこう。陛下の護衛の任務に就いてるのでな」
「吾輩は構わないのだが、勝手に許可を出すと宰相がうるさいのでな。バレると小言がうるさくて敵わん」
この人に説教を言える者なんて指で数えるくらいしかいないだろう。
「それで何か美味いもんでも食べていたようだな?」
「えぇ、デザートを食べてました」
「吾輩も貰おうか。ショウもどうだ?」
「陛下が宜しいのであれば」
運ばれて来たオレンジシャーベットを口に含むシドニス王は驚きを隠せないでいる。
「なんと美味な味わい!こんな物は初めてだ」
「久しぶりに食べましたが美味しいものです」
「ショウは食べた事があるのか?」
「えぇ、ここではなく…………俺らの世界で」
天井を見て思いにふけっているショウに対して、アリスは興味が湧いた。勇者の世界、この世界とどう違うのか知りたい。
「ショウよ、お主らの世界とは一体どんな所なのかや?」
「あれ?話した事ありませんでしたっけ?」
「ない。まだ、お主がこちらに来た頃か…………不安が多かったのだろう。お主の世界の事を聞いてはいかぬという雰囲気で満たされておったからのぉ」
あの頃のショウの顔は酷いものであった。まだ異世界へ来た当初は誰にも口を聞かぬで部屋へ閉じ籠っておった。
普通なら何もなさぬ者を置いておける程、鬼国シェールは甘くない。それは勇者とて例外ではない。
だが、どういう切っ掛けがあったのか不明だが、数日で立ち直り、シェールの騎士団である鬼面組と一緒に訓練をやるようになった。
「それは吾輩も興味がある」
「陛下まで…………まぁ良いですけど………特に楽しいものじゃないですよ」
「構わん。早う話すのじゃ」
ワクワク、他の世界の話などそうそう聞けるものではない。




