SS14-6、銃の勇者=《塔》~摩天楼~
「ここが滑瓢族の区画にて1番の宿でございます『摩天楼』です」
「これは…………凄いな。本当にここに泊まれるのか?!」
これは圧巻だ!これが貴族御用達じゃないって?『ウソをつけ』と叫びたい。
こんな豪華な旅館は、日本でも中々見当たらない。まるでジ〇リ映画で商業収入1位を叩き出した某映画に出て来る旅館と酷似してると感じてるのは俺だけだろうか?
「はい、こんなに素晴らしい宿なのに、貴族の肌には合わないらしく、貴族御用達とはなっていないのです。飯も期待して大丈夫です」
「それは分かってる」
俺以外の勇者でもこちらを選ぶだろう。中には歓喜乱舞で発狂する奴もいるかもしれない。
「さぁ入ります」
ガラガラと引き戸を引くと、そこは異世界のはずなのに日本が広がっていた。
「どうしました?」
「えっ?」
「泣いているようですが?宿を変えましょうか?」
ジュリがケンゴの顔を覗く。
自分では泣いてるという自覚が無く、頬を指先で触り確認してみると、涙が流れ落ちていた。
頭では、とっくの昔にこちらの住人として生きているつもりであった。
だが、心の奥底では地球…………日本に帰りたいと願っていたのだろう。
仮染めでも目の前に広がっているのは日本の景色、それを見てしまっては自然と涙が出るのは必然。
「いいや、何でもない。泊まる部屋は何処なんだ?案内してくれるのであろう?」
「ケンゴ様が大丈夫のであれば、私は構いませんが…………あちらが受付のようです」
「おっと、その前に靴を脱がないと」
ジュリが指差す方にカウンターがある。下駄箱に靴を仕舞い、受付に向かう。
受付嬢は、和風らしく着物を着ており、髪を簪で留めている。
「おいでやす」
「2人部屋を1つお願いします」
「2人部屋って、お前も泊まる気かよ」
「案内するのでしたら、一緒にいた方が良いと思いません?」
「まぁそうだけどよ」
嫌な予感がして仕方ない。でも、良い断り方が思い付かない。メリットがあってもデメリットが見つからない。
「お二人部屋ですと、椿の間が空いてるどすえ。こちらが鍵でどすえ」
「サンキュ」
椿の間か。普通宿屋なら番号だが、部屋の名前まで凝っていて期待度が益々上昇中である。
「ここか。椿の間は」
3階の部屋でガチャリと扉を開けると、床は畳であり懐かしい匂いが鼻につく。
長テーブルに座椅子と座布団が鎮座しており、長テーブルにお茶菓子が用意されている。
「変わった部屋ですね」
「俺には懐かしい風景だ」
窓の外には、日本庭園を再現されたと思われる庭が広がっていた。
小砂利を引き詰められ重さ1tは有りそうな巨大な岩を配置し、地面に水の流れや水紋をレーキで模様として表現されている枯山水。
見事な景観で、詳しくない俺でも感動してしまう。この区画を作ったとされる過去の勇者から知識と技術を後世に受け継げられている事に敬意を内心からはらう。
「それで本当にお前も泊まるのか?」
「泊まる。姫に直接言われた任務だ。今更、帰る訳にはいかない」
「せめて、一人部屋を2つというのは」
「空いているのが2人部屋しかないと」
えっ?本当にないのか?こんな丁度良く俺が泊まる時にないなんて、本当についてない。でも、こんな良い旅館に泊まれるのだから我慢するか。
「仕方ない………か。一緒に泊まっても構わない」
「よろしいので?」
「ここで追い返したら、俺が悪者みたいじゃないか」
まぁ男女2人での旅行みたいで、満更でもない様子。男子なら1度は夢見る事ではないだろうか?
「おっ!浴衣もあるじゃないか」
「これは?受付嬢も似たような衣服を来ていましたが」
「浴衣だ。俺の世界の服だ。もしかして、着てみたいのか?」
ジュリの瞳がキラキラと眩く光っており、俺と戦った時とは別人みたいに女の子だ。
「興味はないと言うとウソになりますが、私には似合いませんから」
「似合うと思うぞ」
女狂戦士族は戦闘狂だが、女だらけの種族なだけに全員スタイルが整っている。
その中で、コロシアムの女王もとい《力》が軍を抜いて美人なだけだ。ジュリでも十二分に目の保養となっている。
ここに来る間でも何人の男共が振り向いたことか。
「それで浴衣を着るのか?俺は、どちらでも良いが、ここにいる間は着てた方が目立たないだろうな」
「でも、着方が分からないです。着せてくれますか?」
えっ?俺が!




